番外編③ 七夕
無事? に間に合ったので。
今日の朝に七夕だということを思い出したので、いつも以上に構成が怪しいと思いますが
その点はご容赦を(・ω・`)
後、今回は番外編なので時系列等々にご注意ください。
「お? きたきた! 京! おっはよー!!」
教室に入ると、真琴が手を振りながら僕の方へと近づいてきたんだ。いつもは荷物を置いてから僕が真琴たちのところに行くのに、今日は真琴が僕の方へと来たんだよね。僕はおはようと返してから自分の机まで行き、荷物を置いてから改めて
「どうしたの? なんだか僕を待っていたみたいだけど……」
真琴に尋ねたんだよね。すると真琴は待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべて、
「京は何の願い事をするの?」
って聞いてきたんだ。だけど、いきなりそんなことを言われても何のことかわからなかった僕は
「え? 願い事?」
そう聞き返したんだ。すると優花ちゃんまで僕の机の近くに来て、
「京さん。今日は何の日かわかりますか?」
今日が何の日か聞いてきたんだよね。えっと……、今日は何の日かって……。
「今日って7月7日だよ……あっ……」
そこまで言われてもわからなかった僕は今日の日にちを呟いたところで、ようやく今日が七夕ということを思い出したんだ。僕の反応を見て僕が今日が七夕だということに思い至ったのを真琴はわかったみたいで、
「今日が何の日かわかったみたいね? で? 京は何の願い事をするかしら?」
もう一度僕に願い事は何か聞いてきたんだ。僕はそれに呆れた顔をして、
「いや、今思い出したんだから願い事なんてあるわけないよね?」
と返したんだ。いや、本当は願い事はあるんだけど誰にも言えないことだしね。こう言っておけば真琴も諦めてくれるだろうと思っていると、それが顔に出ちゃっていたみたいで、
「ふぅーん。でもそのワリには顔には願い事がありますーって書いてあるけど?」
ニヤニヤしながら言ってきたんだ。それに僕は思わず、えっと言いながら両手で顔を押さえちゃったんだよね。それはつまり真琴の言ってきたことを認めちゃったことになるわけで、
「確信はなかったけど、やっぱりね。ほらほらぁ? 隠しててもいいことはないぞ?」
と満面の笑みを浮かべて、手をわきわきとさせながらゆっくりと近づいてきたんだ。僕はそれに合わせて少しずつ後退して、
「いや、あのね? 本当に願い事なんて思いついてなんかないからね?」
と言ったんだ。まぁ、当然の如くそんな言葉で真琴は納得してくれるわけもなく、僕は授業開始のチャイムが鳴るまで真琴から逃げ続けたのであった。
…………
……
「あら? おかえりなさい」
何とか真琴から逃げ切り、無事家まで帰ってくるとお母さんがリビングで何かのカタログを見ていたんだよね。だから僕は
「ただいま。お母さんは何を見ているの?」
気になってお母さんに尋ねたんだ。すると、
「あぁ、これ? これは京に何かいい浴衣がないかなぁって見ていたのよ。今日が七夕なのを忘れていたから用意出来なかったけど、せめて夏祭りまでには間に合わせないとって思って」
そんなことを言ってきたんだよね。それに僕は
「いや、そんな派手な浴衣なんか着ないからね? 今の僕なら中1の頃に来ていた浴衣が着れるだろうからそれで十分だし」
お母さんが見ていたカタログをチラッと見てからそう返したんだ。これでこの話は終わりだと思った僕は自分の部屋に戻ろうとしてお母さんに背を向けたんだけど、歩き始める前にお母さんに肩を掴まれたんだよね。
「あれは男の子用の浴衣でしょ? 京は女の子なんだからしっかり女の子用の浴衣を着ないと駄目でしょ?」
何とか逃げ出そうと思って身を捩っていると、お母さんがそう言ってきたんだよね。
「いや? 別に浴衣をわざわざ買わなくてもいいよね? お祭りだって普通の服に行けばい……い……し……」
僕も諦めることなくそう反論していたんだけど、反論している途中でお母さんが僕の肩を掴んでいた手の力を強めたかと思うと強引に僕をお母さんの方へと振り向かせたんだ。そして、
「買うからね?」
と笑顔で言ってきたんだ。お母さんの雰囲気に
「……はい」
思わず頷いちゃったんだよね。するとお母さんは纏っていた雰囲気を霧散させて僕の方から手を離し、パンと両手を叩いてから
「はい、決まりね。それじゃあ、また今度一緒にどんな浴衣を買うか決めましょうね」
と言ってきたんだ。僕は肩を落として
「お手柔らかにね」
とだけ言ってからトボトボと自室へ戻ったのであった。
…………
……
自室に戻ってようやく鞄を置けて一段落をついたところで、僕は真琴たちの会話を思い出していたんだよね。
「願い事……か……」
もし願い事が叶うなら僕はやっぱり……
思っていたことを口に出そうと口を開きかけたところで、
「そういえば京は何の願い事をするの?」
お母さんがノックもせずに部屋に入るなりそう言ってきたんだよね。僕はそれをジト目で見ながら
「だから部屋に入るときはノックしてって言ったよね? それに願い事なんてお母さんならわかるでしょ」
そう返したんだ。だけどお母さんは
「はいはい、次からは気をつけるわね。それより、京の願い事は私はわからないわ」
僕の抗議には取り合わず、それでいてとぼけるようにそう返して来たんだよね。それに僕は思わず口を尖らして
「いや、わかっているよね?」
と言い返すと、
「それはもしかして男の子に戻りたいってこと? でも本当にそれが京の願い事なのかしらね?」
お母さんはやれやれと肩をすくめながらそんなことを言ってきたんだよね。僕が考えていた願い事を予想通り当てて来たときにはやっぱりわかっているじゃないかと返そうとしていたんだけど、お母さんが続けて言ってきた言葉に
「え……? それってどういう……?」
どうしてかはわからないけど、動揺してしまった僕は言葉に詰まりながらそう返すと、お母さんはどこからともなく短冊を取り出すと、
「それは京自身の心に聞いてちょうだい。たぶん巌さんか修矢が竹を持って帰ってくるだろうから、そのときにでも願い事を書いた短冊をその竹に吊るすといいわ。あの2人が持ってきた竹に吊るした短冊の願いは叶うって有名なのよ? もちろん私の中でだけどね」
と言って僕に短冊を渡し、最後にウィンクをしておどけるようにそう言った後僕の部屋を出ていったんだ。
僕はそれを呆然と見送っていたんだけど、途中で我に返り、
「ふ、ふん。そんなこと言われなくても書いてやるんだから」
と僕以外にもう誰もいなくなったにも関わらず叫ぶようにそう言い、ペンを取って短冊に男の子に戻りたいと書こうとしたんだけど、
「……あれ?」
どれだけ書こうと頭で思ってもそれを腕まで伝えることが出来ずに書くことが出来なかったんだ。
「な、なんで……?」
それから、何度も漫画を読んだりして気分転換をしたのだけど、まるでその願いを書くことを心が拒絶しているかのように書くことが出来なかったんだ。途中でお母さんや返ってきた修兄に白紙の短冊を見られてからかわれたりしたんだけど、僕は最後まで短冊にその願い事を書くことが出来なかったのであった。
<七夕 END>