48話 体育祭⑧
大筋を決めて書いているだけのつもりなのに、どんどん思っている方向からズレて焦って修正してそれで出た修正を直しての無限ループって怖くないですか?(要約:いつも通りの難産で遅れてすいません)
「どういうことですの!?」
「椎名さんっ!!」
久川さんと海老菜の声に対し、椎名さんは
「ん~、どういうことってぇ、そのままの意味だよぉ?今回はすると聞いてはいなかったけどぉ、海老菜さんはそのつもりだったでしょぉ?」
「つっ……」
ついさっき言った言葉が冗談ではないということを改めて言い、海老菜に問いかけた。その問いに言葉を詰まらせたということは、椎名さんの言うことを肯定しているに他ならなかった。久川さんも察したのか
「……海老菜さん、どういうことか説明していただけますか?」
「瑛子様っ!!私は瑛子様のことを思って……」
「……海老菜さん、今はそういうことではなく椎名さんの言っている意味について教えていただけませんか?」
「そ、それはっ……」
詳しい詳細を直接海老菜に求めていたが、海老菜は口ごもっただけで何も答えなかった。すると
「だぁかぁらぁ。わたしが話してるんだからわたしに聞いてよぉ。いいもん、いいもん。もう知らないんだからなぁ」
椎名さんはさっきから最後まで自分の話を聞いてもらえなかったのか癪に障ったのか、そういってそっぽを向いてしまった。でも、ここで話を止めさせることは出来ないと判断した服部さんが
「私は『最初から』聞いていますので、出来れば『私に』続きを教えていただけないでしょうか?」
最初から椎名さんの話を聞いていることと、自分が聞いているということを強調しながら椎名さんに話しかけていた。すると
「ほんとぉ?えへへぇ、よかったぁ。皆すぐにわたしのことを放っておいて話を進めちゃうんだもん。もう誰もわたしのことなんて気にもとめていないと思っていたよぉ」
そのことが余程嬉しかったのか、そっぽを向いていたのが嘘のような満面の笑みを浮かべながらそう答えていた。
「あぁー……。服部さんだけじゃなく、俺らもしっかりと聞いてるぜ?なぁ?」
そこにさっきよりは幾分か落ち着いた俺もそう話しかけつつ篠宮さんと空元の方を向くと、2人とも頷いていた。それを見た椎名さんは
「そぅ?それじゃあ、しっかり聞いててねぇ?えっとねぇ、まずは普段の流れから説明するねぇ。いつもは久川さんがこの人に好感を持てないというところから始まって、海老菜さんがその人に対して何をするのかを決めてるんだぁ。それで、それを久川さんがいる前で行った後、立ち去る前にいつもその人に対して久川さんには気づかれないように後でもう一度呼び出して、他の人に話したり反抗しないようにしていたんだぁ」
ニコニコしながらそう言ってきた。改めて聞いてもやはりかなりの内容なため、誰も何も言えずにいると
「皆だいじょうぶぅ?反応がないけどぉ、ちゃんとわたしの話聞いてるぅ?」
椎名さんは怪訝な顔をしながらそう言ってきた。だから俺は慌てて
「だ、大丈夫だ。続きを話してくれ」
しっかりと聞いていると伝えて続きを促したんだ。椎名さんもその言葉に満足したのか
「聞いてくれてるなら問題ないやぁ。えっとぉ、続きって言っても後少ししかないんだけどぉ……「椎名さんっ!!」……なぁにぃ?今わたしが話してるんだけどぉ?」
話を続けてくれそうだったんだが、そこに海老菜が割り込んできた。話を途中で断ち切られたことに椎名さんは露骨に顔をしかめていたが、海老菜はそのことを気にした様子もなく
「椎名さんっ!!そういった冗談はあまり感心出来ませんわよ?すぐにその口を閉じることをオススメしますわ」
そんなことを抜かしやがった。今までの態度からして、今更そんなことを信じる奴が……
「えっ!?冗談だったんですか!?」
いたよ……。だが、ここで海老菜と久川さんに時間を取られているわけにもいかないし……。そう思った俺は
「篠宮さん、空元、頼んでいいか?」
と2人にお願いすると
「まぁ、久川さんに説明するのは空元に任せていいとして、海老菜を抑えるのはあたしが一番適役みたいだしね」
