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笑顔は万人への特効薬。

 「世の中には、酒が無くても盛り上げれる人もいるんだ。お嬢ちゃんはそういう人種?」

 「……はい!」

 お酒を飲まないと本音を話せない大人達を知っている。言えない事はもちろんあっても、盛り上がれるかは別だ。騒ぐのなら私にだってできる。

 「そっちのが例の凄い竜人、ね。ちょっと付き合いなよ」

 「付き合うかは私が決める」

 頬を赤く染めた召喚士にレブは冷水を浴びせるが如く態度を変えない。しかし相手も負けずに隣へ陣取るものだから、もう逃げられない。

 「ちょっとだけでしょー?だーいじょうぶ、痛くしない!」

 「おい、勝手に……」

 「いいんじゃない、レブ」

 抵抗しかけたレブが私の一声で止まる。

 「せっかく来てくれたんだもん。……また、後で話そうよ。二人でさ」

 「………」

 レブが止まった間に二人の召喚士は手近な料理の皿に手を伸ばす。

 「仕方ない」

 言って座り直したレブに私はまずブドウを持ってくる事にした。これで宴の終わりまでは楽しんでくれるだろうから。

 女性の召喚士、パースさんとブリサさんに聞かれたのは簡単な自己紹介。セルヴァの召喚士選定試験でレブを召喚した、とだけ話をしても向こうで盛り上がり話が広がっていった。私はレブと一緒に話を補足していくだけ。

 初めて召喚したインヴィタドが竜人なんて大当たり、貴女は良い召喚士になる……なんて言われた。なりたい気持ちはあるのに私はどうでしょうね、と答えてしまった。会話は弾み、どんどん話題も変わって次はフェルトやカンポ地方の話に移り変わる。

 少し感じていたけど、この辺りの召喚士は高齢化が進んでいるらしい。ウーゴさんがカルディナさんに話していた内容と同じだったけど、ブリサさんは納得している様だった。

 農作物が多い地方なので獣害は多い。ビアヘロが現れて召喚士が駆り出されるのとは違い、カンポの人々は対処法を設けて済んでしまう場合があるそうだ。柵を設けたり、人型のカカシを立てたり。インヴィタドに用があるのは退治と言うよりも異世界の害獣対策技術の伝授だったらしい。だから最近ではフェルト支所の召喚士達も対ビアヘロ用のインヴィタドを呼ばない、若しくは呼び出した事が無い者もいるらしいとの事だった。だからこそライさんの様な戦闘特化の獣人は珍しいみたい。そんな話を直接フェルト支所の召喚士二人から、それぞれの視点で聞けたのは貴重な機会だったと思う。

 「飲み過ぎた……」

 「だから俺は言ったぞ、カルディナ」

 それが昨夜の出来事。翌朝集まった私達は二日酔いに頭を抱えるカルディナさんを中心に集まっていた。まずは昨日の食堂で水を飲み、頭痛が引くのを待っている。心なしかまだ皆がお酒臭い気がした。

 「おはよう、ザナちゃん!ムラサキの旦那さんも」

 「おはようございます!」

 「うむ」

 そんな私達の後ろを昨夜話していたパースさんが通り過ぎる。レブは途中からパースさんとブリサさんからムラサキの旦那さん、と呼ばれる様になっていた。言われている旦那、というのは敬称であって誰かの夫とかではない。……違うよね、そういう話はしてないし。でもレブがどこか満足げな気がして私がそわそわしてしまう。

 「楽しんでたみたいだな」

 チコとトーロは水を飲んでいるけど特に体調が悪そうには見えない。フジタカは二人は置いて私の横に来た。

 「まぁね。フジタカはどうだったの?」

 昨日の夜、最後に見たのはニクス様の隣で縮こまっていたところなんだけど……。

 「一緒に異世界での嫁の探し方についてご高説を拝聴させて頂いてたよ。……ですよね、ニクス様?」

 「良い話だった」

 フジタカがニクス様に話を振った。しかもニクス様もしみじみしている。何があったんだろう……。

 「俺、そんな話をしたのか……?」

 聞こえてきたのか、食堂へココの肩を借りて入ってきたぼさぼさ頭のライさんの声はがらがらだった。

 「ゲヒンだよ、ライ」

 「む……そうは言うが、俺だってやっぱり大人の男だし……」

 酔って記憶を失い、寝惚け眼のぼさぼさで現れる……うん、大人の男らしさは感じる。別の意味で、だけどね。

 「おはよぉ!」

 「おぉココ、おはよう!」

 「よく起きれたね?」

 「お腹空いてない?」

 ライさんを座らせるとココは食堂内で声を張る。すると、口々に挨拶が返ってきた。フェルト支所の召喚士達にココは得意の愛嬌を無自覚に振りまく。

 「えへ……。結構昨日で皆と仲良くなれた、かな」

 サロモンさんに連れていかれたココは気になっていたけど、今のを見ただけでも心配は要らないみたいだった。私とレブ、そしてフジタカで顔を見合わせる。ココの事を考えてたのは同じだったかな。

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