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鋼刃は明日も輝く。

 先程戦闘を終えたばかりなのにレブとフジタカは他愛もない言い合いをしている。緊張感が無いと言うか、気付いたらそれだけ経験も積んでいるって事かな。

 大きければ怖いではないんだよね、フジタカの場合。レブはゴーレムの様に核へ直接攻撃しないといけない様な相手だと私が未熟なせいで苦戦する。今回はたまたま雷撃が効く相手で良かった。

 私だって、試した事は無いけど、やれば痺れさせるくらいはできるんだと思う。だったら私にも、レブの代わりにビアヘロに飛び込んでフジタカにとどめを任せる事だってやれるかもしれない。

 「切り替えが早いのはココも同じだが……。む、どうかしたか?ザナさん」

 「あはは……いいえ。なんでもないです」

 振るう力の自覚、私はできているのかな。……できているのなら、レブに今みたいに体を張ってもらう必要はなかったのに。

 考え過ぎない。今は自分のできる事を精一杯やる。それがレブを助ける事にいつかなりますように。

 ライさんにも心配をかけてしまった。トロノの召喚士らしいところも見せておかないと。

 「大きいビアヘロを相手にするのも初めてじゃないんです。その度に、レブもフジタカも戦ってくれましたから」

 「ほぉ……」

 ライさんのフジタカを見る目が変わる。本人はレブとの言い合いに負けたと思えば、今度はココの相手をしていた。

 「フジ兄ちゃんのナイフ、凄かったね!」

 「そうか?」

 皆が褒めてるのに、フジタカはあの力を振りかざしたりしない。返ってくるのはほとんど疑問か戸惑い、そして否定。力を受け入れた、やって見せると口には出すけど何気ない態度でまだ一線を引いている様に見えた。アルパの件をまだ引き摺っているんだと思う。

 「ねぇ、それで今まで何を消してきたの?」

 「えっ……」

 ココからの質問にフジタカが声を詰まらせる。

 「消してきた、か……」

 何でも消す、と聞いて私達はあらゆる物をフジタカに消させてしまった。

 「話す前に、聞いてもいいかな」

 「どうしたの?」

 フジタカはココとレブ、そしてカルディナさんを見た。

 「ビアヘロって放っておくと消えるよな。あれってどこに行ってるんだ?」

 フジタカの質問にカルディナさんが口を曲げる。

 「話していなかったのか」

 レブが立ち止まり、睨む様にしてチコを見る。

 「き、聞かれなかったからだぞ。言ってなかったのは、周りも同じだろ?」

 「ふん」

 鼻を鳴らしてレブは口を閉ざした。そう、言っていなかったのは私もだ。話す機会なら最初にも、今までにもあったのに。

 「ビアヘロってね」

 話し始めたのはココだった。

 「この境壊世界に来てしまった以上、自力では帰れないんだ。だから頭の良いのも、悪いのも関係ない。本能的に体へこの世界の魔力を溜めようと欲するんだ」

 フジタカが唸る。

 「んー……帰えれないなら、永住すると腹を括るのか」

 「そんな感じ」

 召喚陣を通してここへ来ていないビアヘロに選択肢は、無い。ココがフジタカの例えに笑う。

 「だから魔力を溜める為に食べたり、吸い取る。それが草か水か、それとも僕達かは分からない。でも、さっきの巨人は……」

 間違いなく私達を狙っていた。

 「聞いてるとザナが言っていた事と同じだな。……自分の体を維持できる分だけ食べ繋いで、段々この世界に馴染めば消えない、だったか。問題はその先だよ」

 「ビアヘロが魔力切れでこの場から消え、元の世界に戻れるのなら大人しくするのが得策だ。誰にも迷惑は掛からない」

 ライさんの意見にフジタカも頷く。

 「だが実際は違う。君も魔力が流れているのだから分かるだろう?……血と同じ物が全て抜かれて、生きている生物はいないよ」

 私のせいだ。フジタカの説明に消えるってしか言わなかったから、今更知ったんだ。

 「……ま、やっぱりそういう事だよな」

 しかしフジタカの反応は薄い。

 「気になってたんだ。もしかして、このナイフって突き刺した相手の魔力を吸い取る魔剣みたいなナイフなんじゃないかって思ったんだけど」

 言われて皆がフジタカが取り出したナイフに目を向ける。

 「でもそうじゃないんだよな。だって、それならビアヘロは消せるだろうけどこの世界の物質は消えないし」

 フジタカは書類や瓶の様な日用品も消していた。それらは確かに異世界の物ではない。

 「ビアヘロの行き先がどこなのか分かれば、俺のナイフで消した先も分かると思ったんだけど」

 「世界と世界の間に溶け込むんだよ。土に還る事もできない」

 ココの解説にニクス様も口を出さない。

 「そのナイフは、もしかしたらそこへ送り込んでいるのかもね」

 「本当に必殺ナイフって事だな」

 フジタカはナイフをしまった。

 「怖くなった?」

 一度間を置いて、フジタカが答える。

 「ナイフを相手に突き立てる意味くらい知ってるさ」

 フジタカは前を向いて歩き出す。……一線を引いているし、割り切っている様にも見えた。

 「さーて、疑問も聞いてもらってスッキリしたし、俺の話だっけか?セルヴァに来たところから話すぞ」

 「わぁ、うん!」


 話の切り替えにココがフジタカの隣に並び立つ。今回の歩き旅はしばらく話題も尽きず、賑やかになりそうだった。

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