「了解ッス。椎名さんの話は服部さんと中山君が聞くのが良さそうッスからね」
2人はそれぞれ了承し、空元は海老菜の話で混乱している久川さんの、篠宮さんは椎名さんが話すのを邪魔しようとしている海老菜を抑えに行ってくれた。
まだ海老菜が何やら言っているようだが、俺はそれを無視し
「椎名さん、待たせてすまない。今からでも説明してもらえるか?」
椎名さんにそう尋ねると
「ううん。全然問題ないよぉ。えっとねぇ、どこまで話したっけなぁ?……あっ、そうそう、他の人に言ったり反抗したり出来なくするってところまでだったかなぁ。それでねぇ、大体の人は反抗しないように……というよりも海老菜さんにほぼ服従させられていたんだよねぇ。わたしが海老菜さんがそんなことしているのに気付いたのは途中からだったんだけどぉ、たぶん今の久川さんのグループメンバーのわたしたち以外の人は大体そういうことだと思うよぉ?ねぇ、宇佐見さん?」
「ふぇっ!?あっ、すいません……。いえっ、そんなことは……」
気にした様子もなく続きを話し、俺たちの様子を少し離れたところから見ていた宇佐見さんにそう呼びかけていた。急に呼ばれた宇佐美さんはかなり驚いていたが、椎名さんの問いに答えることはなく俯いただけだった。だが、俯きながらもチラチラと海老菜の様子を伺っているところから見ると本当のことなんだろう。
俺たちが察したことを確認した椎名さんは
「まぁ、大体そんな感じかなぁ。後はぁ……聞かれる前に言っておくとぉ、中学から高校に上がるときにほとんどの人が違う高校に行ったからぁ、今では1クラスに2人いるかどうかくらいなんだぁ。それでぇ、それ以外で何か聞きたいこととかあるぅ?」
最後にそう締めくくった後、俺たちにそう問いかけてきた。
だから俺は
「そもそもどうして俺たちに話してくれたんだ?言ったらこれは海老菜に対する裏切りみたいなものだろ?それに、もし最初から裏切るつもりだったとしたらどうしてもっと早くにそうしなかったんだ?」
椎名さんが話し始めてくれたときから感じていた疑問をぶつけた。すると
「えっとねぇ、わたしが気付いたときからずっと誰かに言うつもりではいたんだよねぇ。でもぉ、海老菜さんって中学のときから優等生ってことで通っているんだぁ。だからわたしみたいのが誰かに言ったところで信じてもらえなかったんだよねぇ。だから今回みたいに誰かの眼があるところで事が起こってくれることを待ってたんだぁ。大変だったんだよぉ?熱海さんには悪かったかもしれないけどぉ、どうにかして今回でもう終わりにしたかったしねぇ。その方がお兄ちゃんも喜んでくれると思うしぃ」
椎名さんはすぐに答えてくれた。京に悪かった『かも』とか言っているあたりまるで罪悪感がないところを怒りたかったが、たぶん今怒るとまたへそを曲げて答えてくれなくなるかもと思って上手く言葉に出来ずにいると
「椎名さんのお兄さん……ですか?」
服部さんがもう1つの気になる点について尋ねてくれた。すると椎名さんはさらに強く笑みを浮かべながら
「うん!わたしの自慢のお兄ちゃんなんだぁ。皆も今日の朝に見たでしょ?」
「えっと……、それはどういう……「希望!!」……えっ?」
自慢気にそう言い、服部さんがその意味を聞こうとしたときに後ろからの声に遮られた。声の方を向くとそこには生徒会長がいた。何でこんなところにと思ったところで
「あっ、お兄ちゃんだぁ」
「お兄ちゃん!?」
椎名さんが生徒会長に対し、『お兄ちゃん』と呼びかけていた。そのことに思わずオウム返しで聞き返すと
「あぁ、妹が世話になってるみたいだね。君たちがここで希望から話を聞いているということは、今までのことは全部聞いたということでいいのかな?」
生徒会長が俺たちにそう尋ねてきたから俺たちは頷くと
「そうか。それじゃあ、今回のことを一通り教えてもらえないかな?希望にいくら聞いても今回の内容は教えてもらえてなくてさ。さっきまで体育祭を一旦中断する作業におわれていたからすぐにこっちに来れなかったからね」
