19話 休日【1】③
30000PVと6000ユニークを達成しました。
ありがとうございます。これからも楽しんでいただければ幸いです。
それでは、予定より遅れてしまいましたが、続きをどうぞ
藤林君に無理矢理連れて行かれそうになっているのを踏ん張って抵抗していると、ふと引っ張られる力がなくなったんだ。
急になくなったもんだから、僕は尻餅をついっちゃったんだよね……。それで、腕を掴まれた痛みから目を瞑っちゃっていたけど、そ~っと目をあけてみるとそこには……
健吾がいたんだ
腕を振りぬいたポーズのまま、今まで見たことが無いような表情をしていた。思わずビクッってなっちゃったくらいすごい形相をしていたんだ……
「おい、藤林。京には手を出すなって言ったよな?」
って健吾が振りぬいた腕を戻しつつ藤林君に話しかけていた。でも、いつもより声にドスが入ってて、ちょっと怖かったり……ってことを考えていると
「べ、別にいいじゃんかよ!ただでさえお前の周りには女の子が一杯いるんだし、1人くらいどうってことないだろ!?」
って藤林君が反論していた。けど、そんなことお構いなしに健吾は
「いいか、藤林。もう一度だけ言ってやる。『京には手を出すな』……おまえの残念な頭でもこの意味くらいわかるだろ?」
「な、なんでだよ!?おまえら付き合ってるわけじゃないんだし、別にいいじゃぐきゃぁ!?」
なおも反論する藤林君の顔を健吾は思いっきり蹴っていた。うわっ、痛そー……。あ、やっぱり鼻血出てる。まぁ全然同情はしないけどね!って、こんなことを考えられるってことは大分冷静になってこれてるってことなのかな?
そんなことを考えていると、健吾はよりいっそう冷たい目で藤林君を見つつ
「それ以前の問題だ。嫌がる女の子を無理矢理連れて行こうとしたあげく、泣かせたんだ。今これだけで済んでいることを幸運と思え」
って言っていたけど、僕は泣いてなんかって思って、手を目に当ててみたんだけど、見事に手がぬれていた。あはは……、全然押さえられてなかったや……。僕男の子なのに……、健吾と比べてほんと情けない。今も健吾に護られてるし……。はぁ……
「ぐっ……。な、何だよえらそうに……。おい、お前ら!中山をやっちまうぞ」
って言ったけど、誰からも返事がなかった。不審に思った藤林君が後ろを振り返ると
「あら?中山君をやるっていうのはこいつ等のことかしら?」
「まぁ、そうなんやろうなぁ。正直言うと手応え無さ過ぎて俺らがやらんでも中山1人で十分やったと思うが……」
藤林君の連れの二人を押さえ込んでいる真琴と小野君の姿があった。
「なっ……!?何だおまえら!?いつの間に!?」
って驚愕する藤林君。それに対して、真琴は呆れた顔をしながら
「あー、はいはい。テンプレセリフどーも。それよりもこっちを向いてていいのかしら?」
と問いかけ、その言葉に藤林君はまるでギギギって音がするんじゃないかってくらいゆっくりと健吾の方に振り向くと
「……どうやら、まるで反省していないな。それじゃあ歯ぁ食いしばりやがれ!!」
すでに拳を振り上げていた健吾に「ちょっ!まっ!ぴぎゃあ!」ってよくわからない言葉を残しながら藤林君は殴り飛ばされていた。
………………
…………
……
「ふぅ、これで藤林達も懲りただろ……」
健吾はそう言って肩の力を抜いていた。藤林君はあの後、なんとか立ち上がって、残りの2人と一緒に去って行ったんだ。まぁ、どうでもいいけどね!あの後すぐに立ち去ったのはこれ以上大事にしたくないからなのかな?まぁ、もう十分手遅れな気もしなくもないけどね……
「よし、京、立てるか?」
あ、そう言えば僕座ったままだったね……。とりあえず立ち上がらないと……。って、あれ?
