章間⑥ モブ女の集い
ここから数話くらい章間が続きます。
「もう!何なんですの!?あの女!?中山様とは違うクラスなのにいつもいつも一緒にいて!!それに今日も一緒にお弁当なんか食べて!?」
確か熱海京とかいう名前でしたわよね?本当に何なんですの!?私の中山様とあんなに仲良さげにお弁当を食べるなんて図々しいことをっ!
「ま、まぁ。少し落ち着いて下さい瑛子様」
「……コホン。そ、そうですわね。淑女としてはしたなかったですね。海老菜さん、ありがとうございます」
「いえ、瑛子様のお役に立てたなら何よりですわ。ですが、確かにあれは少々見過ごせないですわね」
そう言って、海老菜さんが視線を移した方を見てみると、やはり中山様と熱海京が楽しそうに同じお弁当を食べていた。うぅ、なんて羨ま……ではなく、許しがたい行為なのでしょう!異性と一緒に同じお弁当を食べるなんて……、なんて破廉恥な!!
「そう言えば、今さっき聞こえてきたことなんですけどぉ。あのお弁当って、熱海さんが作った手作りのお弁当らしいですよぉ?」
「そ、それは本当のことなのですか!?」
少し間延びした口調なのが特徴の椎名さんがいきなりそのようなことを言うものですから、私は思わず問い詰めてしまいました。
「い、いやぁ。わたしも偶然耳にしただけですのでぇ。本当なのかどうかはちょっとわからないですよぉ?」
ですが、椎名さんは気にした様子はなく、いつも通りの口調でそう返答してきました。椎名さんはそう言っていますが、この子は確信したこと以外のことはそうそう口にはしない子なので、あのお弁当が熱海京の手作りということは本当のことなのでしょう。
「これは……、想像していたよりも由々しき事態なのかも知れませんね」
思わずそう呟いてしまいました。すると
「これは、熱海さんに少しきつめのお灸を据える必要があるのかもしれませんわ」
と、私の呟きが聞こえたのであろう海老菜さんがそう返してくれました。
「……そうですわね。『私』の中山様に手を出そうとした罪がどれほど重いものであるのか一度思い知ってもらわければいけませんわね。それで、時期についてですが、やはり早いことに越したことはないと思うのですが、御二方はどう思います?」
すると、すぐに海老菜さんが
「瑛子様の言うとおりですわ。やはり早い方が「いやぁ、今すぐは止めておいた方がいいと思うよぉ?」……」
賛同してくださったのですが、声を被せるように椎名さんが反対をしてきました。一体どういうことなのでしょう?出鼻を挫かれた海老菜さんも少し厳しい表情をしたまま、反対の理由を目で促していました。すると、それに気付いた椎名さんが
「だってねぇ。熱海さんのお友達の2人がさぁ?こっちの会話に気付いてるっぽくて、さっきからこっちを睨んでるんだよねぇ」
って何事も無いように言うものですから、一瞬何を言っているのか理解出来なかったのですが、すぐにハッと気づいて、談笑しながら周りの景色を見て楽しんでいるように装いながら中山様がいる集団の方に視線を移すと、そこには椎名さんの言うとおりこちらを睨んでいる2人の女子がいました。
「…………これは、椎名さんの言うとおり、少し様子を見た方が良さそうですわね」
「確かにこうも警戒されていたものでは、何か仕掛ける前にあの2人に止められてしまいそうですわ。椎名もよく気付きましたわね?」
「いやぁ、あの2人も最初はほとんどこっちを気にした様子は無かったんだよねぇ。でも瑛子様がお灸を据えるって言ったのが、たぶん向こうにも聞こえちゃったんだろうねぇ。それからは熱海さんには気付かれないようにしながらもこっちをしっかり睨んできてるんだよねぇ」
私としたことが、また少し声が大きくなってしまっていたようですね……。先ほど海老菜さんに窘められたところだというのに……。私もまだまだということですね。
それにしても、私たちは気付けていなかったのに、椎名さんはしっかり気付いていたのですね……
「……私も椎名さんのように回りに敏感になれたらいいのですが……」
椎名さんの凄さに改めて感心して、思わず口に出てしまったのですが、
「いやぁ。瑛子様はそのままでいいと思いますよぉ?わたしはそのためにいるようなものですしぃ。それに、わたしが周りに敏感なのはもはやクセみたいなものですからねぇ」
やはり椎名さんは何事でも無いように返してきたのですが
「いえ、そういうスキルが無かったとしても、椎名さんは私の大切なお友達ですわよ?…………もちろん海老菜さんも」
例えそういうことが出来なかったとしても、私としては御二人とも大切なお友達であることにはかわりがありません。ですので、椎名さんにはもちろん、先程から椎名さんと2人で話してしまい、蚊帳の外になってしまっていたのが気に食わなかったのか、少しムスッとした顔をしていた海老菜さんにもそう言いました。すると、海老菜さんはパッて顔を上げて
「あ、ありがとうございます瑛子様!!一生ついていきますわ!!」
って、私の手を握りながら海老名さんは言ってきました。
「そ、そう言ってもらえるなら私も嬉しいですわ。ですが、海老菜さんはもう少し落ち着いてくださるとより嬉しいのですが……」
私がそう言うやいなや、海老菜さんはハッとした表情をしてからすぐに手を離してくださいました。もしかして今手を握ったのは無意識だったり……ってことはさすがにないですわよね?
そういうことを考えていると、仕切り直したいのか
「コ、コホン。それでは、時期はどうしますか?あそこまで警戒されていますとそうそう動けませんわ」
っと、咳払いをしてから海老菜さんは尋ねてきました。
「そうですわね……。少し遅いですが、5月の末にあるあの行事のときに……、というのはどうでしょう?」
少し考えてからもう一度御二人に尋ねてみました。すると
「私はそれで問題ないと思いますわ」
「わたしもいいと思うよぉ?丁度中間テストが終わった後だから気が抜けていると思うし、問題ないかとぉ」
御二人とも賛同してくださいました。ですが……
「中間テスト……がありましたわね……」
実はあんまりお勉強の類が得意ではないのですので、少々不安です。そのことが顔に出てしまっていたのか
「問題ないですわ!私が瑛子様のフォローをしますわ!!」
「わたしもいるよぉ?海老菜じゃ手が回らないところはわたしがフォローするから大丈夫~」
御二人ともすぐにそう言ってくれました。私もすぐに
「御二人とも、ありがとうございます。そのときにはよろしくお願いしますね」
とお礼を言ったのですが
「「もちろんですわ!」だよぉ」
御二人とも笑顔でそう返してくださいました。
……やはり私はいい友人に恵まれましたわ。これも日頃の行いが良いおかげですわね。ですのに熱海京のせいで……、思い出したらまたムカムカしてきてしまいましたわ。ですが、焦りは禁物です。
「……では、決行はあの行事にということで。本当は本日の夕方のイベントで決行するつもりで色々手回しをしようと思っていたのですが、その必要がなくなりましたので、ここは大人しくオリエンテーションを楽しむことにしましょう」
「「はいですわ(なぁ)」」
待っていなさい熱海京。貴女には私の大事な人に手を出した相応の罰を受けてもらいますからね!!
<モブ女の集い END?>
気が向いたらでいいので、このモブ女たちの名前の由来を考えてみてください。
苗字か名前のどっちかしか出ていないのがヒントって言うべきなんですかね……
所詮はモブ集団……w




