手は結ばれ、気持ちは繋がれて。
偉そうな喋り方をする、というか元居た世界では偉かったんだろうけどルナおばさんみたいな接し方をされてもレブは怒らない。寧ろ普通に褒められて満足げにしている。
「この程度できなくては、この世界へ召喚された意味が無いからな」
私は鱗目当てにどころか、意図して召喚したかも怪しいのに。レブにおばさんもうんうん頷いていた。
「そうよねぇ!レブちゃん、少し会わない間に男前を上げたじゃない」
レブの口元が上がる。
「私の進化はまだ続いているからな」
これ以上進化してどうするんだろう。いや、本領発揮できてないのは分かるよ。
ふんぞり返るレブの姿は子どもの様な無邪気ささえ彷彿とさせる。褒められ慣れてないのかな、でも崇められるのは慣れてそう。主にティラドルさんとか。
「まるで恋人じゃない!はぁ……綺麗っ!」
しかしルナおばさんの一言に考えていた事も上書きされてしまった。
「………」
「………」
二人同時に顔を見合わせ、すぐに逸らす。……レブはなんて思ったのかな。
「なーんちゃって!あるわけないわよねぇ!」
私達に漂う気まずさを感知したわけでもなくルナおばさんが自分の発言を否定する。
「おばさんたら、自分で恋をしなくなったからってつい人に求めちゃうのよ!ごめんねぇ」
アラクランに娘がいるってフジタカに話してたから、旦那さんがいるんだよね。お会いした事はないけど、どんな人なのかな。
「いいえ、気にしてないです」
「私もだ」
レブが同意してくれる。もう一度彼の顔を見たらまた目が合った。その時は一緒になって微笑む。
「行こうか?」
「うむ」
私が手を差し出すと自然にレブも手を重ねる。ルナおばさんも私達を見てまぁ、と声を洩らした。
「じゃあルナおばさん、今日はこれで」
「また来る」
「あぁ、うん……。待ってるね」
ルナおばさんにはどう見えたのかな、私達。鱗を貰った日の様に裏通りを二人で歩きながら私から口を開いた。
「まるで恋人、だって」
レブが鼻を鳴らす。
「随分姿形が異なるがな」
「でも、ヒトでしょ」
人間と竜人。見た目は確かに肌の色どころか角や尾とか、獣人だと毛皮とかが有るか無いか。違いは多くてもこうして会話して、意思の疎通がしっかりとできている。
「私は照れ臭かったな。そう見てもらえるんだって」
夕陽を見ながら真っ直ぐレブは歩いている。
「……不快ではなかったのか」
しっかりと閉じていた口が間を置いてゆっくりと開く。その口から発せられた言葉に私は吹き出してしまった。
「ぷ……」
「笑う場所ではない」
「……そうだね。答えは……違うよ」
レブの目が私を向く。
「不快になんて思うわけ、ないじゃない」
「……そうか」
それきり私もレブも喋らなかった。少し握る手に力が入る。離さないように、しっかりと。
人に言われて気付くのもおかしいけど、レブへの気持ちはとうに自覚していたんだと思う。告げられるのはいつになるか分からないのに。言いたい、言わなきゃいけないのに意気地の無い自分に喉がむず痒い。
おばさんの言葉にどう思ったかも聞けなかった。今言われたら我慢できないと思う。耐えなくていいと言われても、私は自分の言葉でしっかりと伝えたかった。
相手を想う気持ちは平等と彼は言った。時に歌い、時に寄り添い、時に叫び。貴方から聞いた言葉と同じ様に言えたなら、何が生まれるのだろう。今はこの気持ちを馳せ募らせるだけ。