「ん?どうした?」
中々立ち上がらない僕に健吾が怪訝な顔でたずねてきた。
「あはは……。えっと、腰が抜けちゃって立てないや……」
「そうか、それじゃあどうする?」
どうするってことはあれだよね?この前の帰り道みたいにおんぶしてもらうってことだよね……?恥ずかしいけど、今僕立てないし……
「えっと……、あのときと同じ方法でお願いします……」
待たせるのも悪いもんね。そう思って、僕は健吾にお願いしておんぶしてもらったんだけど、そこで僕達をニヤニヤしながらこっちを見ている視線に気付いた。
「いやぁ、少しは手伝ったけど、いいものを見せてもらえて役得役得♪」
「せやな。まさかリアルでこんなん見るとは思わんかったわ」
「えっと……、ごちそうさまです」
「すごくよかったッスよ」
いや、そんな感想を言われても……。ってか、皆この場にいたってことは、さっきのやり取りも見られていたわけで……
うわ~、どうしよ!?自分でもわかるくらい顔が熱いよぉ。絶対に顔が真っ赤になってるよ……
僕が健吾の背中の上であたふたしていると、皆が
「「「「それで、やっぱり2人は付き合ってる(んス)よね?」」」」
って口を揃えて言ってくるもんだから、
「だから違うって!!」
って僕はいつも通り叫んだのであった……
…………
……
「いやぁ、でも今の状態でそれを言われてもにわかには信じがたいわよ?」
大人しく健吾に背負われている僕に視線を送りながら真琴はそう言ってきた。
「うっ……、だって腰が抜けちゃって歩けないんだもん……」
「いや、それで真っ先に頼るのが中山君っていのが……ねぇ?」
「うっ……、い、いや。でもあの場で一番近くにいたのが健吾だし……」
「そうだとしてもよ?中山君は異性なのよ?それだけで京が中山君のことをどれだけ信頼してるのかがわかるってものよ?」
う~ん、僕からしたら男友達なんだから、問題ないと思うんだけどなぁ。確かにおんぶしてもらうのは恥ずかしいけどさ……。やっぱり、女の子でって考えたらおかしいのかな?う~ん……、よくわかんないや。まぁ、それよりも今はこれ以上真琴に弄られないように話題を変えないと……
「そ、そんなことよりもさ?僕が言うのもなんだけど、よくわかったよね?ゲーセンの中ってうるさいし、中々気付けないと思うんだけど……」
「あぁ、それはね、空元のおかげよ?」
「え?空元君の?」
真琴の言葉に空元の方を見ると眼鏡をくいっって上げていた。仮入部のときも思ったけど、ちょっとキメたいときにはするのかな?
「えぇ、京が藤林君たちに襲われている場に丁度居合わせたみたいでね?それであたし達に知らせてくれたのよ」
「あ、そうなんだ。空元君、ありがとうね」
そう言って空元君に向かって微笑んだ。すると空元君は眼鏡に指を当てながら視線を逸らしてきた。何で僕が笑うと皆視線を逸らすんだろ?僕の笑ってる顔ってそんなにおかしいのかな?う~ん……、まぁ今度皆に聞いてみればいいや。
……あっ、そう言えば藤林君と健吾の会話の中で気になることがあったし、今のうちに聞いておこうかな
「そういえば、藤林君が言ってたことなんだけど、健吾の周りには女の子が一杯いるって言ってたけど、どういうこと?」
って健吾に聞くと、真琴が
「あら、嫉妬?」
っていつも通り茶化してきた。うぅ、やっぱり後で聞くべきだったかなぁって後悔しつつ、でもやっぱり気になるわけで……
「そんなんじゃないからっ!!ただ純粋に気になっただけで……」
思わず尻すぼみになりながらも僕がそう言うと
「まぁ、そりゃあ、これだけ顔が良くて気が利くのよ?放っておかれる方が不思議じゃないかしら?」
って真琴が返してきた。
「え?そうなの!?」
前から思ってたけど、やっぱり健吾ってモテるんだなぁ……。でも、浮いた話を聞かないのはなんでだろ?そのことを健吾に伝えると
「い、いや。俺に聞かれてる困るんだが……」
って困惑しながら頬を指でかいていた。何かはぐらかされてる気がして、さらに追求しようと思ったんだけど
「なぁ、そろそろ帰らん?さっきのでもう遊ぶって雰囲気じゃなくなったやろ」
「そうですね……。今からは気分も乗らないですしね」
小野君と優花ちゃんの言葉で追求の言葉を飲み込んだのであった。
まぁ確かに、今日はも遊ぼうとは思わないもんね……。今は腰が抜けちゃって歩けないけどね……。真琴もそう思ったのか
「そうね……。最後は色々と残念だったけど、今日はお開きにしましょうか。それにしても……、あの野郎。こんな可愛い子を泣かせやがって!今度あったらただじゃおかないんだからっ!!」
って言っていたんだけど、ほどほどにね?確かに怖かったけど、大事には至らなかったんだし、僕は特に気にしてないからね?
まぁ、僕の思いが通じることもなく、後日真琴にボコボコにされた藤林君が頭を坊主にして僕に土下座してきたんだ。一体真琴が何をしたのかは気になるところだけど、それは余談ということで……
~閑話休題~
あの後は歩けるようになっても、家に帰るまで健吾がおろしてくれなかったんだよね……。帰りのバスの席が埋まってたせいで、健吾にずっとおぶられっぱなしだったし、あれは本当に恥ずかしかったよ……。別れるまで真琴達にはからかわれっぱなしだったしね……あはは……。
で、でも、月曜日からはオリエンテーションが始まるからね!何をするのかはまだわからないけど、楽しみだなぁ




