11話 入学式③
新キャラ登場回です。
【追記】話数を間違えていたので修正しました。
ガラ……
僕は意を決して扉を開けた。
そしたらさっきまで教室が騒がしかったのに、急に静かになって皆が僕を見ていたんだ。べ、別に僕は髪の色が他の人と少しだけ違うだけの普通の人だよー。わざわざ会話を止めてまで見るほど価値なんてないよー。
っと、それよりも早く席に着かないと。まだ皆僕の方をチラチラ見ながら何か言ってる気がしなくもないけど、しっかり席は確保しないとね。
そうして僕は廊下から二列目の一番前の席に座ったのであった。
ここなら太陽の光もそうそう届かないし、(不本意だけど)身長的な問題で黒板が見えないってこともないしね。
ふぅ、とりあえず席は確保できたし、入学式が始まるまでどうしようかな?ここまで来るのに思ったより疲れちゃったし、このまま時間がくるまで休んでようかな。
そう思って机に身体を預けようとしたときに、肩をトントンと叩かれた。
何事かと思って見上げると、そこには髪の毛を肩にかかるくらいでそろえた活発そうな女の子がいた。
「ねぇねぇ?ちょっと聞きたいんだけどさ?君のその髪って地毛?それとも染めてるの?」
え?何、この子?いきなり突っ込んで来過ぎじゃない?
「あ、いきなりごめんね?ちょっと回りの連中が君のその髪のことを気にしすぎててさ。大きい声で言いたくなかったらあたしにだけでも言ってくれたら黙らせてあげるわよ?」
「おい、篠宮!おまえだけ知るとかセコイやろ!」
あ、この子は篠宮さんって言うのか。まぁ、確かにこの明らかに見られてる感じなのはあんまり気分がいいものじゃ……
「んだとゴラァ!!てめぇらは沢山の視線に晒されるってのがどれだけ気持ち悪いかわかってのか!!少しはこの子の気持ちを考えやがれっ!!」
…………何この子怖い。ってか今のでもう僕への視線はほぼ無くなったし、別に言わなくてもいいんじゃ……
「コホン。それじゃあ、周りのオマケの諸君の目線を黙らすことが出来たし、その髪の毛がどっちなのか教えてもらおうかしら♪」
あ、やっぱり言わないといけないのね……。まぁ、別に言うのが嫌ってわけじゃないけどさ……。
大きい声で言うのはさすがに嫌だった僕は篠宮さんにこっそりと地毛であることを教えたのであった
「ふむふむ……。なるほどねぇ……」
「おい、篠宮。1人で納得してんと、さっさと俺らに教えやがれ」
あ、さっきの男の子が、篠宮さんに教えたことが分かった途端、早速篠宮さんに聞いてるよ……。大きな声では言いたくなかっただけで、僕に直接聞いてくれたら普通に言うのに……。
それにしても、さっきから篠宮さんに絡んでる男の子と篠宮さんはどんな関係なのかな?
「ふふん♪そんなに知りたければあたしを倒してみなさい♪」
「ぐっ……。ちょっと俺より強いからっていい気になるなよ!」
あの男の子、篠宮さんより弱いのか……。それはあの男の子が弱いからなのか、それとも篠宮さんが強いのか……。あの男の子の結構ガタイはいいから、たぶん後者なんだろうなぁ。
「鍛え方が足りないのよ。もっと鍛えてから出直してきなさい♪まぁ、これであたしが睨みを効かせてる間は大丈夫でしょ。えっと……」
そういって、篠宮さんは戸惑っていた。あ、そういえばまだ僕の名前言ってなかったや
「うん、ありがとうね。篠宮さん。それと、僕は熱海京って名前なんだ。これからよろしくね?」
「…………僕っ娘……だと……!?」
「あっ……」
やっぱり、今の僕の身体は女の子なわけで……。やっぱり女の子が僕っていうのはおかしいのかな……
「やっぱり変……かな……?」
恐る恐る篠宮さんにたずねる僕。でも、もしおかしいって言われたらどうしよう……
「いやいやいやいや、余りにも自然すぎて逆にビックリしちゃったというか……。そっかぁ、こんなに可愛くて僕っ娘かぁ。これは先陣切って話しかけた甲斐があったなぁ。これを機に仲良くなって、あわよくば……グフフ……」
