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静電気実験。

 ティラドルさんですら雷撃には耐性を持っていないと言われてしまった。強靭な生命力を持つ相手とは言え、一方的に痛めつける様な真似は絶対にできないし、訓練でも正面から対峙すれば私には為す術がない。瞬く間に蹴倒されてしまう。

 「拮抗した相手……あの小僧のゴーレムでも相手にするのが貴様には手頃か」

 「付き合ってくれるかだよね」

 頼めるとしたらチコなんだろうけど本人はあの調子で勉強に集中したいだろう。

 「……付き合う」

 「違うってば」

 レブからは離れられそうにない。

 「……待てよ?」

 寝る直前、私は明日の予定を思い返して良い事を思い付く。もう一人いるよ。ちょっとした土人形を操るのも得意な召喚士が。

 翌日、起きてすぐに私達は二人に個人的にも訓練をお願いし、快諾してもらえる。本当なら、自分でできないといけない部分で申し訳ない。

 「じゃあ……出すわよ」

 「お願いします!」

 召喚陣を地面に置いて眼鏡を指でそっとカルディナさんが持ち上げる。そう、訓練でカルディナさんは何度となくスライムやゴーレムを召喚していた。

 「ふんっ!」

 訓練場に着いて早速カルディナさんは召喚陣を輝かせる。そこから現れたのは私よりも少し背が高い細身のゴーレムだった。一歩足を踏み出すと小気味良く軽快に場内を跳ね回り始める。

 「……こんな感じかしら、ね」

 「ありがとうございます!」

 トーロやレブがこちらを見守る中、私は剣を一本携えてゴーレムに向かって構えた。相手も足を止め、体をこちらへ向ける。操作しているのはカルディナさんだ。

 今日はトーロがライさんと模擬戦をするので見学したいと予め言っていた。そこに昨晩の閃きを加える。レブに挑む前哨戦を今まで経験していないから成長を自分で認められないんだ。

 でも今回カルディナさんに用意してもらったゴーレムは私の腕力でも剣を頭に叩き付ければ核を潰せそう。油断はしない、あくまでも魔法の練習として戦うのであって物理攻撃は最終手段だ。

 「雷よ……って!」

 「隙だらけ」

 早速魔法を使おうと意識を集中しかけたところをゴーレムが前に跳んでくる。途端に慌てた私は剣を引いて走り出した。

 「き、来てる……!」

 「相手は敵。当たり前だ」

 トーロの指摘は分かっている。でも、追い回されながら魔法を使うって……!

 「……っ!雷よ!」

 「その子を捕まえて!」

 でもいきなり弱音なんて吐いていられない。立ち止まってもう一度声を張る。すぐにゴーレムはすかさず召喚士の命を受けて私に飛び掛かって来た。

 「……破砕してぇ!」

 でもそれが狙い!両腕を突き出し、岩肌に触れると同時に私は魔法を掌から放つ。相手にぶつかった瞬間、手を擦り剥きながら弾かれた。

 意志に応え魔法陣が足元で輝く。正しくは相手と接触する前に発動すべきだったけど結果的にはこれで良い。ゴーレムの中央を支える岩がバカン、と大きな炸裂音と共に砕け散った。

 「……よし!」

 手足と頭を支えていた岩の均衡が崩れてゴーレムは体を意地できない。赤く輝く頭の核だけが見えたところでもう一撃……!

 「雷よ!岩の守り人を砕け!」

 閃光が走り、核を飛び散らす音が遅れて聞こえた。目を庇っていた腕を退かすと、後ろから拍手が鳴り始める。

 「あ……」

 目の前でゴーレムは岩片と化して動かなくなっている。振り返ればカルディナさんがトーロと一緒になって私に拍手してくれていた。

 「おめでとう」

 「初めてにしてはやるな」

 「えへへ……」

 レブは腕を組んで私を見上げている。そんな彼を見てトーロが怪訝そうに眉をひそめる。

 「自分の召喚士へ贈る言葉は無いのか?」

 「………」

 トーロに言われたからなのか、無視したのかレブは一歩私の方へ踏み出す。

 「一撃で破壊しようと欲張らなかったのは正解だ」

 「やればできそう、なんて油断はしないよ」

 魔力の乗せ方はレブに教わっても、それの強弱が実際にできているかは別。だから私はまずは小手調べに魔法を使った。

 出力としては本気の三割。仰け反らせて動きを封じるくらいを予想していたけど……実際は遥かに威力が強かった。消耗具合を確認しても下手に出し過ぎたわけではない。

 「だが、人間でありながら相手を自分よりも過小評価するな」

 「過小なんて……」

 そんなつもりはなかった。だからこそ二度に分けて攻撃したんだ。カルディナさんのゴーレムだからとか、召喚士への魔力の逆流を心配して手心を加えたりなんて事はしていない。あっさり済んだのも事実だけど、自分なりの精一杯をぶつけて挑んだんだから。

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