表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/396

テスト対策はお早めに。

 「……その試験、チコも受けるのかな」

 部屋に戻って事の流れを説明するとフジタカは顎に手を当て静かに唸る。私は外せない選択だと思っても、チコにとっても同じではない。

 狙われているのは私とレブだけではなかった。最優先で次に狙われるとしたらフジタカだと思う。そんな彼と行動を共にすると言ったチコがどうするか。フジタカの行動の決定権は持っていないにしても……。

 「フジタカは……トロノに残る?」

 召喚されていないのだから、最初は地に足が付いていないも同然。選択肢を増やしてあげるのは私の役目だ。提示した中からしか選べないわけではないが、考えてみてほしい。

 「いや……できれば一緒に居た方が良い。ライさんだってそう言ってたんだろ?」

 「……うん」

 他の人の名前を出してしまうのはずるい。だから自重したがフジタカの方から言ってくれたので私も頷く他ない。

 ライさんからすれば契約者の戦力増強にはレブとフジタカを合わせて導入したい様だった。何より、フジタカがライさんに気に入られている。能力も評価されているから近くに置きたいんだ。

 「その為にはチコにも踏ん張ってもらいたい」

 「だったら、私がチコを説得する。……所長も頭数に入れてる気がするし」

 こうなってしまったのは私のせいだ。だから少しでもフジタカの負担は減らしたい。……まだ、すぐには話もできないだろうし。

 「頼む」

 フジタカの返事を聞くとレブが鼻を鳴らして笑った。

 「ところで貴様は、試験の内容を把握しているのだろうな」

 「もちろん!」

 できないと決めつけて挑戦するつもりはこちらにだってない。勝算はもちろん持っている。

 「筆記試験でこのインヴィタドを呼び出すにはどの様な召喚陣を用いるか、触媒は何を使うと効果的かとか……過去の問題はソニアさんに見せてもらった事があるんだ」

 ソニアさんの研究室を覗いた際に見てみたら、と勧められた資料の中にあったんだよね。聞いてみたら、先にソニアさんは浄戒召喚士になってから召喚試験士を目指して試験士補になったみたい。

 「普通に試験なんだな、そこは」

 日常的に試験が行われていたフジタカからすれば当たり前みたい。試験なんて国家資格くらいでしか要求されないと思っていた私の方が変に見えるんだろうな。

 「実技とかはないのか?」

 「鋭いね。あるみたい」

 言う前にフジタカは試験がどういうものか分かっている。実際の試験風景は見た事がないだろうに。経験が彼に教えているんだ。

 「実技では自分の召喚したインヴィタドに命令を出して戦わせるんだ。指定した条件通りに仮想の敵……これもインペットやゴーレムだったりするんだけど、それを退治する」

 戦闘させるインヴィタドは事前に用意する。だから私ならばレブでも何か文句を言われる事は無い……と思う。

 「インヴィタドが言う事を聞くだけの理性を持っているか、或いは召喚士にインヴィタドを屈服させる力があるか……って事か」

 要は、敵を倒せれば良い。倒せるインヴィタドを呼び出せる召喚士は優秀と判断されるらしい。逆に、非力でも言う事を完璧にこなせる理性を持っていればそれも重宝される。

 「つまり、懸念事項は無いな」

 「え……」

 レブは身構えて損した、と言わんばかりに椅子に背を預けてふんぞり返りながら満足そうに目を閉じた。

 「ちょっと、話聞いてた……?」

 「無論。自然に実技はこの私が挑むわけだ。なれば、あの所長に明日は無い」

 試験監督がブラス所長とは限らないのに、何をする気だ。

 「評価されるのは実技だけじゃなくて……」

 「筆記は貴様の得意分野だろう。問題あるまい」

 「………」

 そうとは限らないよ。暗記力だけじゃなくて召喚術の応用も問われる。召喚における感覚が乏しい私には弱点だ。

 「……まぁね!」

 でも、レブに言われたんだ。私一人で受験するのではない。二人一組なんだから力を合わせないと。

 「だからレブ、実技はその……できれば、少し私の言う事を聞いてくれないかな。あんまり上手にはできないかもしれないけど」

 「そんな頼みは不要だ」

 レブは理性も力も兼ね備えていて、彼が言う通り実技に不安は無い。しかし召喚士の力も加点されるなら少しは指示もしないと。そう思ってもレブは首を横に振る。

 「そのつもりだったからな」

 「……っ!」

 悪戯に笑うレブを見て自分の顔が熱くなった。無条件……ではないにせよ私はもう、こんなにも頼もしい協力者がいる。既にレブは笑いながらも、無防備に自分の背中を預けられるだけの存在になっていた。だったら私だって彼に恥じない力を示したい。筆記が得意と言った自分を冗談ではなく、本物へと変えてみせる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