…………あれ?すっごく頼りになる子だと思ってたのに、急に母さんと同類なような気が……
「グフフ…………イタッ!?」
僕がちょっと引いて、篠宮さんが何かしらにトリップしている間に、いつの間にか篠宮さんの後ろに回っていた子が篠宮さんの頭を叩いて現実に戻していた。えっと……
「あ、ごめんなさいね?真琴も熱海さんと仲良くなりたいのはわかりますけど、がっつき過ぎはいけませんよ?自分の名前もちゃんと言ってなくはありませんか?」
「あ、そういえば……。熱海さんごめんね。あたしは篠宮真琴っていうの。それで、あたしの頭を叩いたのは服部優花よ。……それで、未だにあたしに睨みを効かせてる『威勢だけ』はいいのが小野徹よ」
別に威勢だけっていうのを強調しなくても……。ほら、小野君落ち込んじゃってるし……。
「あんなのは気にしなくてもいいわよ。どうせすぐいつもの調子に戻ってるし。それよりも、あたしのことは真琴でいいわよ?あたしもこれからは熱海さんのことを京って呼ぶし」
僕が小野君が落ち込んでるのを気にしてるのがわかったのか、篠宮さんがフォロー?をしてきた。小野君には悪いんだけど、僕にはそれどころじゃない問題が……。いきなり女の子の名前を呼ぶとか難易度高すぎるんだけど!?
「えっと……、まだ暫くは篠宮さんじゃだm「真琴でいいわよ?」」
「…………真琴さ「『真琴』でいいわよ?」」
「……これからよろしくね、真琴」
「はい、よく出来ました♪」
そう言って真琴はニッコリと微笑んだ。あの有無を言わせない表情は怖すぎるよぅ。難易度とかどっかにいっちゃったよ……
「こら!熱海さんが怖がってるでしょ?真琴もいい加減に自分のお気に入りの子にはすぐに自分の名前を下で呼ばせるクセを治しなさいよ?」
「えー!どうせいつかは下の名前で呼び合うんだから、別にいいじゃない!」
「ちゃんと相手の気持ちも考えなさいって言ってるのです」
僕が少し怯えてるのがわかったのか、すぐに真琴を咎める服部さん。暴走癖のある真琴とストッパーの服部さんか……。いいコンビだなぁ
「まぁ、ずっと言ってきてますから効果が無いこともわかってるのですけどね……。それよりも、熱海さん、少しご相談があるのですが……」
「うん?何……?」
「えっとですね。物のついでということなんですが、私も熱海さんのことを京さんって呼んでもよろしいでしょうか?」
あ、相談ってそれだけ?改まっていうから何がくるかって身構えちゃったよぉ。真琴のおかげ?でこの程度なら全然気にならないや。っと、早く返事しないとね
「うん。もちろんだよ!これからよろしくね、優花ちゃん!」
思いっきりニッコリ笑いながら僕はそう答えた。そしたら
「は、はい。京さん、これからよろしくお願いしますね」
って優花ちゃんは顔を赤らめながら言ってきたんだけど、どうしたんだろうね?
優花ちゃんが顔を赤らめた理由がわからずに首を傾げてると、優花ちゃんはバッと真琴の方に行って小声で話していた。
「……すいません。真琴が京さんを愛でたいって言った意味がわかってしまいました……」
「むふふ……♪でしょ?こんなに可愛い子は愛でない方がむしろ失礼になるわよ」
「……ですね♪」
優花ちゃんが真琴と小声で話してるけど、こっちに聞こえてるからね?それにしても、優花ちゃんは真面目で僕の味方だと思ってたのになぁ。ハッ!?結局は類ともってやつか!?ぐぬぬ……
「……コホン。すいません、少し取り乱してしまいました。少し今更にもなってしまいましたが、京さんの髪について改めて教えてくださりませんでしょうか?」
あ、そういえばまだちゃんと説明してなかったや。
僕は優花ちゃんと真琴に改めて僕が髪が地毛であることと、ついでにアルビノであることを説明した。
やっぱり理解者が一杯いてくれた方がいいもんね。
って、2人とも動きが固まっちゃったんだけど、どうしたんだろ?
