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ムキムキでも恋したい。シリーズ

ムキムキでも抱きしめたい。

作者: みなみ

ムキムキマッチョの姫様の愛の道のりの物語。

ある国にそれはそれは勇猛果敢な凛々しい姫様がおりました。


剣をふるえば、ばったばったと相手をなぎ倒し、

組手をすれば、軽々と投げ飛ばし蹴り飛ばし、

走れば風のように早い。


その肉体は鋼のように強く…なんと言いますかムキムキマッチョでした。


姫様は六人の弟妹がおりました。

二の姫から五の姫まで、おまけに末の弟も皆が美しいと評判の王妃様に似ましたが、その姫はそれはそれは父である国王の面差しに似ていましたので強面でした。

父である国王は周辺諸国どころか隣の大陸まで名を轟かすほどの強さを誇り、かつ戦場では冷酷無慈悲な悪魔の王と呼ばれ恐れられておりました。

そんな父に似た姫は大変男らしい顔立ちな上、ムキムキマッチョでした。





☆☆☆☆☆




「姫様、本日はどういったご用件でいらしたんですか?」



にこにこと我らが姫様の想い人リヒト君の母君が尋ねてきます。

夫のメイズよりも年上と聞いていましたか、どことなくあどけなさが残る可愛い人でした。

自分の母君であるお妃と年が近いらしいですが、全くそう見えませんでした。



「ご子息のリヒト殿に助けた礼にと沢山苺を貰いまして…、

食べきれない分はジャムにしたのでお裾分けに来たのです。」



可愛くラッピングされたジャムを渡すとリヒト君の母君は目をキラキラさせました。



「まぁ!

なんて可愛いラッピング!これは姫様の侍女が包んだのですか?」



「いえ、私が…」


「まぁ!

姫様はセンスが良いのですね!私もこんな風にできたら良いのですけど…」



はしゃいだと思ったら急にしょんぼりしだすリヒト君の母君。

とても悲しそうです。



「何か悩み事ですか?」



思わず抱きしめたくなるような感じです。

あのメイズが落ちたのもうなずけると姫様は納得しました。




「メー君に抱き枕を作ったのですが…」



あのメイズをメー君!

というか抱き枕?!

姫様はゴルゴ顔のまま、内心ビックリです。

メイズはチャラチャラしてますが仕事となると鬼です。

新卒や問題児の指導を彼が担当した時は凄かったのをなんとなく姫様は思い出しました。

姫様はそんなメイズの指導になんなく付いていけましたが、特別メニューをさせられた時は死ぬかと思いました。

そんなメイズを可愛らしい笑顔でメー君呼び!



「遠征の時寂しいからと、私の等身大抱き枕がほしいと駄々をこねて…ふふ、リヒトにも呆れられるくらいに。

ここでゴロゴロ転がって…ほんとうに困った人。」



くすりと困ったように、でも少し嬉しそうに言うリヒト君の母君。

よく考えてみよう。

いい年した大人(父親)がヤダーヤダーと幼子のように駄々こねゴロゴロ転がるのを見る息子の心境。

それを呆れた位で済ますリヒト君の健気さに姫様はきゅんきゅんしたのでした。



「頑張って作ってみたのですけど…」



作ったの?!

姫様はビックリです。



「私と同じ大きさなのでラッピングも難しくて…

重さも同じくらいになるように魔石を入れたので余計に…」



…とんでもない技術の無駄使いである。

色々思うことはありましたが、姫様はラッピングを手伝ってあげることにしました。



ちなみに等身大抱き枕はなんとなく人の形になっていました。

生地はなんと昔リヒト君の母君が着ていたネグリジェや普段着だそうで、メイズが指定したそうです。

あのメイズ(暁の殺戮者)が変態にしか見えなくなりそうな気持ちになった姫様でした。



「姫様、ありがとうございます!

