Alter ego
喜、怒、哀に楽。
それぞれ、
孤独を紛らわすため。
弱さを隠すため。
優しさを装うため。
そして、己自身をも騙すため。
用意された仮面、
与えられた役割。
各々、
人を引き寄せ、味方を作ろうと。
相手に対抗し、強くあろうと。
油断させ、弱さにつけこもうと。
そしてやはり。
己自身に言い訳しようと。
我こそはと、
増長する“自我”。
役柄に命は宿り、
分け与えられた“自己”。
解離して保つ事もかなわない、
己の同一性。
同じ心的外傷より産まれ、
同じ心的外傷より育まれた、
“私たち”。
仮面は仮面でいれば良いものを。
何故。
何故、“私”にとって代わろうとする。
私たちが産まれたのは、
他ならない私を、
護るためではなかったのか。
喜、怒、哀に楽。
そのいずれも、私たちに与えた。
無感動な私。
心的外傷を克服しない限り、
再び感動する事も、
私たちを統合する事も、
かなわない。
“複数人”でいながら、
“一人”ですらいらない。
私たちには、かなわない。