49話 体育祭⑨
「んっ……」
ふと目が覚めるとそこは
「知らない天井だ……」
何か前にもこんなこと言ったことがある気がするなぁ。えっと、前は確か……、そうそう、優花ちゃんの部屋にお泊りに行ったときだったっけ?って、そんなことよりもここはどこだろう?
そんなことを考えていると
「おっ、起きたか」
そう声を掛けられ、その方を向くと
「健吾?」
「ん?あぁ、俺だぜ?」
健吾が椅子に座って本を読んでいたんだ。本の大きさからしてきっとあれはラノベの何かかな?また今度教えてもらおうかな。でも今はそれよりも
「健吾が何でここに……?っていうより、ここって何処なの?」
ここが何処なのかわからない僕はここが何処なのか知っているであろう健吾に尋ねると
「何処って……、そりゃ病院に決まってるだろ?100m走の途中で倒れたことを覚えてないのか?」
「あっ……」
何を言ってるんだという顔をされながらそう返事され、そこで漸く僕は100m走の途中で倒れたことを思い出したのだった。
「そういわれればそんな気が……って、あの後どうなったの!?僕が倒れちゃって中止になっちゃったりはしてない……よね……?」
僕が倒れたくらいで中止ってことはないだろうけど、散々注意されていた熱中症……でいいのかな?で倒れちゃったから万が一ってことがあるかもしれないもんね。そう思って健吾に尋ねると
「問題なく再開されたからそこは安心してくれ。まぁ、京が倒れた後ちょっとだけあるといえばあったが、まぁ気にするほどでもないさ」
「そうなんだ?」
そう返ってきたんだよね。何があったんだろ?あっ、僕が倒れちゃったからそれで一時中断しちゃって、その対応とかがあったってことかな?
うまれた疑問を自己解決した僕はふと窓に目をやると
「あれ?お花?」
そこには花瓶に入れられた花があったんだよね。何でこんなところにあるんだろって思ってそう呟くと
「ん?あぁ、それは生徒会長が来て、そのときに持ってきたやつだな」
「え?何で生徒会長?」
健吾が花がある理由について教えてくれた理由を教えてくれたんだけど、なんで生徒会長がここに?僕と生徒会長って全然接点はないはずなのに……。僕が不思議に思っていることが健吾にも伝わったのか
「京が倒れた後に一時中断するための措置をとっていてすぐに京を助けに行けなかったからその侘びとしてだってさ。まぁ、それをそこに置いていった後仕事が残っているとか言ってすぐに帰って行ったけどな」
「へぇ~、そうなんだ」
すぐに補足してくれたんだよね。別にそんなこと気にしなくていいのにね。すごい律儀な人なのかな?
そんなことを思いながら花を眺めていたんだけど
「……あれ?そういえば他には誰もいないの?」
起きてから健吾以外に誰にも会っていないことに気付いた僕は健吾にそう尋ねた。いや、確かに友達って言える人はそこまで多くはないけどさ?お見舞いに来てる人が健吾以外にもいるっ淡い期待を抱いてもいいじゃない?そういう意味も込めて尋ねると
「あぁ、何を不安がっているのかは知らないが、都さんや修矢さん、それに篠宮さんたちも見舞いに来ていたぜ?」
「来てい……た……?」
健吾が呆れた様子で返してきたんだけど、最後が過去形だったことに対しオウム返しをすると
「あぁ、時間が時間だしな。窓を見てみろよ?」
「え?…………あっ……」
健吾に窓を見るように言われ、改めてみると外は真っ暗で時間がかなり遅いことがわかったんだ。僕が察したことがわかったみたいで、健吾は
「まぁそういうことだ。さっき窓の近くの花を見ていたのに気付かないとは……。まぁ、それは京だから仕方ないとして、京が起きる少し前くらいまではみんな粘っていたんだが、都さんがさすがにもう帰りなさいって言って全員無理矢理帰らせたんだよ。もちろん修矢さんと2人で手分けして送ったらしいんだけどな」
みんながお見舞いに来てくれていたことを教えてくれたんだ。
「そうなんだ。でも、それだったらどうして健吾は一緒に帰らなかったの?」
みんながお見舞いに来てくれていたことに内心ホッとしながらも、健吾だけ残ったことについて聞いたんだけど
「あぁ、それは俺が残るって言ったら都さんも俺ならむしろ歓迎だって言ってくれたからだな」
「……なんで?」
「……まぁ、いいじゃねぇか。あっ、そうそう、ほらっ」
「うわっ!?」
適当にはぐらかされちゃって、いきなり物を投げてきたんだよね。何とか受け取って投げられた物が何かを見てみると
「……お茶?」
紙パックのミネラル入り麦茶だったんだよね。何で?って思っていると
「渡すのを忘れていたんだが、牧野先生もお前の様子を見に来てな。まぁ、後処理が残ってるって言ってすぐに学校に戻ってしまったんだけどな。それで、クラス全員に飲み物を奢ったみたいで、京の分としてそれを置いていったんだ」
「へぇ~……。あっ、じゃあこれ飲んでいいかな?今すごく喉が渇いているし」
「まぁ、いいんじゃないか?誰もとらないし、ゆっくり飲めよ」
「それくらいわかってるってばっ!!」
飲み物がある理由を教えてもらって、その後僕は健吾に茶化されながら飲み物を飲んだのであった。
…………
……
丁度お茶を飲み終わった頃
「どうやら無事起きたみたいだね」
