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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
登場人物紹介 + 番外編
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番外編④ 夏祭り

時系列的には夏休みの旅行が始まる前くらい……だと思います。

カランコロン


下駄を鳴らしながら待ち合わせに向かうと、そこには


「よう。早かったな」


すでに待ち合わせ場所には健吾が居たんだ。僕は慣れない下駄で躓かないように気をつけながら健吾の方へと駆け寄り、


「そういう健吾こそ。これでもかなり早く来たつもりだったんだけど」


と声を掛けたんだ。これでも1時間前に来たんだよ? いつもいつも健吾の方が早いから、今日こそは健吾より早く来て驚かせようと思ったのに、もう健吾は居たんだよね。だからいつから居たのか気になった僕はそう尋ねたんだけど


「いや、俺もさっき来たところだから大差ないさ。それより、その浴衣はどうしたんだ?」


健吾はそうとだけしか言ってくれなかったんだ。それでその後、僕が着ている浴衣について聞いてきたんだよね。


「そう? それならいいんだけど……。えっとね? この浴衣はお母さんが無理矢理ね……。だから僕としては不本意というかなんというか……」


浴衣の(えり)を軽くつまみながらそう答えたんだ。今着ている浴衣は七夕のときにお母さんと話をしていたときのものなんだ。あれから本当に買いに行ったんだよね。お母さんが次々にピンク色の浴衣だったり、派手な浴衣を持ってきて、それを押し付けられそうになったところを何とか水色ベースの紫陽花柄の浴衣にしてもらって、それを着てきたんだけど……。


「やっぱり似合ってないよね……」


まぁ、そもそも元男の僕がこんな服を着ていることがおかしいもんね。特にそのことを知っている健吾からしたらおかしいことこの上ないと思うし……。健吾には馬鹿にされるだろうなと、その言葉に耐えるために少し下を向いて覚悟を決めていると、


ポン


と頭の上に手を置かれたんだ。

え? 何? と反射的に顔をあげると、健吾は真っ直ぐ僕の方に向いて


「何を心配しているのかは知らんが、似合っているぞ」


とだけ言ってそのまま祭り広場の方へ行っちゃったんだよね。


「え? 今何て……?」


と聞き返したんだけど、健吾はすでに歩き出してしまっていてもう一度聞くことが出来なかったんだ。ただ、健吾が似合っていると(そう)言ってくれたであろうことに思わず呆然として健吾を見ていると、健吾が僕がついてきていないことに気付いたみたいで僕の方へ振り返ったんだ。

そこで我に返った僕は軽く小走りで健吾のもとへ向かったのであった。何故か熱くなった頬を少しでも冷ますために……。


…………

……


「それで? 見たいものとかあるか?」


広場の入り口まで着くとすぐに健吾がそう言ってきたんだよね。


「うーん、特にこれといったものはないかなぁ。折角のお祭りだし色々みたいとは思うけど……」


だけど、お祭りがあるということは健吾に誘われたときに教えてもらったけど、それ以上のことは特に調べもしなかったから知らないんだよね。だからそう返すと、


「まぁそうだよな。下手に色々決めてしまうのも面白くないか。それじゃあ適当に見てまわって、お互いに気になるのがあればって感じでいいか」


と返して来たんだ。だから


「うん。つまりいつも通りってことだよね?」


と言って笑って返すと、健吾も釣られるように笑みを浮かべて


「あぁ、そうだな」


と言って、スッと左手を前に出してきたんだよね。


「……? えっと……? この手は何?」


だけど、何で手を出してきたのかがわからなかった僕はその意図を知るためにそう尋ねると、健吾は右手の人差し指で頬をかきながら、


「あぁ……、その……、なんだ。見ての通り人がすごいだろ? だから逸れないようにだな……」


それにその下駄も慣れてないだろ? と言って、軽く視線を広場の中心の方へと送ってからそう言ってきたんだ。広場の方を見ると、確かに人が多くて、気を抜くと健吾の言う通り逸れちゃいそうだったんだよね。だけど、さすがにこんな大勢の中で手を繋いで歩くのは恥ずかしいと思った僕は


「折角のところ悪いんだけど……」


と1つ前置きをしてから、


「こ、これでどうかな? これでも逸れないとは思うんだけど……」


と言って、健吾の着ているシャツの袖を軽く摘まみながら聞いたんだ。身長差から、見上げるような形で健吾の反応を待っていると、


「あ、あぁ。大丈夫だ、問題ない」


と健吾は僕の少し上へと視線を外しながらそう言ってきたんだよね。その反応に、もしかしたら本当は嫌なところを僕のために折れてくれたのかもしれないと思った僕は


「えっと……。別に嫌だったら言ったら止めるよ」


確認するためにそう尋ねたんだ。すると、健吾はすごい勢いで顔を左右に振って、


「いや、そんなことは断じて無い!!」


何故かすごく力強く言い返してきたんだよね。その勢いに目を白黒させていると、


「あ……。す、すまない……。 それよりここでただ立っているだけってのも時間がもったいないし、早く見てまわろうぜ」


健吾は僕がビックリしていることに気が付いて、僕に軽く謝った後、早く行こうぜと言って僕も歩き出すように促して来たんだよね。健吾の言う通りここで時間を無駄にして楽しむ時間が少なくなってしまうのも勿体ないと思った僕は気を取り直しつつ、「うん」と返して健吾の袖を掴んだまま広場の中へと入っていったのであった。


