41話 体育祭①
ここから再び本編です。
【追記】指摘していただいた箇所を修正しました。
「それじゃあ、今から誰がどの種目に出るのか決めるわよ!」
真琴は教壇の上に立ちながらそう宣言していた。
「真琴、張り切ってるね……」
「それはそうでしょう。真琴の楽しみにしていた行事の1つですしね」
かなり張り切っている真琴を見ながら僕たちは小声で話した。
体育祭の種目が黒板に書かれていて、真琴がその前で張り切っているんだよね。
確かに真琴は行事は好きだろうしね。だからこそ体育委員になったんだろうし……。
「ほらそこぉ!お喋りしてないでちゃんとこっちに参加しなさいよ!」
僕たちの会話は真琴の耳にまで届いていたみたいでそう注意してきたんだ。
「あっ、ごめん」
「すいません」
だから僕たちはすぐに謝って、改めて参加種目を見直したんだけど
~種目~
・100m走
・二人三脚
・棒引き
・騎馬戦
・鬼ごっこ玉入れ
・クラス対抗リレー
~特別種目~
・部対抗リレー
・応援合戦
ただ見るだけで黙っていようと思っていたんだけど、思わず
「鬼ごっこ玉入れって何?」
見たこともない種目に対してそう口に出すと
「あぁ、それは各クラスで代表を1人決めて、その人に籠を持ってもらうんです。それで、残りの参加者は対戦相手のクラスの籠に玉を入れていくという種目なんです。ちなみに学校や地域で呼び方は全然違うらしいので、もしかしたら内容は知っていたという人もいたかもしれません」
って優花ちゃんが補足してくれたんだ。だけど
「でも、すごくしんどそうだね……」
「ですね。各学年3クラスしかないので、トーナメント形式でも2試合か3試合くらいは少なくてもすると思いますから、その試合の間は走り続けないといけないので、体力に自信のある方が出たほうが懸命だと思います」
「な、なるほど……。僕には無理そうだね……」
走り回る体力なんてないし、そもそも出来るだけお日様には当たらないようにしないといけないからね。
あと、気になったのが
「何だか種目少ない気がするんだけど……?」
それに組体操とか団体で行う種目とかも見当たらないし……。
「あぁ、それはこの高校は体育祭は全て本番のみで行うため、事前準備がいる種目は大体省かれてしまったんですよ。あと、種目が少ないのは、最初に校長先生の話があるため、それを考慮した結果です」
「あっ、なるほど……」
校長先生の話はかなり長いもんね……。あの話を炎天下で聞かないといけないとか嫌だなぁ。あまり熱くなかったらいいんだけどね……。
僕たちがそんな会話をしていると、注意したにも関わらずすぐにまた喋り始めていた僕たちの方を真琴は少し呆れた顔をして見ながら
「まぁ、そこの2人組みが話していた通りに皆も思うところがあるでしょうが……、ぶっちゃけあたしが抗議したい!!……コホン、体育祭の種目数はこの高校の決まり事らしく、ほぼすべて競争系の種目となっているのよね。それで、基本的に1人2種目は出るようになってるからよろしく!あっ、もちろん京は例外ね」
って体育祭の詳細について説明していたんだけど
「えっ?僕!?」
真琴の話を聞いて2種目くらいならなんとか大丈夫かな?って考えていた僕は急に真琴に話を振られてビックリしていると
「何驚いているの?当たり前でしょう?京はアルビノなんだから、出来るだけお日様の光を浴びないようにしないといけないじゃない。このことは学校側に許可を貰ってあるから大丈夫よ?」
「それに、校長の無駄に長い話を聞くだけでも1つの種目に出たくらいにはなるでしょうしね」って肩をすくめながら真琴は言ってきたんだよね。まぁ、確かにあんまり日光は浴びれないけどさ、もうそこまで手を回してくれていた速さに今度はビックリだよね。いや、本当にありがたいんだけどね。
「そ、そうなんだ……。ありがとう?」
とりあえず?僕のことを考えてくれたことだから、お礼を言うと
「まぁ、円滑に物事を進めるには当然のことよ。それじゃあ、さっさと出る種目決めちゃって」
