55話 第3のペナルティ⑥
最近今までどう書いていたのかをわからなくなって悩む日々。
ゲームとかでも今までしていた方法とかが急にわからなくなることってよくありますよね?
「んっ……っ!?」
神様との話が終わって目が覚めたんだけど、丁度そのときに扉が勢いよく閉まる音が聞こえたんだよね。だから思わずビクッてしちゃったんだ。
何が起きているのかがわからずにパニックになりかけていると
「あぁ、目が覚めたみたいだね」
と声を掛けられたんだよね。それで、声の方向に顔を向けると、
「あれ?丘神先生?っていうより……ここは病院ですか?」
丘神先生がいて、もはや見慣れつつある病室にいることがわかった僕はそう尋ねたんだ。すると
「うん、そうだよ。ここが病院だってすぐわかったってことは何故ここにいるのかは理解しているみたいだね?」
そう丘神先生に聞き返され、僕はそれに頷いて返すと
「そうか。でもこの話は今はしない方がいいから後で都さんや健吾君達と改めて話そうか。ところで、今回倒れたのは例のあれだと思うんだが、それ以外で何かあったかい?」
丘神先生も頷いてからそう言ってきたんだけど、どういう意味かわからずに
「えっと……、どういうことですか?」
と返すと
「いや、何もないならいいんだ。そうか、あの程度は大丈夫ということか」
丘神先生は何か1人で納得した様子で呟いていたんだよね。だから僕にも何のことか教えてもらおうと思っていたんだけど
「大丈夫って何のこと…………。って、どうして僕が例の件で倒れたって知っているんですか?」
そもそも丘神先生が今回の倒れた原因について把握していることに疑問に思った僕はなんで知っているのかを聞いたんだ。そうしたら
「あぁ、実はついさっきまで勇輝がこの部屋に居たんだ。その時に京ちゃんが意識を失ったときの状況を聞いてね。話を聞いた限り、どうも辻褄があっていないように思ってね。それでピンときたんだ」
って教えてくれたんだ。でも
「ついさっきまで……。っていうことはさっきの扉の音は……?」
さっきのすごい大きい音は丘神君が閉めた音……ってことになるよね?そう思いながら呟いていると
「あれは……。京ちゃんが起きる少し前に、勇輝と言い争いになってしまってね……。驚かせてしまって申し訳ない」
丘神先生が少し申し訳無さそうな表情をしながら頭を下げようしていたんだけど、
「ぜ、全然気にしてないから大丈夫だよ!」
その前に僕はそう言いながら手を前で振ったんだ。すると、丘神先生は少し安心した顔をしてくれてから
「そうか……。ありがとう。後、勇輝も少ししたら戻ってくると思う。それに、他のお友達もお見舞いに来てくれるだろうから、その後にでも例の件について話そうか」
「はい、それでお願いします」
そう言った後、「また後でね」っと言って丘神先生は出ていったんだ。
この後僕はみんなが来る前に溺れた言い訳を考えないといけないことに気がつき、真琴たちが来るまでの間に必死に考えたのであった。
………………
…………
……
「もう、本当にビックリしたわよ」
「本当ですよ。泳ぐのは得意だと言っていましたのにどれだけ時間が経っても浮き上がってこなかったですし……。丘神さんの応急処置がなければどうなっていたかわからなかったのですよ?」
丘神君を連れて病室に入ってきた真琴と優花ちゃんに入ってきた途端にそう言われて
「あ、あはは……。ごめんね?実は……」
なんとか考え付いた言い訳を言おうと思ったんだけど、その前に聞き逃せなかった言葉があった僕は一瞬身を固まらせたんだ。それで、そこで言葉を止めちゃったからみんながいぶかしそうな顔で見ていることに気付いた僕はなんとか口を動かして
