15話 仮入部体験(仮)②
「…………どうして俺はここにいるんだ?」
昼休みが始まるや、真琴に拉致……じゃなくて連れてこられた健吾は僕にそう尋ねてきた
「そりゃあ、京が作ったっていうお弁当を見させてもらうためよ」
のに、真琴が答えていた。そしたら健吾が僕の方に少しジトッとした目をしながら
「京、おまえが黙っておいてくれって言ったから自分の教室で食おうと思ってたんだが……」
そう突っ込んできたんだけど、やっぱり真琴が
「ふふん♪そうは問屋が卸さないってやつよ。まぁ情報元は空元だけどね」
って答えていた。その言葉にギョッと空元君の方を見る健吾。顔の表情がコロコロ変わっておもしろいなぁってそうじゃなくて、それだけ驚いているってことは、やっぱり健吾も気付いていなかったのね
「あのね、空元君もあの場所にいたみたい」
「……ってことは、あのやり取りを見られていたってことか?」
健吾の言葉に僕は無言でコクリと頷いた。すると健吾はふるふると震え始めた。やっぱり健吾も恥ずかしいのかな。僕も今すぐ逃げ出したいん……
「そっかぁ。これでもう隠さなくていいってことか!つまりもう公に京の弁当は俺のものだって言っていいわけだな!」
……全然恥ずかしがってな……い……?むしろ何故かすっごいいい笑顔だし!?
……あれ?おかしいなのは僕なのかな……?いやいや、そんなことないはず!それに僕の弁当は僕のものであって、健吾のじゃないからね?今回はお礼として作っただけで、もう作らないからね?それはちゃんと言っておかないと!
「いやいや、今回が特別なだけで、もう作らないからね?」
ふぅ、これでミッションコンプリート。これでもう安心……
「そう言いつつ、何だかんだ毎日健吾にお弁当を作る京なのであった……」
「いや、そんなナレーションいらないからね?真琴」
なんかフラグみたいに言われてるけど、もう作らないんだからね!
「あらぁ?本当にそうかしら?まぁいいわ。それよりも今回が特別ってどういう意味なのかしら?」
「あっ……!そ、それはあれだよ!ほら、昨日僕が自転車通学の申請を忘れちゃって、健吾に送ってもらたから、そのお礼にってことだよ!!ね、健吾!!」
「お、おう。そうだな。……だからこれからチャリで京を送ってやるたびに弁当を作ってもらえるんだ」
そういって健吾はニヤリと笑った。ハッ!?誤魔化すために言ったことがとんでもないことになっちゃった気が……。ま、まぁこれからは自分で自転車を漕げばいいだけだし、別に問題ないよね、うん。
「ふーん……。まぁ、そういうことにしておきましょうか。それじゃあ、早速味のチェックっていうことで……。その卵焼きもーらいっ!」
「ちょっ!?なんで俺のを取るんだ!?」
「いいじゃない、1つくらい。それじゃいただきまーす……ってうまっ!?なにこの卵焼きすごくおいしいんだけど!?」
「ハッ、たかが卵焼きで何騒いでんねや。卵焼きなんてどれも変わらんやろ。どれ……って、なんやこれ!?なんでただの卵焼きやのにこんなうまいねん!?」
真琴や小野君の流れに乗るかのように、健吾が「だから俺の取るな」って言うのを聞かずにいつの間にか参戦していた優花ちゃんや空元君も僕が作った弁当のおかずを食べていくのであった……
…………
……
「……結局俺の弁当、ほぼご飯だけになってしまったんだが」
結局、おかずをほぼ取られてしまった健吾は少し涙目になっていた。
「ごめんごめん♪このお弁当がおいしすぎるのがいけないのよ」
「中山さん、本当にすいません。でも、本当においしかったです。京さんは料理がとても上手なのですね」
「いやいや、僕なんか全然上手くないよ。お母さんにはとてもじゃないけど勝てないし……」
僕の言葉に、真琴や優花ちゃんは何言ってんだこいつみたいな顔をしていた。僕からしたら何でそこまでおいしいって言われるのかわからないんだけどね?って思っていたら健吾が
「あー、一応補足しておくと、京の母親は料理がかなり上手なんだよ。だから、その母親にみっちり鍛えられた京はかなりの腕前になってるんだ」