…………

……


「あっ……」


あれから色々な出店を冷やかして見てまわり、射的の前に通りかかったときにふと景品のぬいぐるみが目に留まったんだよね。そのときに思わず声を出してしまったんだけど


「うん? どうした?」


健吾の耳にも届いたみたいでそう声を掛けて来たんだよね。その声に僕は慌ててぬいぐるみから視線を外してから


「う、ううん。何でもないよ?」


と言ったんだけど、視線を外すのが少し遅かったみたいで健吾が僕が見ていたぬいぐるみに視線を送り、


「あぁ。あれが欲しいのか?」


と聞いてきたんだ。だけど、こういった出店での景品は取りにくい設定をされているだろうと思った僕は


「いや、本当に大丈夫だよ? それよりも他のを見に行こうよ」


健吾に金の無駄遣いをさせまいと、ここで立ち止まらずに動こうと言ったんだけど、


「まぁまぁ。少しだけして無理だったら諦めるからさ」


と言うやいなや、射的のところまで行ってお金を払っちゃったんだよね。


「本当に少しだけだからね? ムキになって取れるまでなんてしなくていいんだからね?」


くいくいと袖を引っ張ってからそう言ったんだけど


「まぁまぁ。まぁ見てなって」


僕に少し離れるように言った後、健吾は銃を構え始めたんだ。そんな健吾を僕はただどうかムキにならないようにと祈りながら見守ることしか出来なかったのであった。


…………

……


「にぃちゃん、すげぇな……。まさかこれを数回で取られるとは思っていなかったぜ……」


出店のおじさんが言う通り、健吾はほんの数回チャレンジしただけでぬいぐるみを取っちゃったんだよね。僕も予想外の結果にただ健吾がおじさんからぬいぐるみを受け取っているところを呆然と見ていると、


「ほれ」


と言いながらそのぬいぐるみを僕へ渡してくれたんだ。


「あ、ありがとう」


正直取れるとは思っていなかった僕は受け取ったぬいぐるみの感触を暫く確かめた後、頬が緩んでいるのを自覚しながらもぬいぐるみを抱きしめていると、


「にぃちゃん、よかったな。彼女さんもあんなけ喜んでくれたら取った甲斐があるってもんだ」


出店のおじさんがそんなことを言い出したんだよね。すぐにその言葉を否定しようと、ぬいぐるみの方へ落としていた視線をおじさんの方へと向けたんだけど、僕がそのことを口にする前に、


「ははは。今回はたまたま上手くいって恰好良いところを見せられてよかったよ。またこいつが欲しいものがあったときにはよろしく頼むよ」


とその言葉を肯定するようなことを言っちゃったんだよね。そしてそのまま健吾は歩き出しちゃったんだ。だから僕も置いて行かれないためにも出店のおじさんに軽く頭を下げてから健吾を追いかけて


「ねぇ? 何であんな風に言っちゃったの? あのおじさん絶対勘違いしてるよ?」


健吾にそう聞いたんだけど


「別にあの人にはもう会わないだろうし別にいいだろ? それよりもそろそろ始まるから急がねぇと」


健吾は悪びれる様子もなくそう返してきたんだよね。しかも何かが始まるとか言い出したから


「そろそろ始まるって何が――」


一体何が始まるのか聞こうとしたところで、ドンッ! という音が聞こえたんだ。何事かと思って音のした方向――空――を見上げると、


「わぁ……」


花火が打ち上がっていたんだよね。花火を見て思わず声をあげていると、


「ちっ……、始まっちまったか。京! 少し急ぐぞ!!」


と言って、僕の手を掴むと、そのまま脇道へ進み始めたんだよね。


「え? ちょっ!? こっちからじゃ花火は見えないんじゃ……」


だけど、どう見ても花火が見えなさそうな方へと進む健吾にそう尋ねたんだけど、


「大丈夫だ。すぐに着くから」


健吾はそうとだけ言ってどんどん進んで行ったんだよね。健吾に手を持たれているのもあり、少しずつ不安になりながらも大人しくついていっていると、


「さて、着いたぞ」


健吾は僕の手を離して、そのままその手を空を指さしながらそう言ってきたんだ。健吾が指さした方向を見ると、


「おぉー……」


丁度木と木の間からすごく綺麗に花火が見えたんだよね。


「ここだとメイン通りから外れているおかげで人もいなくて良いと思ったんだが、どうだ? 祭りの雰囲気も味わいながら花火が見たいというならすぐに戻るが……」


先程までの不安も忘れて、綺麗な花火に感動していると、健吾がそう言ってきたんだ。僕はそれに顔を左右に振って、


「ううん。すっごく嬉しいよ? 健吾ありがとう」


健吾にお礼を伝えたんだ。そして片手が空いてしまっていることに気が付いた僕は、健吾の手を掴むのは恥ずかしいくて、それでもどうしてか健吾の手を掴みたくて、小指だけをそっと掴んでから再び花火を見るために空を見上げたのであった。

ちなみにIFとして、健吾とではなく、勇輝と夏祭りを行った場合というものも、まだ作者の頭の中にしかないですが考えていたり考えていなかったりしますが、需要ありますかね……?

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