「…………え、えっと……、丘神君の応急処置っていうのは……?」
恐る恐るそう尋ねると、真琴は顔をニヤニヤさせながら
「そりゃあ、もう溺れている人への応急処置なのよ?人工呼吸に決まってるじゃない」
ある意味予想通りだけど、当たっていて欲しくなかった答えで返してきたんだ。真琴の冗談って可能性も考えて優花ちゃんの方も見たんだけど、真琴の言葉を肯定するように頷くだけだったんだよね……。
そこで漸く丘神君――男の子と人工呼吸をしたということが本当であることがわかった僕は思わず呆然としていると
「すまん!熱海さんには本当に悪いことをしてしまったと思うんじゃが、事は急を要しておったんじゃ……。それでも許可無くしてしまったことは事実……。本当にすまんかった」
そう言いながら丘神君はすごい勢いで頭を下げてきたんだ。そこで漸く我に返った僕は
「い、いや。助けてくれたのに文句なんか何もないよ!それよりもごめんね……?僕なんかのためにその……キ、キスみたいなことをさせちゃって……」
すぐに丘神君に謝ったんだ。キスって単語が恥ずかしかったから顔が赤くなっていたと思うけど……。でも……、だってそうでしょ?男同士でキスなんて誰もしたくないでしょ?だからすぐに謝ったんだけど
「そ、そんなことはない。むしろ俺としたら……」
って、丘神君も顔を真っ赤にしながらすぐに僕の言葉を否定してから何やら呟いていたんだよね。最後の方は聞き取れなかったんだけど……。
やっぱり嫌だったんだよね……。これで嫌われちゃったりしちゃうのかな……。でも、丘神君とはこれからもお話したいんだよね。馬が合うというか話して楽しいというか……。そう思った僕は意を決して
「えっと、あのね?丘神君、少しいいかな?」
前から思っていたことを丘神君に伝えるためにそう丘神君に声を掛けたんだ。大分顔の熱も引いてきたしね。それで僕がそう声をかけると、顔の赤みは引いていたけど未だに何か呟いていた丘神君は
「ん?何じゃ?」
って呟くことをやめて僕の方を向いてくれたんだ。だから僕は
「あのね?いきなりなんだけど、丘神君のことをこれから勇輝君って呼んでいいかな?」
って丘神君に言ったんだ。やっぱり仲良くなるには苗字で呼ぶのってちょっと距離があるしね。これで断られちゃったらそれこそ距離が開いちゃうけど……、今回のことで嫌われちゃっていたら一緒だしね……。何故かこのときに真琴と優花ちゃんの眼を輝かせていたような気がしなくもないけど、気のせいだよね、うん。
それよりも丘神君はいいっていってくれるかな?丘神君の返事を少しドキドキしながら待っていると、丘神君は
「えっ、あっ、も、もちろんじゃ。別に呼び捨てにしてもらってもかまわん」
って、なぜか言葉に詰まっていたんだけど、OKをもらえたんだ。だから僕は
「ありがとう!僕のことも京y……京って呼び捨てで呼んでくれると嬉しいな?」
ニッコリと笑ってから僕のことも下の名前で呼んでほしいって伝えたんだ。ちょっと京矢って言いそうになっちゃった、危ない危ない。
それで、勇輝君は
「あ、あぁ。さすがにいきなり呼び捨てにするのもあれじゃから、京さんってところでどうじゃろうか?」
ってまた顔を赤くしながらもそう返してくれたんだ。何で赤くしていたのかはわからないけど、やっぱり男同士だから出来れば呼び捨てで呼んでほしかったけど、さすがにすぐには無理だよね。だから
「うん。改めてよろしくね!勇輝君!!」
「あ、あぁ。京さん、こちらこそよろしく頼む」
ってお互いに改めて挨拶し、そのあとは真琴と優花ちゃんを含めて皆が帰る時間になるまでお話をしたのであった。そのときに真琴と優花ちゃんがしきりアイコンタクトをとっていたような気がしたんだけど、なんだったんだろうね?
