37話 GW【後半】②
今週は間に合った……。
まぁ、木曜に投稿するって決めているわけではないですけども……。
【追記】指摘のところを修正しました。
「ほら、もう行こうぜ。今回は脈がなかったみたいだしな」
「いけると思ったんだけどなぁ……。ごめんね。でも、次はチャンスがあると嬉しいから、よかったら覚えていてね。俺の名前は青木耀って名前だからさ」
「脈がない相手の名前なんか覚えるわけないだろ?ごめんね?こいつが迷惑かけて。ほらっ!さっさと行くぞ!」
「あ、あはは……はは……はぁ……」
こうして僕は何回目かのナンパを断って去っていく姿を見送った。まさかナンパされるとは思ってもいなかったよ……。しかもまだ集合場所の駅について10分経ったか経っていないかくらいなんだよ?まぁ、人見知りな僕がまともな返答が出来るわけもなく、曖昧な返事ばっかりしていると、向こうの人から脈無しって判断しているのかはわからないけど、去って行ってくれているんだけどね。つい、真琴や優花ちゃんと遊ぶときと同じ感覚で集合時間の30分前に集合場所に着ちゃった結果がこれなんだよね。
「はぁ……」
何度目かわからない溜息をついていると、ふと携帯がバイブしたんだ。僕は携帯は基本マナーモードにしているんだよね。音楽を買って変えてもいいとは思うんだけど、どんな音楽なら大丈夫とか考え始めると面倒くさくなっちゃってね……。まぁ、それはともかく、このタイミングで携帯にメールが来るってことは健吾からかな?もしかして遅れるとかいう連絡じゃないよね?これ以上ナンパされるかもしれない時間が延びるとか嫌だよ?
そう思いながら送信主を確認すると、健吾ではなく、何故か真琴からメールが来ていて
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件名:服装
~本文~
約束通りの服を着てくれて感心感心。やっぱりその服装だといつも以上に可愛いし、これからもそういう服を着ることをオススメするわよ?
後は……、今のところナンパしてきた人たちがまだ良い人だから何事も無く断れているけれど、そうじゃない人も出てくるかもしれないし、しっかり断りなさいよ?
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って内容だったんだ。
服装を誤魔化すつもりはなかったけど、なんでわかったの!?もしかしてどこかで見てるの!?
そう思った僕が回りをキョロキョロと見回してみたんだけど、全然見つからなかったんだ。やっぱり駅だから人が多いし、探そうと思っても中々見つからないよね……。
後、何でナンパされたことまで把握しているんだろうね。文面から見るに僕が到着してから複数回絡まれたことも全部把握しているみたいだし……。
ハァ……。早く健吾来ないかなぁ。健吾だったら真琴を見つけてくれるかもしれないしね。それに何よりもうナンパされるのをそろそろ止めてほしいんだよね。『男』の僕が男からナンパを受けないといけないとか、もう拷問と一緒だよね?
「はぁ……」
そんなことを考えながら、早く来てしまったことを後悔していると
「そこのお嬢さん?もしかしてお1人ですか?」
誰かが僕にそう話しかけてきたんだ。僕に話しかけてきたってわかったのかっていうと、話しかけてきたであろう人が僕の方に向かって歩いてきているからなんだ。僕は今壁を背にして立っているだけだから、僕の方に歩いてきている=僕に話しかけているってことになるんだよね。それにしても、何で僕なんかをナンパしようと思うんだろう?僕に話しかけている暇があったら他の人に話しかけた方がまだ可能性があるのにね。
それにしても、すごいセリフ臭い言い回しだなぁっと思いながらも、今度はキッチリ断ろうと思って、顔を上げてから
「すいません。友人と待ち合わ……」
そう言おうとしたんだけど、相手の顔を見た瞬間に思わず言葉を途中で止めちゃったんだよね。だって……
「…………冗談だとしてもタチが悪すぎると思うんだけど?健吾?」
ナンパしてきたと思った人の正体は顔をニヤニヤさせていた健吾だったんだよね。
「いやぁ、京はすごい人気だなぁ。休む暇なくナンパされてて、それをあたふたしながらも断る京を見ているだけでもすっごい楽しかったぜ?」
健吾はそう言ってきたんだよね。それって、つまりあれだよね?僕が困っていたときもずっと見ていたってことだよね?
