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契約者と召喚士の関係。

 「……そうだね!」

 「食後の果実はあるのだろうな」

 ココがオムレツにフォークを突き刺す横でレブがこちらを見る。その辺に抜かりはない。

 「お皿を平らげたら出てくるよ」

 「ならばまずは食すか」

 残さず食べた者への口直しに味わうみずみずしい果実は別腹。その味わいをより深くするためにまずは食事を続けた。

 「………」

ふと気付いて私はフォークの手を止めた。

 「どうしたの、ザナ姉ちゃん」

 「うん……」

 周りを見ていて、視線を感じた。それは一人ではなく、複数人。

 「トロノのインヴィタドは貴方みたいなムキムキが多いの?」

 「俺も昔は細かった」

 「それはおじさんの発言じゃないの?」

 ……トーロは普通に話をしているし、チコも若い召喚士の男の人と話している。ニクス様はまだライさんに捕まっているし……。

 「それで……っ」

 「あぁ……」

 ウーゴさんと、別の召喚士。自己紹介もしたりしなかったりで他の人と私はあまり話せていない。私が感じていた視線はあの二人、そして他にも幾つか視線だけは感じた。

 「あの……」

 「ごめんね、ココ。なんでもないよ」

 「僕は気付いてるよ、大丈夫」

 言うか言うまいか迷っていたところで、ココが自分から目を伏せ微笑んだ。

 「皆、僕とは話したがらないんだ」

 「あ……」

 そう、ウーゴさんはココを心配して見てくれているけど、他の召喚士は違う。契約者としてのココの様子を窺っているんだ。だから誰も近寄ってこない。このフェルト支所がココにとっての拠点なのにどこか隔離されて見えた。

 「でも今日はザナ姉ちゃんもフジ兄ちゃんもいる。レブもね」

 「契約者の小僧が私をついで扱いか」

 「じゃあココって呼んで」

 「ふん」

 ココは軽やかな声で言うけど、前は違うんだろうな。サロモンさんがこんな飲み会を開いても……。

 「初めて声を掛けてくれたのがウーゴだったんだ。それからしばらくしてから、ライの召喚に成功したの。ライは僕を契約者と最初は知らなかったから、獅子の姿をした僕を可愛がってくれた。そして、契約者と知っても……ライはライのままだった」

 ニクス様に熱弁するライさんの様子を見てココは鼻を揺らして笑う。

 「契約者を崇め一線を引いて接する。オリソンティ・エラに住む人間の典型だな」

 「事実だけに痛いね……」

 特に召喚士はそうだろうな。私がニクス様に感じていた尊敬だってそうだし、召喚士こそ契約者に頭は上がらない……筈。あの連中を除いて。

 「だからここまで踏み込んで接してくれた人に感謝はしてるんだ。僕の契約は……変な考え方だったかもしれないけどね」

 気にさせてたんだ、私が聞いた話を……。そこにフジタカが口を開く。

 「俺だってそうだ。右も左も分からない俺に優しくしてくれた人の為に何かする。ザナにはもちろんありがとうじゃ足りないんだし、その……デブだって、頼りにしてるんだぞ?」

 最後は小声になって顔は向こうを見ているがフジタカは確かに私達の話をした。丁度レブと目が合ってしまうと、彼はもう椅子の上で身を捩り背を向ける。

 「……私とて、そのナイフの能力をあてにしていた場面は何度もあった」

 ありがとうは無理でもレブがここまで言うとは。……でも、確かにレブも自分が牽制を担当し、詰めをフジタカに任せるのが効率的だと気付いている。アルパにいたインペットの時も、この前のアルゴスとの遭遇でもフジタカに迷わず言っていた。

 「まぁ……これからもよろしく、な?」

 「……言われたからには応えんでもない」

 あれ、なんだか珍しく良い雰囲気。……もしかして、場酔い?いや、まさかね……。

 「ココもぉー!」

 二人だけの空間を作りかけていた間にココがパンを片手に割って入る。フジタカはそんな彼の頭に手を乗せる。

 「どうしたんだよ?」

 「僕だって久し振りにウーゴ以外の召喚士と、ライ以外のインヴィタドと話せて楽しかったんだよ!嬉しかったんだよ!」

 レブの捻くれ具合を見てからココを見ると心が洗われるなぁ。素直なココからの好意は私達にとっても胸が温かくなる。

 「町の人達はココと親しそうだけど、やっぱり育成機関内じゃそうもいかないもんな」

 「うん……」

 カラバサの人達は皆がココと親しげだった。……そうか、皆召喚士じゃなかったから。フジタカがクシャクシャと短い鬣を撫でてやるとココの目が若干潤む。

 「今日ははしゃいでも良いんだぞ?……ライさんが怒らない程度に、だけどな」

 「いっつもおこりんぼだからどうかな」

 フジタカの手を退けたココの顔に、一瞬見えた暗さはもう消えていた。

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