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気分転換。

 危険な場所はどこも変わらない。だったら少しでも腕の立つ護衛が身近に居た方が、まだ安全を確保できる。そう考えたライさんとウーゴさんはココも連れて行くと決めた。

 「場所……フェルトの外?」

 「そ、はい……そう、です。少しだけ人里離れています」

 カラバサの民家と民家の間の様なもの、と思って地図を私も見せてもらう。……明らかに町から離れていた。距離で言えばトロノからアルパぐらい。朝出ても到着する頃には昼だ。果物屋には行けそうにないな。

 「きき、今日はお休みください。部屋は用意、させますので」

 テルセロ所長がウーゴさんへ目線を送ると、察したのか先にウーゴさんは部屋を出た。……帰ってきて早々、押し付けられるのも大変だろうな……。

 「お言葉に甘えます。数日滞在する事になるかもしれませんが……」

 「構、いません……。……我々としては、たまにこういう事がある、くらいが丁度良いのです」

 妙な区切り方をする話し方に、聞いている方が身構える。丁度良いと言ってくれたけど普段は平和、って事かな。ビアヘロの出現頻度とかも聞きたいけど手間取りそう……。聞くならウーゴさんかライさんにしようかな。

 しばらく所長室で待たされてから私達は部屋へ案内された。空いていた部屋は五部屋。

フジタカとチコが同室を受け入れ、あとは皆個室で……。

 「カンポに来てから骨休めもできんな」

 ……うん。数が合わないよね。レブは何故か私の部屋にいる。無論、フェルトの召喚士であるウーゴさんやライさん、あとはココも食事を終えて自分の部屋でもう休んでいた。

 「トロノに居た頃が随分前みたい」

 それでもレブがここに居るのは変わらない。トーロとカルディナさんが部屋を分けられているのに、私達は同室って大丈夫なのかな。

 「それだけ目まぐるしく日々が過ぎている。充実している証拠とも言い換えられるが……。む、どうかしたか」

 「へ?う、ううん!」

 嫌とは思っていない。気付けばお互い、当たり前になっていたから。

 だけど最近、私の方が落ち着かない。レブといると気持ちが妙にそわそわしてしまう。

 「えっと、うん!魔法もちょっとずつ鍛錬してるし……」

 「今は休む話をしていただろう」

 レブが腰に手を当てて唸る。

 「あぁ……うん」

 「………」

 どうしよう、レブの目線が痛い。変に顔が熱くなってくる。

 「体調が悪いのなら、早めに休むべきだ」

 「ち……違うよ!」

 元気なのは変わらない、と思ってる。魔力の消費はそれなりにあっても体調はすこぶる良い。

 「ならば、どうしてそんなに顔が赤い」

 「うっ……!」

 顔が熱いと自覚はある。指摘されてもっと熱くなった。だとすれば益々赤くなってるかも。

 「レブは、私と同じ部屋じゃ休まらないんじゃないの」

 こちらの質問にレブが細めていた目を丸くした。

 「……貴様の寝顔を傍で見たいと思うのは変か」

 「変だよ!いつもしてたの!?」

 「そうではないが」

 何を言い出すんだ。……とりあえず、日常的に覗かれてるわけじゃないならまだ許せる。でももうレブの顔を見てこれ以上は話せない。

 「怒ったのか」

 「怒ってないよ。不愉快とかでもない」

 補足して言っておく。ただ単に、そんな事を言ってくれる相手が今までいなかったから対処が分からないの。

 「レブ、私と一緒の時はいつも床で寝てる。いくら竜人でも疲れが抜けないでしょ」

 「毛布なら借りていただろう」

 そうだけど。寝るなら地べたよりもベッドの方が良いと思う。

 「部屋にベッドは一つ。犬ころだって床に寝ていると聞いた」

 フジタカの場合は敷布団も借りているからね。それが自分の住んでた国の文化だって言ってた。

 「私に気を遣う必要は無い。ここに居られるだけで私からすれば好条件だ」

 雨風が凌げるからだよね、と言おうとした。

 「……分かった。おやすみ」

 でも言わなかった。たぶんレブはそれだけじゃなくて私と同じ部屋、に価値を見出している。知ってて私は黙ったんだ。灯りを消して私はベッドに横たわる。

 レブから返事は無い。毛布にくるまる音だけが部屋の片隅から聞こえた。

 目を覚ますとレブは当然起きており、毛布も綺麗に畳まれていた。少し肌寒くて早くに起きたつもりだったのに、レブは起きて何をしているんだろう。

 「自習をしていた」

 「この前教えた文字?」

 直接本人に聞くと返ってきた答えが自習、と言って渡された辞書だった。港で買ってそんなに時間は経ってないと思ったのに、何度も頁を捲られたと思われる皺があちこちにある。

 「中身はだいたい覚えてしまった。犬ころにでもくれてやれ」

 「こんなに厚いのに……?」

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