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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第六章 三学期編
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158話 気持ちと向き合うとき3

「京、ちょっと良いかしら?」


勇輝と別れ、教室で荷物をまとめていると、まだ教室に残っていた真琴と優香ちゃんが声を掛けてきたんだ。


「うん、どうしたの?」


2人とも今日は用事が無かったはずだから、もう帰ったものだと思いながら返事をすると、真琴は周りに誰もこっちに意識が向いていないことを確認してから小声で


「で? 丘神君にはどんな返事をしたのかしら?」


「……ナンノコトカナ?」


いきなり勇輝と何かあったんじゃないかって探りを入れてきたんだよね。ただ、告白(あのこと)を言いふらしたくないから、僕は惚けて返したんだ。


「……京さん、無理に惚けなくて大丈夫ですよ。京さんが牧野先生についていった少し後、後を追うように真剣な表情をした丘神さんが教室を出て行ったのですから、少し考えれば分かりますので」


だけど、それもお見通しだと、2人とも笑みを浮かべていたんだよね。その確信の笑みを見て、僕はため息を1つついてから


「絶対に他の人には言いふらさないでよ?」


2人に確認をとると


「「もちろん」です」


2人は即答で返してきたんだ。だから僕はもうほとんど残っていないとはいえ、それでもまだ教室に残っている人たちが、こっちに聞き耳を立てていないことを確認してから、小声で


「……断ったよ」


とだけ2人に伝えたんだ。


「「あぁ、やっぱり」」


僕の答えに、2人とも予想通りだったみたいな反応をしてきたんだよね。それに僕は思わずジト目になって


「やっぱりって……。分かってたなら聞く必要なんてなかったよね?」


苦言を呈していると、


「いや、そこは……、ほら、京って押しに弱いじゃない? だから押し切られる可能性がどうしても捨てきれなかったのよ」


「ですです。やっぱり憶測だけで動いて失敗はしたくないですから」


2人は慌てて言い訳をしてきたんだよね。


「うっ……。でも、昔だったら、その可能性はあったかもしれないけど、今はもう自分の気持ちはハッキリと理解しているから……」


ただ、今はもう自分の気持ちに気が付いて、受け入れているから……。だからこそ、ほかの人の言葉に押し切られることはもう無いんだ。


「おーおー、お熱いことで。彼からはもう告白されているんだったわよね? 初詣のときは返事がまだだって言っていたけど、もうしたのかしら?」


「それは……、まだ……、だけど……」


ただ、まだ返事を伝えるタイミングが掴めていないだけで……。思わず真琴たちから視線を逸らしながら返事すると


「えぇー!?」


真琴は僕の返事が予想外だったようで、驚きの声をあげていたんだ。優花ちゃんの方も、チラリとみると、いつもより目を大きく見開いていたので、驚いているみたい。


「京、悪いことを言わないわ。彼の気持ちを受け入れるつもりがあるなら、早く返事をしなさい」


「そうですよ。今の彼なら心配は……いらないと思いますが、人の心は変わりやすいものです。いつ何があるかわからないのですから、捕まえられるときに捕まえておかないといけませんよ」


そして、そのまま2人に逆に苦言を呈されてしまったんだ。

2人の言葉に何も言い返す言葉がない僕は


「返すタイミングについて、もう少し真剣に考えるよ」


とだけ、返し、これ以上下手な詮索をされる前にと、途中までしか出来ていなかった荷物のまとめを手早く終わらせ、そのまま小走りで駐輪場へと向かったのだった。


でも、健吾のことを確認してくることは、知られているからわかるけど、どうして勇輝のことまで確認をしてきたんだろうね?


…………

……


「健吾、お待たせ……って、どうしたの?」


健吾との待ち合わせ場所である駐輪場まで来た僕は、健吾の姿を見つけて、健吾の近くに行ったんだけど、何やら難しそうな顔をしていたんだ。


「いや、何でもないさ。それより、結構時間かかってたみたいだが、牧野先生に呼び止められていたのか?」


だけど、僕が来たことに気が付いた健吾は、首を振って僕に返すころにはいつもの表情に戻っていたんだ。


「そう? うん、ちょっと教室で話し込んじゃってた。ごめんね?」


さすがに勇輝とのことは健吾には話せないからね。だから真琴たちと教室で話していたことだけを伝えると


「いや、それほど待っていないから問題ないさ。それより、久しぶりの学校で疲れていないか?」


健吾は肩を竦めながら、問題ないって返してきたんだ。


「うん、それは大丈夫。お正月からほとんど家から出なかったけど、それでも昔みたいに学校まではギリギリってわけじゃないんだから」


本当は少し不安だったけど、想像していたよりかなり余裕を持って学校まで来ることが出来たしね。


「そうか。それじゃあ帰るか」


健吾はそう言って、ペダルに足を掛けたので、


「うん」


と返し、僕も自分の自転車のペダルに足を掛けたのであった。


…………

……


人の心は変わりやすい……か。


家まで帰ってくる途中、ずっと頭の中で、真琴と優香ちゃんに言われたことが頭の中で繰り返されていた。そのことをずっと考えていたこともあって、健吾に話しかけられても、ほとんど生返事で返してしまっていたんだ。だから、家に着くころには、


「京、本当に大丈夫なのか?」


健吾にまた心配を掛けちゃっていたんだよね。


「あはは、ごめん。少し考え事をしちゃってた」


また健吾に余計な心配をさせちゃったなと、苦笑いをしながら返すと


「そうか。ただ、気をつけろよ? 車通りが少ない道とはいえ、全く通らないというわけじゃないんだから」


健吾は僕が元気だということはわかってくれたみたいで、同じように苦笑いをしながら気を付けるように行ってきたんだ。


「うん、わかった。ありがとう」


たぶん、今日は健吾が僕が注意力散漫になっていた分、人一倍周りに気を使ってくれたんだろうなと思った僕はお礼を言ったんだ。


健吾はそれに、あぁとだけ返事して、そのまま帰ろうとペダルに足を掛けたんだよね。だけど、僕の頭に繰り返し浮かんだ真琴と彩矢の言葉。それに


どうか彼とお幸せに――


彩矢が最後に残してくれた言葉。あの言葉を思い出すだけで僕は彩矢(彼女)に背中を押してもらっている気がする。だから、


「ねぇ、健吾。今週末時間、あるかな?」


僕はこの気持ちを今週末に伝える決心をしたのであった。

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