「…………それで、さっきのはどういう意味なのかな?」
「え?どういう意味って悪ふざけに決ま「まさか」……」
「まさかただ僕を困らせるためだけに悪ふざけをしたっていう馬鹿げた理由なわけないよね?」
「えっ……、いやっ……」
「…………それで?早く説明してほしいな?」
「ごめんなさい」
僕がかなり怒っていることを察した健吾はまるで土下座でもする様な勢いで謝ってきたんだ。その姿を見た僕はほんの少しだけ溜飲が下がったんだけど、まだまだ怒りを抑えることが出来なくて
「ハァ……。そういう悪ふざけはしないでって前から言っているよね?」
「はい……。本当にすいませんでした」
「だから、謝りの言葉じゃなくて、この悪ふざけをした理由を教えて欲しいんだけど……?」
そう言って僕はニッコリ微笑むと
「すいません!!悪ふざけが過ぎましたぁぁ!!」
って健吾は本当に土下座をして謝ってきたんだ。
「ちょっ!?何で土下座までするの!?」
周りの目が痛すぎるんだけど!?それに何より恥ずかしすぎる!!
「と、とにかく!!早く土下座は止めてよ!!」
「京が許してくれるまで……、俺は土下座をするのを止めない!!」
「そんな無駄な覚悟はいらないからっ!!ほら、後で1つ言うことを聞いてくれたら許すから!!とにかくここを離れようよ!」
そう言って僕は健吾の腕を掴んで急いでこの場を離れようとしたのであった。
まぁ、僕の力じゃ健吾が全然動かなくて、健吾が自分で動いてくれたんだけどね……。
…………
……
「ハァ……。ヒドイ目に会った……」
駅から少し離れた場所まで移動した僕は肩をガックリ落としながらそう呟いた。
今日はまだ始まったばかりなのにメンタルを削られすぎてる気がするよ……。
「まぁ、確かに少し恥ずかしかったが、あれはあれでいい経験にはなったと俺は思うぜ?」
僕がそんな気持ちになっているのに、健吾はまるで気にしてないようにそう言ってきたんだよね。
「誰のせいで恥ずかしい思いをしたと思っているの!?誰の!?」
これはまだまだ説教が必要かなって思って、再び説教モードに移行しようと思っていると、それに気付いた健吾が
「それは本当にすまなかった。それで、聞いて欲しいことって何だ?俺に出来る範囲なら何でもするからさ」
すぐに謝ってきたんだ。怒られるのが嫌なら最初から言わなかったらいいのにね……。
「ハァ……。とりあえず、昼食のときに何かデザートを奢ってくれるたらそれでいいよ。」
溜息をつきながら、健吾にして欲しいことを伝えると
「あれ?それだけでいいのか?」
って、キョトンとしながら返してきたんだ。一体何をさせられると想像したんだろうね?
「うん、周りに沢山人がいるにも関わらず怒っちゃった僕も少しは悪いしね」
僕がそれだけでいい理由を伝えると、健吾は釈然としないような表情を浮かべながら
「まぁ……京がそれでいいならいいけどさ……。それで、どうする?何だかんだ言ってもう昼を食べてもいい時間だと思うが……」
お昼ごはんを食べようって提案してきたんだ。その言葉につられて時計を確認したら、健吾の言うとおり、結構いい時間だったんだよね。今までのことで結構時間がとられちゃっていたんだね……。
そんなことを考えていると、健吾がいきなりこっちに手を差し出してきたんだ。
「……うん?何この手?」
「そりゃあ、走るためだよ」
「……なんで?」
「だってそりゃあ……、俺らの様子を覗き見している篠宮さん達を撒くために決まってるじゃないか」
「あっ……」
そういや真琴が僕たちの様子を見ているんだったね……。ってことはあのやりとりもバッチリ見られたってことだよね?うわぁ……。今度会ったとき絶対弄られるよ……。……って篠宮さん達?真琴だけじゃなかったの?
そのことについて健吾に尋ねると、どうやら真琴だけじゃなくて優花ちゃんもいるらしいんだよね。優花ちゃん……、優花ちゃんはこういう類のことは止めてくれる側だと思っていたのに……。
「ハァ……。それじゃあ健吾、お願いね」
そう言って僕は健吾の手を掴んだんだ。だって僕の足じゃ2人には勝てないのはわかっているからね。
「よし、それじゃあ次の曲がり角を曲がったら走るから」
「わかった」
そうして僕たちが曲がり角に差し掛かったところで
「行くぞ!」
「うん!」
真琴達を撒くために、僕は健吾に引っ張られる形で走り出したのであった。
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