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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第六章 三学期編
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最終話 スタートライン

「さーて、ここで勇敢だった君に選択肢を与えましょう……。

①このまま運命を受け入れる

②この運命を否定する

さぁ、君はどっちがお望みかな?」


ふと気が付くと、僕は真っ白な空間の中にいた。

そして、僕の目の前で自作したのであろう、プレートを抱えた神様がいたんだ。


「京ちゃん久しぶりだね? どう、このプレート? 頑張って作ったんだよ?」


神様は笑いながら、やはり自作だったプレートを自慢してきたんだけど


「ねぇ、神様? あの車は……?」


僕たちに向かって走ってきた車。僕の見間違いじゃなければ、あの車には人が乗っていなかった(・・・・・・・・・・)


「車? あぁ、あれは演出だよ、演出。京ちゃんにここまで来てもらうための儀式みたいなものかな? 初めて会ったときも車に轢かれたでしょ?」


「えっ……?」


今まで疑問にも思わなかったけど、今思い返せば、日が明かる内に、信号を無視してブレーキも踏まずに車が突っ込んでくるなんて、そうそう起きることではない。


「うん、そういうこっと♪ あの時は、京ちゃんの身体を作り変える必要があったから、本当にぶつけたけど、今回は京ちゃんの意識をこっちに飛ばすためだけだったから、京ちゃんの身体自体は無傷なんだよ。すごいででしょ?」


神様はドヤ顔で説明してくれたけど、これが最初から仕組まれたことだったことがわかり、愕然としていると、


「うーん? ビックリしすぎちゃった? いやぁ、ネタバラしなんてするつもりなかったんだよ? えい、隙あり」


神様は僕の額を指で突きながらそう言ってきたんだ。


「じゃあ、何で……?」


神様に突かれた額を手で押さえながら聞き返すと


「そりゃあ、面白くないからだよ」


神様は当然と言った風に返して来たんだ。


「無いとは思うけど、京ちゃんは、今なら男の子に戻してあげるって言ったとしても、戻る気はないでしょ?」


何故かはわからないけど、神様は僕を男の子(京矢)に戻してもいいって提案をしてきたんだ。だけど、


「うん」


もう少し前なら悩んだけど、もう自分の気持ちと向き合うことが出来た今なら、悩む必要はない。だから神様の問いかけに即答したんだけど、


「でしょ? 京ちゃんったら、完全に女の子になることを受け入れちゃったじゃない? あの男の子と女の子の間を迷っている反応を見ているのが楽しかったのに」


僕の答えが不服だったみたいで、神様は頬を膨らませていた。


「いや、そんなこと言われても……」


そうなってしまったんだから、仕方がないじゃないか。ただ、そう言っても神様は納得しないだろう。


「まぁ、気持ちはわかるけどね。お姉さんも(・・・・・)そうだったし(・・・・・・)


「……え?」


どう言えば納得してくれるだろうと考えていると、神様はとんでもないことをサラッと暴露してきたんだ。だから思わず聞き返したんだけど


「そんなことはどうでも良いんだよ。それより、そういうわけだから、京ちゃんと会うのはこれで最後だね。だから、今まで京ちゃんにかけていたペナルティを解いてあげるね? 今回京ちゃんにかけたペナルティはお姉さんの趣味が十二分に含まれていたし。だから出血大サービスとして、全部解除してあげる」


神様はやっぱり答えてくれなくて、僕の今までかけたペナルティを全て無くすと言ってきたんだ。そして、どうしたのかはわからないけど、僕にかけたペナルティをリスト化した紙のようなものを出してきて、それを消すような仕草をし始めたから


「ちょ、ちょっと待って!」


僕は神様に待ったを掛けたんだ。


「うん? どうしたのかな? もしかして、お姉さんに会えなくなるって聞いて寂しくなっちゃった?」


「ペナルティを解いてくれるってことだけど、これだけ残してもらうってことは出来ないかな?」


神様はまた僕をからかうようなことを言ってきたけど、僕はそれには答えず、神様が消そうとしたリストの中の1つを指差しながら聞いたんだ。


「これ? うん、良いよ」


神様は僕の希望に頷き、それ以外の項目を全て消したんだ。実感も何もないけど、これで本当に掛けられていたペナルティは消えたのだろう。


「よぉし、これでお姉さんのすることは終わりだね。それじゃあ、最後にお姉さんから君へお節介を1つだけ。もう女の子でいるってことを決めたのだったら、元男の子だからってことで甘えているところは直した方がいいよ? それじゃあね」


リスト化された紙を消した神様は、僕に言いたいことだけ言うと、指をパチンとならした。すると元々白かった世界がさらに白くなっていき、僕は神様に言い返すことも出来ずに意識を失った。


…………

……


「京! しっかりしろ京!!」


気が付くと、僕は健吾に身体を揺すられながら声を掛けられていた。


「……健吾?」


身体を揺すっているのが健吾であると認識した僕はそう呟くと


「京! よかった! ……すまん、完全に油断していた。京に当たる寸前、最初から無かったかのようにこっちに突っ込んできていた車が消えたんだ。あれは神様の仕業だったんだろう?」


健吾は、安堵の表情を零しながら僕に尋ねてきたんだ。僕はそれにコクリと頷き、


「うん。それよりも健吾、今から少しだけ寄り道してもいいかな?」


身体に異常がないことを確かめた後、健吾にそう尋ねたんだ。


「今からか?」


すでに遅い時間に入り始めていることもあり、健吾は少し渋っていたけれど、


「少しだけでいいから、お願い」


もう一度お願いすると


「本当に少しだけだからな」


健吾は了承してくれたんだ。


「うん、ありがとう」


僕は先程放り投げてしまった縫いぐるみを拾った後、


「ついてきて」


神様に残してもらった白い髪を揺らしつつ、健吾を連れて、目的の場所――健吾に告白された公園――に向かったのであった。


…………

……


「健吾、ここで言ってくれた言葉覚えている?」


目的の公園につき、告白された場所まで来た僕は、健吾の方へと振り返ってそう尋ねた。


「それはもちろん」


健吾も、僕が何をしようとしているかに気が付いたみたいで、真剣な表情でそう返してくれたんだ。


「本当はね? 色々な言葉を考えたんだけど、僕ってそんな言葉をいっぱい思いつくような程器用じゃないから……。だから……、今思っていることをそのまま言うね?」


僕はそこで一度区切り、真琴たちの言葉、神様の言葉、そして彩矢の最後の手紙をもう一度思い返し、


「まずは告白をしてくれてありがとう。でね? 僕も……。ううん、私も(・・)、健吾のことが――」


僕は私としての初めの一歩を踏み出したのであった。

これにて、最終話となります。

最後は駆け足になってしまいましたが、

何度も失踪したにも関わらず、

ここまで読んでいただき、

ありがとうございました。


蛇足的な話については、今後も追加していく予定です。

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