64話 ダンス練習②
ギリギリ滑り込みみたいな形になりましたが、
今日で小説の投稿を始めてから1年がたちました。
着実に更新速度が遅くなってしまっていますが、
余程の用事が重ならない限り2週間以上開けることは
ないようにしたいと思いますので、
これからも楽しんで読んでいただければ幸いです。
「えっ……」
真琴の言っている意味がわかるんだけど、わかりたくなかった僕は思わずそう呟いてから真琴が冗談だって言ってくれることを信じて待っていたんだけど、そんな気配がまるでなかったんだよね。だから
「冗談じゃない……の……?」
って思わず聞いちゃったんだ。そしたら真琴はあきれた表情をしながら
「何よ?冗談だと思ったの?さすがにそんなことは冗談では言わないわよ。それに京をセンターにするには理由があって――」
さっき僕に言ってきたことが冗談じゃないって改めて言ったあと、僕をセンターに置く理由を言おうとしていたんだけど、
「どうしたんですか?」
その前に優花ちゃんが僕たちが話し合っているのに気づいて話しかけてきたんだよね。真琴の言いかけた言葉の続きが気になったけど、優花ちゃんを無視するわけにもいかず
「えっとね?真琴がダンスのことで……」
って少し言葉を濁しながら答えたんだ。僕がセンターで踊るっていうことを知ったら絶対に賛成してくるだろうしね。だから言葉を濁したんだけど、
「ダンスのことで……?あぁ、もしかして京さんがセンターで踊るって話ですか?」
優花ちゃんは当然のように僕がダンスをセンターで踊ることを知っていたんだよね……。まぁ、優花ちゃんだもんね……。
「あっ、やっぱり知ってるんだ……」
だからそう呟くと
「えぇ、丁度現場にも居合わせましたしね」
って返ってきたんだ。優花ちゃんがそう言っていたけど、現場ってどういう意味なんだろって思っていると
「あぁ、現場って言うのは出すね――「優花そこまでよ。そこからはあたしが説明するわ。そもそもあんたが割り込んで来たから説明しそこねたんだし」……わかりました。それでは後はお願いします」
優花ちゃんが説明してくれそうだったんだけど、今度は真琴が割り込んできたんだよね。僕としてはどっちでもいいから早く教えてほしいんだけど……。まぁ、今回は優花ちゃんが引いてくれたからこれ以上長引くことはなさそうだけどね。
そう思いながら真琴の言葉を待っていると
「実はね、生徒会に頼まれたのよ」
「……えっ?」
真琴に簡潔に理由を言われたんだよね。だけど、言っている意味を一瞬理解できなかった僕は思わず聞き返しちゃったんだ。すると
「だから、生徒会に京が踊るときはセンターにしてくれって頼まれたのよ。まぁ、一番集客がいい時間にあたしたちのクラスを置いてもらったんだけどね」
って返ってきたんだよね。それってつまり……
「一番いい時間帯にするために僕が交渉材料に使われたってこと?」
ってことだよね?確かに僕の見た目は他の人よりは目立つと思うけど、最優秀賞をとるために使うのはさすがにひどいよ……。
そんなことを考えていると、真琴は
「いやいやいやいや。京をネタにその時間帯を勝ち取ったわけではない……わけではないんだけど、さすがにこっちからその話を振ったわけではないわよ?ダンスってことで申請をしに行ったときに、文化委員の子経由で生徒会からもしダンスをするならセンターで、劇をするなら主役にしてくれっていう依頼が来ていたらしいのよ。それでその依頼を受けたら好きな時間帯にあたしたちのクラスが出来るのがその依頼に対する見返りだったってわけ」
って僕を交渉材料に使ったってことは否定してからそうなった経緯を教えてくれたんだけど、
「……でも結局一緒じゃないか」
その依頼を僕に相談しないで受けたってことは生徒会に僕を売ったってことと変わらないよね?だから思わずそう呟くと