と声を掛けられ、声の方向を向くと丘神先生と牧野さんが部屋に入ってくるところだったんだよね。それで僕たちのところまで来た後牧野先生が
「その様子からしてもう大丈夫みたいだね。もちろん事態が急変するかもしれないから1日は検査入院という形で入院してもらうことになるけど」
「えっ、入院!?」
僕に入院しないといけないことを言ってきたんだよね。だから僕は驚いて思わず声に出していると
「京ちゃんは倒れたから病院に来てるのよ?大丈夫だと思っても万が一のために検査はしっかりしないとね」
牧野さんがそう言ってきたんだよね。そう言われるとやっぱり必要なのかなって思ったけど
「……でも、それだったらやっぱり健吾が残っていた意味ってあんまり無いんじゃ……」
そうなると健吾がわざわざ残っていてくれた意味が無いんじゃないかと思った僕がそう呟くと
「い、いいじゃねぇか。誰も残ってなかったっていうよりは良いだろ?そんなことより丘神先生が京に言うことがあるからしっかり聞いておけよ?」
健吾は少し焦ったように反応した後、露骨に話を逸らすためにそう言ってきたと思うんだけど、丘神先生を無視するわけにはいかないから僕は丘神先生の方を向くと
「ゴホン。いいかな?京ちゃんは今回かなり危ないことをしていたことを理解しているかい?」
丘神先生はそう問いかけてきた。そのことに自覚がある僕は頷いて答えると
「わかっているなら何よりだ。君の身体はアルビノということもあって非常に日光に弱い。今回もあれ以上日焼け止めを塗らずにいたら実際に害が出ていたギリギリの範囲だったんだと思う。そのことを本能的に理解したから脳に熱中症であると誤認に近い形で認識させて倒れた……ということは理解しているかい?」
丘神先生が今回のことを説明してくれたんだけど
「えっと……、つまりどういうことですか?」
イマイチ上手く理解出来なかった僕がそう返すと
「とどのつまり、これ以上日光を浴びさせないために倒れる理由を京の本能が無理矢理に作ったってことさ。まだ真夏というほど暑くもなっていないのに、水分はしっかり取って、汗もしっかりかいているのに熱中症にはまずならないからな」
健吾が補足してくれたんだ。つまり今回倒れたのは熱中症じゃないけど熱中症が原因で……?……うん、要は無茶をしたから倒れたってことでいいんだよね?
そう自己解決していると
「自分なりに解釈出来たようだね。それでは続きを話させてもらうよ?今回のそもそもの原因は日焼け止めを途中で失くしてしまったことが原因なんだけど、どうして他の人に言わなかったんだい?」
丘神先生の声を掛けられたんだけど、半ば自己満足だったこともあって答えられずにいたんだ。すると
「たぶんみんなに心配をかけたくなかったということが理由だとは思うけど、それのせいで倒れちゃったら余計にみんなに心配をかけるということはわかったかい?」
「……はい」
心を読まれているじゃないかって思うほど的確に僕が思っていたことを当てられた後、そのことを軽く叱られた僕はすこし落ち込みながら返事をすると
「今回は勇輝の応急処置があったから何事も無く済んだけど、次も大丈夫という保障はないから本当に気をつけてね。……まぁこれ以上説教みたいなことをするのもあれだし、私と牧野君は失礼させてもらうね。健吾君もあまり遅くならないように。もし何があったらナースコールで呼んでね。ほらっ、牧野君も行くよ」
「えーっ!!私まだ京ちゃんとあんまり話せてないのにもう行くんですか?って睨まないでくださいよ、わかってますって!それじゃあ京ちゃん、いつでも呼んでいいからね」
僕に気を遣ってか丘神先生は牧野さんを連れて行って部屋を出て行ったんだ。その後
「僕の応急処置をしてくれたのって、丘神君だったんだね」
「あぁ、丘神は京が倒れたとすぐに処置のために動いてくれたんだ。みんなも色々と動いてくれたんだし、しっかり礼を言っておけよ?」
「そうなんだ。うん。もちろん明日……は今日入院しないといけないから無理だけど、明後日には学校に出られると思うし、そのときにみんなにお礼を言うよ」
「あぁ。それでなんだが……、少し、いやかなり話が変わるんだが……」
「うん?どうしたの?」
僕の応急処置をしてくれたのが丘神君であることを改めて教えてくれた健吾が話を変えるといったのに言うのを渋っていたから続きを話すように促したんだ。すると意を決したのか
「いや……、中間テストが終わった後の体育って水泳なのは知ってるよな?」
そう言ってきたんだよね。さすがにそれくらいは把握している僕は頷いて答えると
「だよな?じゃあもう覚悟は出来たのか?」
「え?覚悟?」
いきなり覚悟を問われた僕は意味もわからず首を傾げながらそう返すと
「だ、だってほら、京は今女だろ?ってことは水着も……」
「水着も……って、あっ……」
少し視線を逸らしながら水着のことを言われ、そこで僕は漸く健吾の言いたいことが理解出来たんだけど……。
やっぱり女性用の水着を着ないと駄目……なんだよね?
もう少し違う言い回しとか出来たらいいのですが、やっぱり中々上手くいかないですね(・ω・`)
あっ、1つ章間を挟みますので、水着回?はその後からになる予定です。