「え?いいの?」
「大丈夫だとは思うけど、万が一時間のかかる種目になっちゃったらダメでしょ?京がどうしても出たいっていうなら考え直してもいいけど、出来るだけリスクは減らしたほうがいいじゃない?」
「そ、それはそうだけど……」
そう言いながら、周りでは不満が出るんじゃないかなって思って見渡したんだけど、皆はわかってると言いたげな顔をしながら頷いてくれたんだよね。
「あ、ありがとう。それじゃあ、100m走でお願いしていい?」
「ま、それが妥当なところかしらね?集団系の種目で、何もしないでもらうってことも考えたけど、さすがにそれは面白くないものね」
僕が100m走を希望すると、真琴はウンウンと頷いてから黒板の100m走のところに僕の名前を書いてくれたんだ。僕だけの名前が書いてあるのってちょっと恥ずかしいけど、こればっかりは仕方ないことだしね……。
「さて、まず決めないといけないことも終わったし次は……「ちょっと待てや!!」……なによこの原始人」
「誰が原始人や、誰がっ!!それよりも熱海が1つ分抜けたってことはその分枠が空いたってことやろ?やったら誰か多く出れるんちゃうんかい?」
僕的に後は見ているだけだなって思って気を抜こうとしていると、小野君が真琴に突っかかりにいっていたんだ。
正直に言って、真琴のことだし、まだ言ってなかったってことは後で言うつもりだったはずだと思うんだけどなぁ……。
僕の予想が当たっていたみたいで、真琴は露骨に溜息をつきながら
「ハァ~……。これだから考えることを放棄したやつは困るのよ。最近じゃ猿の方が考えているのじゃないかしら?今から丁度説明しようとしていたところよ」
って答えたんだ。すると小野君が
「ならさっさと教えんかい」
「あんたが今邪魔をしてきたから言えなかっただけでしょうが」
「ぐっ……」
早く教えろって言っていたんだけど、真琴に正論を言われて言葉に詰まっていたんだよね。何で小野君って何かあったらすぐに真琴に突っかかるんだろうね?もう最近では小野君がただ真琴に絡みたいだけなんじゃないかなって思えてきたよ……。
「まぁいいわ。それじゃあ、今から言うわね」
小野君とのやり取りが終わった真琴はそう切り出してからそのことについて説明し始めたんだ。
基本的に、全員が2回は種目に参加しないといけないんだけど、各クラス2人だけ3回種目に出ないといけないんだって。それで、僕たちのクラスは僕が1回だけしか出られないから3人は3回の種目に出ないといけないみたいなんだ。
「ふぅ、それじゃあ説明も終わったことだし、出る種目決めを始めようかしら」
「まずは……3回種目に出たい人ぉぉぉ!!」
って真琴が手を上げると
「「「「「俺(私)がっ!!」」」」」
クラスの半分以上の人が手を上げていたんだよね。
「アハハハ……」
皆の体育祭の意気込みについていけなかった僕はただ決まっていく様子を眺めるだけしか出来ないのであった……。
…………
……
「よぉし!それじゃあ、これで体育祭前の決め事は終わりよ!お疲れ様でした!!」
って言って、真琴はすごい笑顔のまま教室を出て行った。たぶん、今から職員室に行ってるんだとは思うけど、3回種目に出られるってだけで何であんなにいい笑顔が出来るんだろうね。普段の悪巧みしているときの顔よりは全然良いからいいんだけど……。
あっ、ちなみに3回種目に出るのは真琴と優花ちゃん、それと小野君の3人なんだ。優花ちゃんが食い込むのは予想外だったんだけど、聞いてみたら真琴と種目で勝負して普段勉強で負けている分こっちで取り返したいからってことらしいんだ。
それで、優花ちゃんは気合を入れていたんだけど
「いや、同じクラスなんだから、勝ち負けなんてないからっ!」
僕は思わず優花ちゃんにそう突っ込んでいたのであった。
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