あ、やっぱりいきなりこんなこと言われたら引いちゃうよね……。折角仲良くなれそうだったのに、離れていっちゃったらやっぱり悲しいかな……
「ねぇ、優花……。アルビノって……何?」
「……ハァ。そんなことだろうと思っていました。いいですか?アルビノというのはですね……」
そうして優花ちゃんは真琴にアルビノについて詳しく教えていた。僕としては優花ちゃんがそこまで詳しいのかについてむしろ気になるんだけど……
そのことに気になっているうちに説明が終わったようだ。真琴の顔がすごいことになっちゃってるや
「えぇー!?太陽に当たっちゃだめって……。それは本当のことなの!?」
「う、うん……」
「そっかぁ。おい、そこの木偶の坊!ちょっとこっち来い!」
「誰が木偶の坊や!誰が!!」
小野君……、そこで反応したら認めてるのと同じだよ……。ちゃんと文句言いながらも真琴の方に来てるし……。それにしても、別に騒ぎにしてほしいわけじゃないんだけどなぁ。あんまり目立ちたくないのに……。
どうやって真琴を止めようかと思っていたら、不意に肩を叩かれ、何事かと思って振り返ってみたら優花ちゃんがニッコリ笑って
「京さん。真琴がこうなったら、もう誰にも止められないですよ?」
と言ってきた。ですよねー……
こうしてクラス中に僕のことが伝わるのであった……
…………
……
「もう!そこまでする必要ないって!」
「いやいや、何があるかわからないし、用心するに越したことはないでしょ」
「そうやで熱海!気持ちはありがたく受け取っておくもんや!!」
「で、でも……」
「まぁまぁ。京さんもほとぼりが冷めるまでは諦めて感謝しておいた方がいいと思いますよ?」
真琴が皆に言いふらしてからの行動の早さは凄かったよ……。すぐにカーテンが全部閉められちゃった。廊下側の窓にまで、わざわざどこからか持ってきた布を使って、日光が直接入らないように全部覆っちゃったんだ。みんなの行動力にはビックリだよ、ほんと……
「よし、これで完璧ね!丁度時間もいい頃だし、そろそろ行きましょうか」
「そうですね。そろそろ向かわないと間に合わないと思いますしね」
「え?え?な、何?」
「おい熱海……。何ってそりゃあ……」
「「「入学式やろ」よ」ですよ」
「あっ……」
そういえば、まだだったね……。色々起こりすぎててすっかり忘れてたよ……。
三者三様に突っ込まれた僕は皆と一緒に入学式が行われる体育館に向かうのであった。
…………
……
「ところで、そろそろボクのことも紹介してもらえないッスか?」
「え?」
いきなり声が聞こえて、僕はビックリして後ろを振り返ると眼鏡をかけた男の子がいた。そろそろって……、いつからいたの?
「おい正樹、いきなり話しかけんなや。熱海がビックリしてるやないか」
「いきなりじゃないッスよ!徹君が篠宮さんに絡み始めたくらいから一緒にいたじゃないッスか!?どうしてボクだけ紹介してくれないんッスか!?」
え?そんなときから!?全然気付かなかったや……
「あー、すまん。いつものことやからすっかり忘れてたわ。熱海、こいつは空元正樹っていう名前で、熱海もわかったかもしれんが、特技は気配を消すことや」
小野君が言うには、存在感が無さすぎてついつい忘れちゃうらしいんだ。いやいや、忘れちゃうことはないでしょ。今まで気付かなかった僕が言うのもあれなんだけどさ……
「特技じゃない「っていつも言うんだけど、ほんと空元って存在感がないのよねぇ」……ッスよ……。……別にいいッスよ……。どうせボクは存在感がないッスよ……」
あ、さすがに言葉を被せるのは可哀想だよ……。真琴のせいで空元君がいじけちゃってるじゃない。あと、優花ちゃんもここまでがいつもの流れよってこっそりフォロー入れなくていいからね?全然フォローになってないからね?それ
「いいのよ、気配がないのは本当のことだし。あと、コイツがこうなったら中々戻ってこないし、あたし達は遅刻はしないようにさっさと体育館に向かいましょう?」
それでもなんとか僕だけでもフォローを!っという思いも虚しく、真琴に手を引っ張られる形で体育館に僕は足を運んだのであった。
もうちょっとだけ続くんじゃぞい
入学式だけで一体どれだけかかるのやら……
更新スピードを落として1回の量を増やすのか
多少1回1回の話数が多くなってもこのままの更新スピードでいくか
悩む今日このごろであります