そのまま生徒会長は俺たちに尋ねてきたから俺は
「えぇ、わかりました。まずは……」
椎名さんから聞いた内容を服部さんに補足してもらいながら生徒会長に伝えた。
…………
……
そうして俺たちが話し終わると
「どぅ?どぅ?お兄ちゃん?わたしがんばったでしょ?ほめてほめてぇ?」
椎名さんは生徒会長にそう言いながら歩み寄っていた。だが、生徒会長は
「このぉっ!大馬鹿者がぁっ!!」
俺たちも思わず耳を塞ぎたくなるような大声で椎名さんのことを怒りながら頭に拳骨を落としていた。
「いったぁぁい。お兄ちゃん何するのぉ?」
椎名さんは頭を抑えながら上目遣いで生徒会長を見ていたが
「何するもどうもあるかっ!!確かに僕が希望に何とかして表沙汰に出来ないかと頼んでしまったのが原因なんだが……。これは完全に殺人未遂……下手したら殺人をしてしまっていたということなんだぞ!!それがわかってるのかっ!!」
「だっ、だってぇ……」
「だってもへちまもない!!」
「うぅ。お兄ちゃんに良かれと思ってやっただけなのにぃ……」
生徒会長はそんなことお構いなしといった感じに椎名さんの今回の行動を咎めていた。褒められると思っていたところを逆に怒られてしまった椎名さんは俯いてしまった。それを見た生徒会長は椎名さんにそれ以上声を掛けずに俺たちの方を見て
「本当に妹が君たちに申し訳ないことをしたね。すまない。僕がもっとしっかりと希望の話を聞きだしていればこんなことにならなかったはずなのに……。いや、たらればの話をしても意味がないね。それじゃあ、僕たち生徒会がこの後の処理は引き受けるよ。橘、咲良、頼む」
「りょーかい」
「わかった」
頭を下げて謝った後、俺たちの返事を聞かずに生徒会長の後ろにいた橘さんと咲良さんにそう声をかけると、橘さんは久川さんのところに行って同行の願いをしに、咲良さんは海老菜のところに行って篠宮さんによって押さえつけられていた海老菜を引き取りに行っていた。
それを確認した生徒会長は
「僕は希望と……、宇佐美さん、君も同行してもらいたいんだけど、いいよね?」
「えっ、あっ、すいません。はい。わかりました……」
宇佐美さんに声を掛けて、了承を貰った後
「本当に君たちには謝っても許されないことをしてしまったよ。熱海さんに土下座をしろって言うならするが……、どうかな?」
「いや、さすがに土下座までは……」
俺たちにそう言ってきたから思わずそう返すと
「そうか……。でもせめて後で熱海さんのお見舞いに行かせてほしいんだけど、いいかな?」
「まぁ、それは俺が決めることでもないですが、いいんじゃないですか?きっと京も喜びますよ」
「ならいいんだけどね……。とりあえずこっちが一段落着いたらお見舞いに行かさせてもらうよ。あっ、もちろん海老菜さんたちが君たちに日常生活において報復とかしに行かないような処置はこっちから取っておくから安心してね。よし、それじゃあ橘、咲良、行こうか」
「あいよ」
「椎名が待たせてただけなんだけどね……」
生徒会長は俺たちに安心してくれと言った後に後ろで待機していた橘さんと咲良さんに呼びかけ、久川さんたちを連れて行った。
それを見送った俺は
「さて、今から俺は丘神に連絡を取って病院に向かうつもりだが、どうする?たぶんこの後もう少ししたら体育祭が再開されると思うが……」
篠宮さんたちに問いかけると
「愚問ね。京のことが心配だし、何よりもうそんな気分じゃないわ」
「そうッスよ。一人で行くなんて水臭いことは無しッス」
「そうですね。私たちが早退することを牧野先生に一言言っておこうと思っていますので、少し待っていて下さい」
すぐにそう返事が帰ってき、服部さんは牧野先生に早退する旨を伝えに行った。そして服部さんが戻ってきた後すぐに俺たちは病院に向かったのであった。
生徒会長が椎名さんの兄という設定は体育祭編の少し前くらいには考えていました。ですので、決して後付け設定というわけでは(
今回で体育祭編の別視点の話は終わりです。
体育祭は後1話分、京視点での話しを予定しております。




