141話 クリスマスイヴ⑥
女の子の誕生日、その日は丁度雪の降る日だった。昔から一緒に遊んだ公園に、最近妙に距離を話されていた女の子を何とか連れだした男の子は、小さい頃にした結婚の約束を覚えているかを尋ねた。だが、男の子との関係を壊したくなかった女の子は覚えていないと嘘をついてしまう。男の子は男の子で、女の子の嘘を信じてしまうが、それでももう引くつもりがなかった男の子は、女の子にあるプレゼントを手渡した。それは小さい頃に約束した、当時では決して手が届かなかった物であり、これを手に入れたときに結婚しようと誓い合った物であった――。
本当に一番の山場を紹介してくれるが、ネタバレもよくしてしまうため、人により評価が別れる情報誌『見所抜粋』より
「うわぁ……」
僕は無意識に感嘆の声をあげていたんだ。だって、ホワイトクリスマスだよ? ただでさえクリスマスに健吾とデートを出来ているだけでも奇跡のようなことなのに、その上雪まで振ってくれるなんて……。嬉しいことが起こりすぎて、テンションが上がりに上がった僕は
「ねぇ、健吾!! これってホワイト……ッ!!」
健吾にホワイトクリスマスだって言おうとしたんだけど、途中で今日がクリスマスだってことを健吾に内緒にしていたことを思い出した僕は言葉を途中で無理やり打ち切ったんだ。だけど
「うん? どうしたんだ? 何か言いかけていたみたいだが……」
途中で言葉を止めたことがダメだったみたいで、健吾が僕にそう尋ねて来たんだ。
「ううん、何でもないよ」
だけど僕は誤魔化すためにそう返したんだ。すると健吾は何か少し考える素振りをした後
「確認したいんだが……。今日がクリスマスイヴだってことに気付いているか?」
健吾が僕に今日がクリスマスイヴだということを知っているか聞いてきたんだ。
「な、何でそれを……」
まさか健吾がわかっているなんて思っていなかった僕がそう聞き返すと
「やっぱりか……。京、あのな? そこら中の店でクリスマスセールとか書かれているのに、今日が何の日かわからない方がおかしいだろ?」
健吾は少し呆れた表情を浮かべながら何でわかったかについて教えてくれたんだ。
「えっ、あっ、そ、そうだね。あはは……」
全然気づいてなかったよ……。思っていたよりも浮かれていたことを自覚して、思わず苦笑いをこぼしていると
「ちなみに今更何だが、そんなクリスマスの日に俺と一緒でよかったか?」
健吾は僕の様子を窺いながらそう聞いてきたんだ。ただ、内容が本当に今更過ぎて、今度は普通の笑みをこぼしながら
「ふふ……、本当に今更だよ。嫌だったり、他に用事があるなら先に言っているって」
健吾にそう伝えたんだ。すると健吾の顔の表情は安堵のものへと変わり
「はは、そうだよな。それじゃあ、折角のホワイトクリスマスなんだ。雪を楽しみながらこの辺りを見て回るか」
僕に周辺散策の提案をしてきたんだ。
「うん!! 折角のホワイトクリスマスだもんね!! 堪能しなきゃね!!」
きっと健吾は僕とは違う意味で言っているんだろうな。そう思うとチクリとした痛みがあったけど、僕はそれを無視して笑顔で健吾にそう伝えたんだ。これが最初で最後のデート。折角の神様からの――あの人じゃない別の神様のね――プレゼントなんだから、出来るだけ長く覚えていられるように堪能しなきゃ。だから僕は改めてこの、絶対に知られてはいけない気持ちに改めて蓋をして、健吾と一緒に街の散策を始めたのであった。
…………
……
「やっぱり駅が違うと色々と変わったものがあって面白かったね」
「そうだな。まさかメロンパンを鏡餅みたいにしたものがあるとは思わなかった」
「あぁ、あれは面白かったね。僕はあの個人経営の本屋さんかな。本の種類が偏り過ぎてて見てて楽しかったよ」
あれからデートスポット……に行くわけでもなく、いつも遊ぶように街の散策というなの店の冷やかしをして回ったんだ。デートスポットに行けなかったことは残念だったけど、それでもずっと健吾と一緒に居られたんだから贅沢は言えないよね。それで今は帰りの電車の中なんだけど、健吾と今日のことについて話し合っていたんだ。ただ、隣町というだけあってすぐに最寄駅についてしまうわけで
「あぁ、本当に今日は楽しかったなぁ」
いつもの駅の改札を通り、後は家に帰るだけになってしまったことで、やっぱり健吾に取ったらいつもと変わらなかったのであろうことに寂しさを覚えるも、これからこの気持ちを抑え込むための良い思い出が出来たと、そんなことを考えていると
「京」
と健吾が声を掛けて来たんだ。
「うん? どうしたの?」
だから僕は足を止めて、健吾の方へと顔を向けながらそう聞き返すと
「まだ少しだけ時間あるか?」
まだ大丈夫かどうかを聞いてきたんだよね。
「えーっと、うん。もう少しだけなら大丈夫だよ。どうしたの?」
あまり遅すぎるとお母さんに何を言われるかわかったものじゃないけど、それでも今日はまだもう少しだけでも健吾と一緒に居たいしね……。でもそんな素振りを健吾に見せられないと思った僕は時計を確認する振りをした後に健吾そう返したんだ。
「そうか。一緒に来て欲しい場所があるんだ」
すると健吾はいつにもなく真剣な表情で僕にそう言ってきたんだ。
~~健吾視点~~
「うわぁ……」
雪に対して声をあげている京の横で密かに決意を固めた俺は、どのようにシチュエーションを整えるかについて考えていると
「ねぇ、健吾!! これってホワイト……ッ!!」
京が聞き逃せない単語を発しかけていたんだ。おい、今ホワイトクリスマスって言おうとしてなかったか? さすがにこの状況で他の事を言うわけもないし。ただ、途中で止めたってことは、何かあるのか……?
