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引き立つ魅力、際立つ輝き。

 「作ってほしいって頼んでた物があるんだ」

 「ふーん。なら、できてるといいな?」

 「うんっ!」

 レブが白ブドウを食べ終えるのを待って私達は工房の門を潜った。私達が入ると、既に四人の男性がひしめいている。更に三人が入ると狭そう……。

 「おぉ、来たな」

 「おぉ、ザナさんじゃないの!待ってたぜぇ!」

 一人は槌を持った小柄な人間、ポルさん。もう一人大きな声を出したドワーフはセシリノさん。最後に会ってもうずいぶん経つ気がする。

 「さん付けなんてしなくても」

 「色々聞いてるからさ」

 セシリノさんは顔中の汗を手で拭うとニカッと歯を見せて笑う。この前のセルヴァの事かな。

 「フジタカも元気そうだな」

 「……あぁ!」

 短いながらもポルさんからの挨拶にフジタカもしっかりと返す。

 「ザナちん!待ってたよ!」

 「お前が呼びに行かなくてどうすんだ」

 「ハッハァ!そうなんだけどさ!」

 一日ぶりに会ったミゲルさんとリッチさんは奥に座って今日も元気だった。後ろにはレブとフジタカ。……なんだか男の人ばかりで居づらいな。

 「そうそう、これを取りに来たんだろ?ついさっき完成したんだ!どーぞ!」

 座っていたリッチさんが台に乗せていた何かを掴んで立ち上がる。私が掌を上へ向けるとそれを手渡してくれる。

 「わぁ……!」

 渡されたのはリッチ・フォウクスさん手作りの首飾りだった。三つ編みにされた細い茶色の革紐の先には金色の金具に縁どられたレブの鱗。更に中央には緑の小さな石が嵌め込まれている。

 「その石は僕の提供!あと紐と金具の用意もね!」

 「鱗を加工したのは俺だがな」

 リッチさんが自分を指差し、最後をセシリノさんが引き取る。きゅ、と首飾りを握り締めて私は二人に頭を下げた。

 「ありがとうございます!」

 異世界のインヴィタド二人にこうまで素敵な物を用意してもらえるなんて。普通なら考えられない。

 「いいんだよ!僕らだってザナちんのおかげで馬車賃浮かせたしね!飾り加工はいつもの事だからちょちょいのちょいっ!ってね!」

 「でもこの石……」

 エスメラルダ、とかじゃないよね……?やたら綺麗。

 「加工した切れ端みたいな物だから気にしなくていいさ。寧ろ捨てる方が勿体無い」

 教えてくれたミゲルさんと首飾りを交互に見る。やっぱり、売り物にするくらいの価値がある石なんだ……。

 「しっかし、また竜の鱗を加工できると思ったらまさかの一枚だけ、しかも首飾りとは……豪華だわなぁ」

 「そうですよね……」

 削って飲めば万病に効くとか寿命が延びるとか逸話も多い竜の鱗。レブの血と効果はどう異なるのか聞かなかったけどいざって時は呑み込んだら命が助かる、とか……。

 「変な気は起こすな」

 「……うん」

 今気にする事ではないよね、まして目的が違うもの。

 「この鱗ってどうやって……」

 「鍛冶の魔法だな。特殊な火を起こし、熱し、溶かし、曲げる。詳しくは教えられんぞ」

 竜の鱗を加工する技術。流石にそれを聞き出そうとまでは言わない。聞いても真似はできないけど。

 「わぁ……」

 改めて見ても美しい。紫に緑という組み合わせはどこか毒々しい物を感じるかもしれないけど実際は違う。見ていると自然に気が落ち着いてくる。

 「レブ、これ……首に下げても良い?」

 「当然だ。貴様の物なのだからな」

 尾の先をそわそわと揺らしていたレブにやっと聞いてから私は引き輪を外し首に巻いた。革だけあって肌にもよく馴染む。

 「……フジタカ、似合う?」

 「テレて聞く相手間違えんなよ」

 手で数度鱗を撫でてから私がフジタカを見上げる。だけどすぐに人差し指で下を指した。

 「……あの、レブ」

 「言うまでもない」

 まだ最後まで言ってないよ!

 「逃げんなよ。言ってやればいいじゃん。似合ってるって」

 「………」

 顔を背けながらもちらちら私と首飾りを見ているだけで言いたい事は少し分かるよ。

 「そっかぁ、ザナはこれを預けてたんだ……」

 まじまじとフジタカに見られて少し身を引く。やっぱり少し私には派手かなぁ。

 「似合ってるじゃん」

 でもフジタカの飾り気の無い感想に少し胸を撫で下ろす。お世辞を言われるよりはそうかな、って思えるし。

 「ありがとう、フジタカ」

 レブの口から聞くのは……もうしばらく後かな。同じ感想かは分からないのが少し心残り。

 「次はお前の番だぞ、フジタカ」

 「へっ?」

 私達を見ていたポルさんが不意に口を開く。フジタカも何の話か分からずに首を傾げた。

 「お前に渡したアルコイリス、見せてくれないか」

 ポルさんが手を出すのでフジタカも半ば反射的にナイフを取り出す。しかし、手に乗せる前に動きが止まった。

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