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                          第二十三章



 イルダちゃんとの再会は意外だったけど、その場でもっと意外な人物が私達の目の前にドタバタ現れた。その姿に見覚えがあって私達は声を上げる。

 「あ……!」

 「アンタら……!」

 いち早く気付いた私とフジタカが相手とばっちり目が合う。小太りの狐の獣人と赤髪に日焼けした肌の人間。会ったのは一度だけだけど……。

 「ハッハァ!もしやと思ったけどコイツァ良い!なぁ、ミゲル!」

 「あぁツイてるかもな」

 二人で顔を見合わせるその姿を見たのはしばらくぶりだった。

 「リッチのおっさん……」

 「ミゲルさん!」

 「へへ、久し振り!ザーナちん!」

 大きな声で村人達が自然に道を開ける。チコとレブも知らなかったみたいで二人の姿を見て固まっていた。

 「ナイフでビアヘロを消し去るインヴィタドを引き連れたセルヴァ出身の召喚士……。なるほど、それが君だったんだな」

 「……ども」

 歩み寄るミゲルさんにチコが顎を突き出す様に会釈する。

 「二人とも、どうしてここに?」

 フジタカの質問に二人が同時に口を開こうとする。それに気付くと二人で表情を緩めた。この人達の笑顔を見ているとこっちまで自然に笑えそうに思える。

 この前に会った時はトロノに行ってアルパやピエドゥラに向かうと聞いてたけど……。

 「散り散りになったエルフ達と会っている。そこの子達も含めて、入用があると思ってな」

 「だけど調べるとこからが大変で!その辺はミゲルが得意だから安心なんだけど!」

 「調子良いな。任せっきりって言うんだぞ、そういうの」

 「バレてたか!」

 そして大声で二人は笑う。不思議とうるさいとは思わない。

 「それでセルヴァに来てたんですね」

 「ビアヘロが出たって言うからどうしようと思ってたら、トロノから召喚士が来てくれるって言っててね」

 「まぁさかザナちん達とは思わなかったわな!」

 私達もまさかセルヴァで会う事になるとは思わなかった。イルダちゃんに続いて、別の地で知り合えた人が集っているなんて。

 「で、ビアヘロが退治されたと聞いて召喚士の顔を見に来たの!」

 「今じゃ知り合いも減ってるしな」

 言って、ミゲルさんが私の肩を抱いた。しかも、リッチさんも。そして二人は速足で私を村の人達から離す。

 「まぁまぁまぁ!」

 「え?え?えぇぇぇっ?」

 「まぁまぁまぁ」

 振り向くと、レブがこっちに来てくれ、他の人達は私達を見ている。

 「ちょーっと相談、良いかな?」

 二人が私を解放して、今度は耳打ちする。レブに大丈夫だから、と言って私は二人に向き合った。会話は向こうの人達にはフジタカ以外には聞こえてないと思う。

 「なんでしょうか……」

 「これから馬車に乗ってトロノに戻るんだよね?」

 「僕達も一緒に乗せて欲しいんよ!」

 改まって言われた事に私は目を丸くする。

 「無賃乗車したいのか」

 「あう!耳にイタイっ!」

 「否定はしないけどさ」

 リッチさんがレブの言葉に長い耳をわざとらしく押さえて身を反らす。ミゲルさんも苦笑したが頷いた。

 「顔馴染みだったらなー、って見に行ったらまさにザナちんがいたわけ!」

 「こっちも宿泊費とかカツカツになっててさ。一旦トロノで稼がないとまずいんだ」

 レブが私を見上げた。……仕方ない。

 「チコぉー!」

 「なんだー」

 私が声を張り、チコが返事を返すとこちらにフジタカとやって来る。村の人にはルビーから話していてもらおう。一番話していたいのはルビーだろうしね。

 「この二人も馬車、一緒に乗っちゃダメかな?」

 「は……?」

 フジタカは聞こえていただろうから何も言わない。チコは面食らった様で目を丸くした。

 「経費、出てるんでしょ?オネガイっ!」

 「この通り!」

 両手を合わせ、頭を下げて二人はチコにも頼む。狭くなるとか、それは構わないけど私が勝手に言う訳にもいかないし。

 「……別に、二人くらいなら入るし良いんじゃね」

 投げやりにも聞こえたがチコが認めた。聞き逃さずにリッチさんは耳と顔を跳ね上げた。

 「さぁすが、ビアヘロ退治はお手の物の召喚士!懐も深いっ!」

 「……へへ、まぁ、な」

 チコが鼻の下を指で擦って笑う。ふさふさの尻尾を振るリッチさんに対してミゲルさんもホッと姿勢を崩す。

 「すまない。金は無いが、何かできる事は言ってくれ」

 「おお!何でも無償でする!この恩は返さないとな!」

 ミゲルさんとリッチさんからの提案にチコは腕を組んで数秒、私を見た。

 「あー……そう言うのはザナに言ってくれ。俺は別に」

 「え?」

 急に振られて私も聞き返す。だけどチコはすぐに背中を向けて皆の方へ戻ろうとした。

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