「……そうね。京に一言も相談もせずに決めてしまったことは確かにあたしが悪いわね。ごめんなさい。でも、言い訳になっちゃうんだけど、最初は断ったのよ?」
真琴もさすがに悪いって思ってくれたみたいで謝ってくれたんだよね。まぁ、今文句を言ったところでもう変わらないし、腹を括るしかないよね。自信が全然ないけど……。でも、それにしても……
「最初は断ったって……、真琴でも断れなかったの?」
真琴が本当に断ろうと思ったら断れたはずなのに、断らなかった理由が気になった僕はそう聞いたんだ。すると
「そうなのよ!断ってそのときはその話はそこで終わったんだけど、すぐに生徒会長があたしのところに来たのよ。それで、色々と融通をきかせるためにもどうしても京のポジションをそうして欲しいって頼み込んできたのよ。そのときにみんなが見てる前で土下座でもしそうな勢いで頭を下げてきてね、それでその勢いに負けちゃって思わず頷いちゃったの。そうして言質を取られちゃって今に至るって感じなのよ。体育祭のときのがあったから京のことには干渉してこないでしょって油断しすぎちゃっていたわ。本当にごめんなさい」
真琴はそう言って、すごい勢いで頭を下げてきたんだよね。たぶん今真琴が言った生徒会長の動きを再現してるんじゃないかな?って思うくらいの勢いで下げてきたもんだから、僕は慌てて手を前に出しながら
「い、いいよ。そういう事情があったのなら仕方ないよ、うん」
って言っちゃったんだよね。そしたら真琴はその言葉を待っていたと言わん
ばかりの顔を浮かべながら
「今いいって言ったわね?それじゃあ、このことは本当に決定するわ。京、ありがとうね!」
って僕に言ってきたんだ。え?本当に決定する……?ってことはまさか!?
そこで僕はあることに思い至ったんだ。それで、思い至ったことは正しかったみたいで
「さすがにあたしも京の了承無しにOKは出さないわよ。いやぁ、それにしても快く受けくれて助かったわ。それじゃあ、早速生徒会長に言ってくるわね」
って真琴は僕に言いたいことだけ言ってから、まるで僕から逃げるように去っていたんだよね。
僕はそれを呆然としながら見送っていると
「……ちなみに、今の手は真琴の常套手段ですので、今後は気をつけてくださいね」
って優花ちゃんが僕に言ってきたんだよね。だから僕は優花ちゃんをジト目で見ながら
「知っていたのなら教えてくれてもよかったのに」
って言ったんだ。そしたら優花ちゃんは
「……私だけそれに引っかかるのって悔しいじゃないですか」
「あっ、うん」
過去に真琴にされたことを思い出していたみたいで、普段では見れないような顔をしながら僕にそう言ってきたんだよね。だから僕はもうこれ以上は触れてはいけないと思って頷くだけにしたんだ。触らぬ神になんてやらってやつだよね、うん。
その後は優花ちゃんと雑談の花を咲かせていると、満面の笑みを浮かべた真琴が戻ってきて僕に無事に交渉が成立したってことを伝えてくれたんだけど、その情報はいらないんよ……。
まぁでも、決まってしまったことは仕方ないと、少しでも上手くなろうとがんばって練習したんだけど、やっぱりその日では癖が抜けることはなかったんだ。
だけどまだ文化祭までは時間があるし、意識してしていれば文化祭までには癖を治すことが出来るよね?
補足説明としましては、
生徒会が京のポジションについて依頼を出してきたのは、某集団(章間⑬参照)が今まで生徒会の要望に応えてきたことに対する報酬として要望してきたもので、生徒会は対応せざるおえなくなってしまったことが原因です。もちろん、真琴と優花は京にこの集団が知られてはいけないというところまで把握しています。
会話に宇佐美が参加していませんが、京たちが会話しているところで回りではクラスメイトがダンスの練習をしているため、その見回りをしていて京たちの近くにほぼいなかったことが原因です。