って真琴たちに言っていた。「まぁ、比較対象がすごすぎて、本人は気付いてないがな」って追加で言っていたけど、別に皆が大げさに騒いでるだけでしょ?確かにお母さんの料理はおいしいけど、そこまで言うほどのものでもないと思うしね……
「はぁ~、それはまたごちそうになってみたいような、でもそれを食べてしまったら後が怖いような……。っと、もうすぐお昼休みが終わっちゃうけど、京はお昼ご飯食べなくていいの?あたし達が健吾からおかずを取っている間、ずっとあたし達を見てただけだったけど?」
「いやぁ、皆楽しそうだなぁって見てただけだから、今から食べるよ?って、あー……」
真琴に言われてから思い出したように僕は自分のお弁当を開けたんだけど……
「あー……、ってどうしたのよ?ってあちゃあ、見事にめちゃくちゃになっちゃってるわね」
おかずのところが壊滅的な状況になっていたんだよね……。まぁ、あれだけ盛大にコケちゃったんだし、仕方ないって言ったらそうなんだけどね……
具体的には、ただでさえ形が悪かった卵焼きがさらに形を崩していて、ポテトサラダやお握りにハンバーグのソースがかかっちゃってるって言えばわかるかな?まぁ、具体的に説明しても僕が落ち込むだけなんだけどね。ハァ……
「どうしようかなぁ。いや、食べれないわけじゃないんだけど、時間が足りなさそうなんだよね……」
「それなら俺がおかずを半分くらいもらっていいか?小野達に食われちまってほとんどおかずにありつけなかったし」
「え?いいの?あ、いや、でも、こんなぐちゃぐちゃになっちゃったのって嫌でしょ?」
「そんなことないって。それにお前が作ったやつだし、この程度で不味くなるわけないだろ」
「そ、そう言ってもらえるとうれしいけど……。本当にいいの?」
「あぁ」
そう言ってくれた健吾におかずを渡すために、健吾の持っているお弁当に僕のお弁当のおかずをお箸で入れていっていると、ふとこっちを見ている真琴たちに気付くと、真琴はニヤニヤしながら
「いやぁ、相変わらず仲睦まじいことで。やっぱり京と中山君って付き合ってるんじゃないの?」
って言ってきたもんだから、僕は顔を真っ赤にしながら
「そんなんじゃないから!!」
っと叫んだのであった。
そんなこんなで、健吾に無事?におかずを渡した僕は真琴たちにからかわれて顔を真っ赤にしながらお弁当を食べたのであった。
………………
…………
……
「よし、今日のホームルームはこれで終わりだ。ただ、今日から仮入部の体験が出来るようになるから、興味があるクラブがあるやつは各自部室に行くように」
そう言って牧野先生は教室を出ていった。
「さぁ、それじゃあどのクラブから見回っていく?」
そう言って真琴は立ち上がった。
「あれ?真琴は部活動には入らないんじゃなかったの?」
「あたし1人じゃもう入らないつもりだけど、京がどこかに入るならそこに一緒に入ろうかなぁって……ね?」
「そ、そうなんだ。でも、僕が入るとしても文科系になると思うけど、それでもいいの?」
「そりゃあ、もちろん!優花もそうしましょ?」
「そうですね。私もそのようにしましょうか。文化系のクラブなら丁度いいですしね」
い、いや、そりゃあね?一緒のクラブに入ってくれるなら僕もうれしいけどさ?僕に丸投げしちゃって大丈夫なの?
「そ、そう……。他の皆はどうするつもりなの?」
小野君と空元君にも聞いてみたら
「俺は運動系のクラブを一通り見て回るつもりやで」
「僕は今のところ、どこにも入るかは決めていないッス」
って感じらしい。皆、どこのクラブに入るかってちゃんと決めてないんだ。まぁ、僕も全然決めてないんだけどね……
「まぁまぁ、どうせここで話し合ってても決められないんだし、とりあえずは動きながらどうするか決めましょう?」
皆もそう思っていたのか、真琴の言葉に促されるように教室を出たのであった
まだクラブにすらたどり着けないこの現状
タイトル名を間違えたかもしれない(・ω・`)
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