メー君も喜ぶと思いますわ。」



「お役にたてたのなら光栄です。」



「…姫様、姫様はもしかするとリヒトが好きなのですか?」



不意にリヒト君の母君が言います。

普段の姫様ならばゴルゴ顔で「いや…」と言えたでしょうがドキドキわくわくそわそわし過ぎた姫様はうっかり真っ赤になりました。


王族に生まれたからには心を許せると信じて間違いない相手以外に心を悟られてはいけないと教え込まれてきた姫様。

王族は厄介です。

考えに考えて行動しなければ周囲を不幸にします。

何気ない一言、何気ない行動が命を奪うことにも繋がりかねません。

姫様はそれが苦手でした。

母上や妹姫様達のように笑顔の仮面をうまくかぶれなかったのです。

だからこそ強面を心がけ、戦場に立つことを選びました。戦いや訓練の場ならば小難しいことを考えなくてもいられるからです。



「姫様、私エーリと申しますの。

昔はおバカのエーリ、恥さらしの白痴姫と呼ばれてましたわ。」



ふんわりとリヒト君の母君…エーリが微笑みました。



「難しいことは今も分かりませんし、しょっちゅう粗相をしますが、

昔から人の気持ちは…本音は分かってしまうのです。」




エーリは優しく姫様の手を握ります。




「姫様は恋をされてますね。

そして絶望もしておられます。

たくさん苦しい思いをしても前を向く姫様は凛々しくて、とても可愛いと私は思いますわ。」



可愛いだなんてそんなこと、ロッテや母上以外言ってもらったことありません。

ずっと、自分には向けられない言葉だと思ってました。



「はい…私は…リヒト殿が…好きなのです…」



言っちゃったよ!

本人にもまだ言ってないのに飛び越えて母君に告白とか!

うわあああぁぁ…と内心高速ゴロゴロしたい心境の姫様でした。



「まあっ!

素敵!姫様の恋私も陰ながら応援しますわ!」



「えっ!?」



「命令すれば無理にでもリヒトを恋人にできるというのにそれをせず誠意を尽くそうとする姿!

自分の恋は自分で切り開く姫様は可愛いですわ!

私好きですそういうの!」



「ええっ!??」



ここにロッテが居たのならば「いえ、ただへたれなだけです」とツッコミが入ったことでしょう。

キラキラ曇りのない瞳でエーリが姫様を見つめます。

その姿がリヒト君にいちいちかぶって死にそうです。(ときめきすぎて)



「姫様、私にできることならば協力しますわ!

さぁ、望みはなんですの?」



詰め寄られるたび後退りした姫様ですがついに壁にぶつかってしまいます。

姫様はオロオロと視線をさ迷わせ、ある物が目につき、口を開きました。



「私は…」






☆☆☆☆☆





「姫様、間に合ってよかったですわ!

さぁ、ご家族とのお食事会に行く準備をなさいませ!」



ふらふらとした足取りで姫様が帰ってきたのにホッとした幼馴染み侍女ロッテは、

着替えを用意し手早く準備を終わらせました。


本日は隣国に嫁いだ妹姫様が交流視察団という名目で遊びに来たので、

ひとまず身内歓迎会をするために食事会をする運びとなったのでした。


姫様は顔ゴルゴ、ムキムキマッチョ版オスカル様な姿をした姫様の出来上がりです。



「…?

姫様呆けた顔してどうしましたの?」



「しちゃった…」



「えっ?」



「等身大抱き枕を作ってくれってお願いしちゃった…」



「はああぁ?!?」




あの時、

詰め寄られた姫様はオロオロと視線をさ迷わせ手作りの布人形が目に入りました。

メイズとエーリを模したと思われる人形が仲良く並べて置いてあって、自分とリヒト君だったら…っとときめいてしまった姫様は「あれが…」と指さしました。


問題があったとすれば直線上に等身大抱き枕があったことでした。



「抱き枕ですね!」



「えっ、違っ…」



「腕によりをかけて作りますっ!お楽しみに~

そうそう、姫様今日は妹姫様がお着きでしょうから早く向かってあげた方がよろしいかと思いますわ!

では、ごきげんよう。」




そんな感じで追い出されるように帰路についた姫様でした。



「…姫様、無理にでも訂正しなかったのは…」



冷ややかな目でロッテがこちらを見ます。

姫様はグッと拳を握り、こらえるように言葉を紡ぎました。



「だってっ…!

抱きしめたかったんだもん…!」



「だもんじゃありません!

よりにもよって想い人の母親になんていうお願いを…!」



「分かってるけどっ!欲しかったんだもん!」



「もんもんつければ可愛くて許されると思わないでくださいまし。」



「ロッテひどい!オブラートにつつんで!もう少し優しく!!!」



「私、正直ですの。」



恋する乙女はちょっぴり変態なようです。






ムキムキマッチョの姫様は本物を抱きしめることができるのでしょうか…?





抱きしめたい←等身大抱き枕


別名、メイズさん変態発覚の巻き。(笑)


エーリさんはオーラ的なものが見えます。

精神年齢は幼いゆえに純真。

ほとんど社交界には出ていない。

特技はお裁縫全般。

よくこぼす。よくこける。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 独特の世界感があって良かったです! 私もこちらでお話を書かせて頂いていますが、なかなか独自の世界観を演出出来なくて苦労しています… これからも執筆活動をぜひ頑張ってください!
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