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ドラゴ・インヴォカシオン-アラサーツンデレ竜人と新米召喚士-  作者: 琥河原一輝
異世界に来ちゃった狼男子高校生の苦衷
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アラサーテ様とは。

 予想していなかったのかティラドルさんは私の一言に目を丸くした。

 「私に、ですか……」

 「他の人みたいに我に何の用だ、って感じでも良いんだよ?」

 「滅相も無い!そんな無礼を働いた事がアラサーテ様の耳に入ろうものなら……あぁ、恐ろしい!」

 どうだろう、フジタカもチコも私が何かすればバカとかドジと言う事もある。だけどレブはそれで憤慨して人に襲い掛かったりした事は今のところない。自分がデブなんて言われてもたまに訂正するくらいだし。

 「そんなに怖がらなくても……」

 「お嬢様には良いかもしれませんが、我にアラサーテ様の慈悲を賜る事は叶いません……」

 ……そんな気がしてきた、少しだけ。無言で一発殴りそう。手が滑ったとか言って。

 「……分かった。けど、話を聞いてもいいかな?時間があればだけど……」

 「勿論です。さあ、どうぞおかけください!」

 初めて会った時と別人ではないかと思うくらいに朗らかな笑みでティラドルさんは椅子を勧めてくれる。お言葉に甘えて腰かけると、相手も正面に椅子を運んで座った。

 「それで、ご用件とは?」

 「レブの事、なんだ」

 わざわざ指名したんだから、分かり切っていると思う。だからそのまま続けた。

 「私、思ったんだけどレブの事あんまり知らないなって思って。ティラドルさんなら付き合いが長いから……」

 「つ、付き合いだなんて……あ、あはは、ははは……」

 ティラドルさんもレブの事になると少し変だから迷ったけど、他に相手もいないし。

 「あの、レブについて知っている事をできるだけ教えてくれませんか?」

 「……承知しました。我が知っている限りで良ければ」

 十分。私が頷くとティラドルさんが指を組む。

 「しかし、どこから話したものか……。アラサーテ様の幼い頃を知る者は誰もいないでしょうし」

 レブは年齢を二万九千とか言っていたけど、ティラドルさんはそのうちどれくらい一緒にいたのかな。

 「アラサーテ様本人からは聞いておられないのですか?」

 「う……うん」

 そこが気になるのは自然だと思うけど、痛いところを突かれた。

 「……教えてくれないんだ、レブ」

 聞いていないわけがない。私が無理に召喚したんだもん。

 「貴様が知ってどうするとか、答える必要はないとか……。もちろん、レブの主観で話して良いと思ったらしい事は聞けたんだけど」

 「あぁ……」

 察してくれたのかティラドルさんの視線が生温く感じる。同調してくれてるのかな。

 「なんていうのかな、レブって背中で語る気質だし……」

 「加えて口が悪くてシャイですからね。お嬢様には言葉を選んでいるでしょうが……」

 ……あれで?と、言いかけて止める。最近は乱暴で怖い事は減ってきたと思うけど、シャイとか恥ずかしがりやなんて言ったら後の反論の迫力が増しそう。

 「お嬢様が特に聞きたい部分はございますか?」

 「特に……」

 順を追って、と思ったけど私はレブの何を知りたいんだろう。何を知らないか知らない。分かってあげたいところがどこか分からない。

 「じゃあ、えっと……。前にティラドルさんが言ってた部族の争い、ってところ。聞いていいですか?」

 手あたり次第、と言うと自分でも効率が悪いかもしれない。まずは自分の知っているところから取っ掛かりを増やしていこう。

 「最もアラサーテ様が輝いていた頃のお話でございますね?喜んで!あぁ、いえ、今もとてもとても輝いていますよ?」

 ティラドルさんの息が荒い。……主観に偏りそうだけど、これでレブを知る事ができる。

 「我ら竜人は鱗の色でおおよその住み分けをしておりました。各色の国同士に交流は当然あり、緑竜の国に青竜がいることも珍しいわけではありませんでした。当然、色で立場に優越もありません」

 竜人の住む世界。それがレブの住んでいた場所。

 「ですが実際は相性があった。性格の気質が違うと言い換えても良いですがある時、我が同胞たちはそれぞれが最も優れていると主張しました。緑竜、赤竜、青竜、黄竜の四元竜達の争いはちょっとした口論から戦争にまで発展してしまったのです」

 「相性……って、得意不得意だよね」

 説明してもらうまでもない。赤竜と青竜、緑竜と黄竜は相性が悪い。赤竜と黄竜、青竜と緑竜は相性が良い。理由は魔法の得意分野が違うからだ。証拠にティラドルさんは炎を吐けても魔法で操る事はない。実際に四元竜を揃えないと比較はできないんだけど。性格の傾向も色で変わる、という話は知らなかった。レブは気にしないんだろうな。

 「表立って言わずとも、皆が少なからず思っていたのでしょう。自分達こそが、と」

 「……そうだったんですね」

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