54話-2 一方その頃……
かなり難産でした。
時間がかかってしまった上に短くてすいません……。
ワリと書く予定のなかった部分だったのに、話の流れでするとか言ってしまったのが原因です。
やはり小説を書くのも計画的にしないといけないですね。(当たり前)
「ちょっ!?溺れてるじゃない!?」
熱海さんが飛び込んだ後、浮かび上がってきたのが熱海さん自身ではなく大量の泡じゃったんじゃ。それを見た篠宮さんも思わず叫んでしまったようにこれは間違いなく溺れておるじゃろう。しかし妙じゃのぅ……。先程篠宮さんが俺に言ってきた熱海さんが泳ぐのが得意ということは熱海さんの反応から見るに嘘ではなかったようじゃし……。それに足がつって溺れてしまったのならばもっと激しく水面に泡が出ているはずじゃしの……。
……っと、そんな悠長なことを考えている暇はなさそうじゃな。早く熱海さんを助け出さんと。
そう思った俺はすぐにプールへと駆け出し、そのままの勢いでプールに飛び込んだのであった。
…………
……
これはいかん。
プールに飛び込んで熱海さんのところまで泳いでいったまではいいんじゃが、熱海さんはすでに意識を失ってしまっておる。しかも口から泡が出ていないということは呼吸が止まっておるってことじゃ。これは一刻も争う事態にまでなっておる。
そう思った俺は熱海さんを抱えてすぐに水面へと顔を出し、
「誰でもいいから救急車を呼んでくれ、頼む!!」
と叫んだ。これで誰かが救急車を呼んでくれるじゃろう。
後は応急処置をしながら救急車が来るのを待つだけなんじゃが、水面に上がって救急車の手配を頼んでいる間に脈を測ってみたところ、脈は止まっていないようじゃ。つまり救急車が来るまでにしておかないといけないことは肺に酸素を送りこみつつ、飲み込んだであろう水を吐かせるだけ……。
…………。熱海さん、すまん!
心の中で熱海さんに詫びた俺は大きく息を吸い込んでから熱海さんに人工呼吸をした。周りがかなりうるさくなった気がしなくもないんじゃが、それよりも人命救助の方が優先じゃ。そう言いながらも顔を赤くしているであろう俺は医者の兄にこういったときの処置の方法を教えてもらっていたことを感謝しつつ、熱海さんが水を吐き出して呼吸をするまで人工呼吸を続けたのであった。
………………
…………
……
熱海さんが水を吐き出し、呼吸し始めたことを確認した俺はプールから引き上げた。その後、熱海さんを安静に寝かしていたところに丁度救急車が来て、付き添いとして俺が一緒に病院に行ったところまではよかったんじゃが……。
「なんでじゃ!!どうして何も教えてくれん!?」
熱海さんの担当医である兄貴に熱海さんのことを聴いたんじゃ。今まで熱海さんの行動が余りにも矛盾点が多かったからのぅ。まずは体育祭のときにハッキリと確信したことなんじゃが、アルビノという特殊体質で今まで生きてきたはずなのに余りにも日光に対する警戒心が無さ過ぎること。普通ならば紫外線対策は念には念を入れるぐらいにするはずなのに、熱海さんは体育祭のときに日焼け止めが無くなったときも誰にもそのことを告げんかった。そのことが原因で倒れたことがあってから改めて熱海さんが日光に対してしっかり警戒しているのかを見てみたんじゃが、あんなことがあったにも関わらずあまり警戒しているようには見えんかった。
それに今回の件じゃ。予想通り足がつったことが原因で溺れたというわけでは熱海さんの身体を見た限り違ったんじゃ。それにやっぱりあの時の反応からして泳ぎが得意ということも嘘ではなかったはず。それなのに結果としては溺れておったんじゃ。
この言っていることや現実と行動がかみ合っていないこと、それに何よりも兄貴が担当医をしていることじゃな。
これらのことから、この矛盾には原因があると考えた俺は兄貴に聞いたんじゃ。「何か熱海さんのことで隠していることがあるのじゃないのか?」と。
じゃが、返ってきた返事は予想通り「答えることは出来ない」じゃった。まぁ、これは患者の情報を他の人に話すことが出来ないのはわかっておるから予想は出来ておった。じゃから俺はいつも通り聞いたんじゃ。「何でもいいから教えられる範囲で教えてくれ」と。
いつもならここで本来なら駄目だとは思うんじゃが、漠然とじゃが秘密の理由くらいは教えてくれるんじゃ。じゃが、今回は「すまないが、今回はそれも教えることが出来ないんだ」って返ってきたんじゃ。じゃから俺は思わずそう叫んでしまったんだ。叫んだにも関わらず兄貴はやっぱり何も言ってくれん。じゃから俺は
「……本当に何も教えてもらえんのか?」
と兄貴にもう一度聞いたんじゃが、
「あぁ、今回のは教えられないとしか教えることが出来ないんだ。お前が口が堅いのは十分承知しているんだが、無理なんだ」
としか言ってもらえなかったんじゃ。今回はいつもみたいな興味からではなく、熱海さんの力になりたくて聞いたんじゃが、この何も教えてもらえず、そして何も出来ない無力感に堪えるべく拳に力を入れていると
「勇輝……。今回はお前が京ちゃんの力になりたくて俺に聴いてきているのは理解しているつもりだ。だけどな、今回は俺も何を教えても大丈夫かもわからないんだ。すまないが、わかってくれ」
と言ってきたんだ。教えても大丈夫なところがわからないとはどういう意味なのかはイマイチ理解出来なかったんじゃが、とどのつまり、部外者の俺には教えられないということは理解出来た俺は
「くそぉっ!!」
という言葉と共に病室を飛び出すしか出来ないのであった……。




