表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/396

査問諮問審問。

 「さぁ、どうぞ?全員分はないけど」

 長椅子に召喚士達が座り、余った肘掛けにレブとフジタカがお尻を乗せる。ニクス様と若干本調子ではないトーロは個別に椅子に座った。

 「こういうのは大抵、カルディナ君一人なのにね?どうしたの」

 話を聞く雰囲気作りをブラス所長はしてくれたが、私達の方は気が重い。……報告書はアマドルとレジェスを放っておけないのでカンポの契約者へ警告へ向かう旨を記述して提出したと思う。

 「報告書の直後より、話を始めます」

 言って、カルディナさんは全てを自力で語ってくれた。所々、私達の証言を交えながらだけど、話の組み立ては任せっぱなしになっていた。当然、カンポの契約者と出会い……死なせてしまったことも。

 話を聞かせるに連れてブラス所長の表情はどんどん険しくなっていった。それでも、私達の言葉へは最後まで相槌を打って聞いている姿勢を示すのみ。話に割って入って中断させる事は一切なかった。

 「……以上と、なります。この度は……申し訳、ありませんでした……」

 立ち上がり、深々と頭を下げるカルディナさんに私とチコ、フジタカも続く。

 「いいよ。……もう、起こってしまった事だ。覆らない」

 責められもせずに私達は脱力してしまう。……本当に、どうしようもない事をしてしまったのだから怒る事も許されない。どうやっても……ココもサロモンさんも生き返ってはくれないのだから。

 「……カルディナ君の判断はニクス様の命を脅かしただけでなく、カンポの契約者の命を奪ってしまった。事実、だね?」

 「はい」

 ブラス所長の確認にカルディナさんは迷いなく頷く。

 「これ以上、君にニクス様の護衛を任せる事は……」

 「待たれよ」

 何かを言いかけたブラス所長の言葉を遮ったのは、ずっと話題の中心にいた契約者ニクス様だった。

 「ニクス様……」

 「彼女は何もしていない。自分の言葉を尊重したまでだ」

 カルディナさんがゆるゆると首を振る。しかしニクス様も引かない。

 「自分がカンポの契約者コレオ・コントラトへの警告を進言したのは出発する前から話していた通り。そこに彼女の意思は介在していない」

 「……ご自分が何を仰っているのかお分かりですか?」

 この混乱の非は自分にあると言っているんだ。カルディナさんは何も悪くない、と。

 私達召喚士にとって契約者は手放す事ができない存在だ。だから今回の話もニクス様が被ればカルディナさんが契約者を死なせた、という事にはならない。もちろん……事実だって殺したのはフエンテの召喚士だ。

 「責任を追及する相手を間違えるな。その連中なら我々の手で断罪した」

 言ったレブを含め、裁く権利なんて私達が持っているとは思っていない。だけど、これ以上あの三人に償わせる事もできなかった。

 「これからも自分には彼女達の助けが必要だ。意向を汲み取らぬのならば、自分も身の振り方は考える」

 「………」

 ニクス様をブラス所長は睨むでもなく見詰めていた。

 「……変わられましたね、以前よりも」

 「老いた……否、落ち着いただけだ」

 「そうだ」

 レブが勝手に同意するけど、昔のニクス様を私達は知らない。それでも以前よりも目に見える変化が起きていたニクス様に私も目を丸くしていた。

 「カルディナ君には、下手をすれば今よりももっと風当たりが強くなる事も覚悟してもらわないといけないよ」

 「……もう、とうに承知しております」

 契約者を失う理由を作った召喚士が今も契約者の隣に居る……なんて噂が立つのかな。だったらそんな事、私達がさせない。

 「ブラス所長!ニクス様……契約者の護衛を増やすのはいかがですか」

 「ザナ君……」

 私達も一緒なら、あるいは。

 「その案は良いね、落ち着くらしいとは言え、フエンテへの対策も本格的に講じないといけないし。だけど、それは君でもチコ君でもない」

 「えっ……!」

 考えは悪くない。そう言ってもらえても、提案した私自身は受け入れてもらえない。

 「当たり前だよ。今回、君達には勉強の一環として同行してもらった。だけどこれ以上は分不相応だ」

 「………」

 チコは何も言い返さない。フジタカも、レブすらも。

 「フエンテを仕留められたし、話も聞けた。……今、手元に残っている物から次にできる事を探そう。そのために君達にはまた声も掛けるかもしれない」

 もうブラス所長は私だけを見てはいなかった。それが所長として、感情に振り回されずにしなければならない対応、なのかな。

 「疲れているのにすぐ来てくれたんだろうけど……一度休むべきだ、君達は」

 所長に言い返せる者はいなかった。いたとしても、今の私達に聞く耳は持ってもらえそうにない。だから今日はまずブラス所長に言われた事も含め、考えを纏め直そうと決めて部屋に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