「うん? どうしたんだ? 何か言いかけていたみたいだが……」
俺は京の真意を探るために、あえて聞こえていなかったフリをして尋ねると
「ううん、何でもないよ」
あからさまにとぼけてきたんだ。これは今日がクリスマスイヴだってことを隠しているつもりなのか? それならばと
「確認したいんだが……。今日がクリスマスイヴだってことに気付いているか?」
周りにクリスマスセールと書かれているものがあるのを確認してから京にそう尋ねると
「な、何でそれを……」
京は隠し事がバレたかのように狼狽えながら俺にそう返して来たんだ。やっぱりか……。
「やっぱりか……。京、あのな? そこら中の店でクリスマスセールとか書かれているのに、今日が何の日かわからない方がおかしいだろ?」
俺は周りを見ればすぐにわかるだろと、京にもわかるようにセールの看板等を指さしながら言うと
「えっ、あっ、そ、そうだね。あはは……」
京からは苦笑いが返ってきたんだ。……これはどうとればいいんだ? 本当に気が付いていなかったのか、それともさすがに気づいているよねって意味なのか。それはともかく、さすがに今日が何の日なのかはわかっていたか……。あえて伏せて今日のデートに誘ったことに若干の後ろめたさがあった俺は
「ちなみに今更何だが、そんなクリスマスの日に俺と一緒でよかったか?」
本当に今更のことを京に尋ねたんだ。今このタイミングで聞いても嫌と言うわけがないことがわかりきっていても、俺の後ろめたさを晴らすために聞かずにはいられなかった俺は京にそう聞くと
「ふふ……、本当に今更だよ。嫌だったり、他に用事があるなら先に言っているって」
京からは無事に嫌じゃないという言葉を引き出せたんだ。わかってはいても、口にしてもらえたことで安心することが出来た俺は
「はは、そうだよな。それじゃあ、折角のホワイトクリスマスなんだ。雪を楽しみながらこの辺りを見て回るか」
京にいつものように冷やかしをして回ろうぜと提案をしたんだ。こう言えばいつも通りを装いながらデートをすることが出来るしな。
「うん!! 折角のホワイトクリスマスだもんね!! 堪能しなきゃね!!」
京も特に反対をすることもなく、俺の提案に乗って来たんだ。さて、ここからはいかにあの流れにもっていくかの勝負だな。幸い、京の門限まで時間はあるんだ。自然な流れで持っていけるいい案を絶対に考えついて見せるという決意と共に見えている商店街の方へと足を進めたのであった。
…………
……
……駄目だ。
あれから、色々と街を見て回り、それはそれで色々と面白いものを見つけられたからよかったんだが、上手く目的の場所へ誘う方法が思いつかないまま俺たちは最寄駅まで帰ってきてしまっている。このままだともう京を家まで送って終わりの流れになってしまう。本当はもっと上手く誘いたかったが、背に腹は代えられないと
「京」
京に声を掛けたんだ。すると
「うん? どうしたの?」
京は俺の方に向いて聞き返してくれ、それを確認した俺は
「まだ少しだけ時間あるか?」
京にそう尋ねたんだ。確かまだ時間には余裕があったはず……。
「えーっと、うん。もう少しだけなら大丈夫だよ。どうしたの?」
俺の予想通りまだ大丈夫という返事が返ってきて、俺はホッと心の中で安堵の息をもらした後、覚悟を決め
「そうか。一緒に来て欲しい場所があるんだ」
京に目的の場所まで来て欲しいと伝えたんだ。さぁ、ここからが本番だ。
全然話が進んでいないため、グダグダな街デート部分はカットされました。
ご要望があれば活動報告の方に書きあがり次第上げようと思います。
ちなみに、9割方ただグダグダとしているだけの内容となる……予定です。