………………
…………
……
「それで?今回はどういうやつなんだ?」
勇輝君たちが帰ってから暫くした後、健吾がお母さんや丘神先生、それに牧野さんと一緒に入ってきたんだよね。それで、入ってくるなり健吾がそう言ってきたんだ。
「今回のは……って、健吾ももうわかってるんだ?」
健吾がもう神様関連ってことがわかっている様子だったから、そう聞き返すと
「まぁな。だからこそこの時間になるまで待っていたんだし」
健吾は肩を竦めながらそう言ってきたんだよね。でも……
「別にこの時間になるまで時間を潰していなくても、真琴たちと一緒に来ていればよかったんじゃないの?」
何か用事があったのならともかく、わざわざ時間を潰さなくても良かったんじゃないかなって思った僕がそう尋ねると
「ま、まぁそうだけどさ……、そうしたら篠宮さんたちが帰るときに俺だけ残る言い訳を言わないといけないだろ?」
健吾が少し歯切れの悪い様子で言ってきたんだよね。何でだろうと思っていると
「実はね?健吾君は京ちゃんが目覚める前から隣の部屋で待機していたんだ。それで京ちゃんが目覚めた後に確認した内容を健吾君に伝えたからある程度健吾君も把握していたんだよ」
って丘神先生が健吾が歯切れの悪い理由を教えてくれたんだ。
「あ、そうなんですか?」
「ちょっ!?何で言っちゃうんですか!?……はぁ、まぁバレてしまったのは仕方が無いか……。それよりも、結局今回のペナルティは何だったんだ?」
それに対して健吾は一瞬丘神先生を問い詰めようとしていたけど、すぐに諦めてペナルティのことを聞いてきたんだよね。そんなに気になるかなぁ?確かに大変だけど、別に命には別状がないって言っていたしなぁ……。って、そういえばまだそのことは僕しか知っていないんだったね。
……っとと、それよりも早く答えないと。
そう思った僕は3つ目のペナルティのこと、それと神様と話した内容について健吾たちに伝えたのであった。
…………
……
「水に沈む……ねぇ。でもそれ以外にはむしろ加護には働くと……。でも、今回は京が気絶するためにあえて加護が働かないようにしたのか。でも、水の中で意識を失ったんだったらかなり危なかったんじゃないのか?」
「うん。勇輝君の応急処置が無かったらたぶん危なかったと思うよ?」
「だよな……………………って、勇輝君?それって、まさか丘神のことか?」
丘神君のことを勇輝君って呼んだことに対して健吾は一瞬身を固まらせたかと思うと、すごい勢いで僕の方に身を乗り出しながら聞いてきたんだね。
「え、う、うん。そうだけど……?」
だからその勢いにちょっと身体を引きながら答えたんだけど、
「な、なんでいきなりそんな風に呼ぶようにしたんだ?」
なおも健吾は食いついてきたんだよね。だから
「なんでって……。やっぱり同性の友達なんだから、下の名前で呼ぶのが普通じゃない?」
ってさも当然のことの様に答えると
「へ?同性の友……達……?」
健吾が気の抜けたような返事をしてきたんだよね。健吾がしつこく聞いてくるから折角答えたのにそんな返事って失礼しちゃうよね。そう思った僕は
「それ以外に何があるの?むしろ健吾は何を思ったの?」
って聞き返したんだ。すると
「い、いや。別に特にないならいいんだ……。本当にそれだけの理由で下の名前で呼ぶようにしたのか?」
やっぱりちゃんと答えてくれなかった健吾が確認みたいな感じにもう一度聞いてきたんだ。だから僕は
「え?まぁ、丘神先生と被るっていうのもあったけど、ほとんどそれだけだけど?」
って返すと
「…………はぁ…………」
盛大に溜息をつかれたんだよね。
「え?何で溜息?」
いきなり溜息をつかれた意味がわからずに溜息の理由を聞いたんだけど、
「いや、まぁ、お前がわかっていないならそれでいいんだ。ただ、ライバルだから特に塩を送るつもりはないが、丘神には同情するなぁって思ってな……」
健吾は何故か遠い目をしながらそう言ってきたんだよね。でも、結局健吾の言っている意味がわからずに僕は首を傾げることしか出来なかったのであった。
次回、少し時間が飛びます。
その話が終われば本編においては1学期編が終わりです。
数話程度章間をしたあと、次章にうつります。




