章間㉜ 当夜
ここは……。
やぁやぁ、話題に出たから早速登場のお姉さんだよ。
……呼び出されたってことですか。
そうそう。それで、何で呼び出されたのか……はわかるよね?
はい。健吾さんにはあのように言いましたが、まさか本当にすぐに呼ばれるとは思いませんでしたが。
そうだよねぇ。でも君も悪いんだよ? 京ちゃんが聞いていなかったとはいえ、あれはさすが話過ぎだったし。
そうかもしれませんが、あの場ではないと伝えられなかったことなので。
それはつまり、後悔はしていないってことかな?
えぇ、1mmたりとも。
そっか。それじゃあ覚悟はいい?
いつでも。
そっか、それじゃあね。
……………………。
なんてね? 本当にすると思った?
…………はぁ。違うのでしたら何で呼び出されたのですか?
うーん、いきなり聞いちゃうかぁ。まぁ、半分はお姉さんの愚痴を聞いてもらうためかな? 最初は本当に驚いたんだよ? 折角京ちゃんとはほぼほぼ正反対だからこそ彼のことで何か面白そうなことが起きると思ったのに、争うことなく身を引いちゃうんだもん。まぁ、それはそれでと思って見てて楽しかったから今の今まで黙って見ていたんだけどね。
それはつまりお咎めなしということですか?
んー、そうしてあげたいのは山々なんだけど、そうは問屋が卸さないんだよねぇ。君がどこまで把握しているかはわからないけど、君がここに存在出来る大前提を君自身が否定しちゃったからね。
……いつまででしょうか。
そうだねぇ。君自身が受け入れちゃっていることもあるから、お姉さんの予想よりは早いんじゃないかな? 大体…………の前には消えちゃうんじゃない?
確かに早いですね。私が消えた場合、京へのペナルティはどうなるのでしょうか? 私が1つ消えることになりますから、代わりに違うものをということはやめてあげてほしいのですが。
それはするつもりはないから大丈夫だよ? そもそも君のことを読み切らなかったお姉さんの落ち度だからね。
そうですか。ならよかったです。
あーあ、もっと面白いことが起きるとは思ったんだけどなぁ。京ちゃんを君が乗っ取る未来だってあったんだよ? 正確に言うなら彼が君のことを好きになって、京ちゃんが身を引いちゃうってことなんだけど。どう? 少しは興味ある?
いえ、特には。
ほーんと、君って冷めてるよねぇ。一度決めたら何があっても真っ直ぐでブレないところとか、京ちゃんとは違い過ぎてお姉さんはからかってて面白くないぞ?
私をそうしたのは貴女でしょうに。
まぁ、そうなんだけどね。さて、それじゃあそろそろ京ちゃんのところに送り返そうかな。
もうですか? 私もあまり貴女とは一緒に居たくはないので、全然かまいませんが。
ほんっと、ズバリと言ってくるねぇ。そんなにお姉さんのこと嫌い?
えぇ、嫌いですよ? 私をここに呼んでくださったことには感謝しておりますが……。貴女は結局貴女以外の人のことを人とは見ていませんよね?
え? そりゃそうだよ。だって、お姉さんは神様だし。
そういう設定はいいです。だって貴方は――。
はいはい、設定とか言わないの。それにしても、そこまで気づいていたんだね? 本当に君は想定外。
……はぁ。そうして人のことは散々弄ってくるくせに、自分のことになると無理矢理にでも止めてくる。そういうところが私には合わないんですよ。だからこそ、貴女のことが大嫌いなんです。
大までついちゃうかぁ。面と向かって大嫌いって言われて傷心したお姉さんは1人になりたいから、君とはもうお別れだね。
そうやって自分の都合が悪くなるとすぐ貴女は――。
……ふぅ。これで煩いのはいなくなった。まぁ、もう会うこともないだろうから何言われてもお姉さんは別に気にしないんだけどねー。ただ、平然とネタバレをしようとしてくるのだけはダメだよね。そんなことされちゃうと楽しめないし。まぁネタバレされたらされたで、それとは違う未来に誘導すればいいだけだけど。
それはともかく……。ほんっと、期待外れだったよね。折角京ちゃんを煽……じゃない刺激になるかと思ってペナルティとして引っ張って来たのにね。それがすぐに諦めちゃうんだもん。外れも外れ、大外れ。でもまぁ、夏のあれで京ちゃんが予想以上に彼に惹かれていたおかげで結果オーライだったよね。そういう意味では、下手に何かして京ちゃんの心が折れちゃったりするよりは良かったって考えるべきかな?
ま、いっか。もう終わったことだしね。彼女の出番も後もう少しだし。
さてと、そろそろ京ちゃんの観察に戻ろうかな。あまり野放しにし過ぎると今回みたいになるってことはわかったけど、それでも結果がわかっているほど飽きちゃうものはないもんね。不確定要素が1つ減ったから今回みたいなことはもうそうそう起きないとは思うけど。
そういうわけで、お姉さんからはこれ以上言うことはなし!! それじゃあねぇ、ばいばーい!!
<当夜 END>




