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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第五章 冬休み編
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140話 クリスマスイヴ⑤

「京、お待たせ」


あの後、無事に喫茶店にたどり着いた僕たちはそのまま店内に入ったんだ。そこでまずは注文をしようとしたんだけど、健吾に先に席を確保しておいてくれって頼まれたんだよね。荷物番も兼ねて順番に頼むのかと思った僕はそれに了承して2人席のところに腰を下ろしたんだ。それから少し待っていると健吾がそう声を掛けて来たんだよね。だから


「ううん、そんなことないよ。それじゃあ今度は僕が……」


今度は僕が注文しに行くねと言おうとしたんだけど、健吾が持ってきたトレイに飲み物が2つあることに気が付いたんだ。


「ね、ねぇ。その飲み物って……」


もしかしたら健吾が2つ飲むためかもしれないと、確認のためにそう聞くと


「あぁ、京ならココアだろうと思って勝手に注文しちまったが、駄目だったか?」


僕の予想通り健吾は僕の分も一緒に買ってくれたみたいなんだ。


「いや、ココアを頼むつもりだったから全然いいんだけど……。あっ、そうだ。お代!」


丁度頼もうとしていたものを言わなくても買ってくれていたことに少し戸惑ったけど、まだお金を出していないことに気が付いた僕は慌てて鞄から財布を出そうとしたんだけど


「いやいや。いらないって。俺の調子がおかしかったから喫茶店に行くことになったんだしさ。だからそのお詫びってことで受け取ってくれると嬉しいんだが……、どうだ?」


健吾にはそう言われちゃったんだよね。


「そんな言われ方をされたら断れないじゃない」


これはもう受け取るしかないと思った僕はせめてもの抗議として、軽く頬を膨らませながらそう言って財布をしまったんだ。すると健吾は


「ははは。ありがとな」


苦笑いしながら僕の向かい側に座って、僕にココアを渡してくれたんだ。僕はそれを受け取って


「ううん。こちらこそありがとね」


飲み物を買って来てくれたことのお礼を言ったんだ。もちろん膨らましていた頬は元に戻してね。すると


「おう。……それよりも映画はどうだった? いつもとは違うジャンルのものを選んでみたんだが……」


健吾も僕が頬を膨らませていたことが冗談だとはわかってくれていたみたいで、軽く返して来た後、映画について聞いてきたんだ。そう言えばまだ映画の感想すら言っていなかったね。


「本当によかったよ。これだけはないと思っていたから最初は驚いたけど……」


だから僕は予想外だったことを伝え、映画の感想を健吾に伝えたのであった。


…………

……


「……特に女の子の、男の子のために離れようと、でも離れたくない葛藤って言えばいいのかな? それがすごく伝わってきてあの映画の世界に引き込まれたもん。健吾は?」


あれからお互いに感想を言い合って、何が一番印象的だったかって話になったんだよね。だから僕はそれを伝えて、健吾はと尋ねたんだ。すると


「そうだな……。すでに気持ちが向いていることに気が付かずに気を引こうとして空回りをしているところは最初はまるで意味のないところだとは思ったが、中盤からどんどんあのときの行動に意味が持ち始めて、そのまま最後のシーンへと繋がっていく流れかな。女の子にこの気持ちは勘違いじゃないと気付かせるために取ったあの行動は本当にすごいと思ったよ」


健吾は頷いた後、そう返してきたんだ。健吾からすれば男の子視点で見るんだよね。やっぱりもう僕は……。ううん、それはまた後で。


「そうだよね。特に最後の公園でのシーンがよかったよね。雪も降っていてすごく幻想的だったし」


今は健吾の感想に返事をしないと。だから僕は健吾にそう返したんだ。僕もあんな風に格好良く健吾に言われたいけど……、今日の夢の中ででもそうならないかなと思いを馳せていると


「そうだな。ちなみになんだが……、京も憧れるか?」


健吾がそう尋ねて来たんだ。健吾からそんな返しが来るとは思っていなかった僕は


「えっ?」


と聞き返すと


「す、すまん。口が滑った……じゃない。言い間違えた。言いたかったのはえーっと……」


健吾は口を片手で押さえながら言いなおそうとしていたんだけど


「……憧れるよ」


僕は小さい声でそう返したんだ。するとその声は健吾の耳まで届いていたみたいで


「えっ?」


だけど内容まではわからなかったらしく、今度は健吾が聞き返して来たんだよね。僕はそれに軽く顔を横に振って


「ううん、何でもない。それより健吾も大分元気になったみたいだし、そろそろ出よっか。ずっとここに留まっているのは勿体ないもん」


何でもないことを伝えた後、早く喫茶店から出ようと言って席を立ったんだ。そうしたら健吾は


「……そうだな。折角2人きりになれたのにずっとここに居るのはな」


僕に同意の言葉を返した後に席を立ったんだよね。言い回しに少し疑問を覚えたけど、健吾がすでに出口に向かって歩き始めていたから僕も慌てて健吾の後を追ったんだ。さすがにすぐに追いついて、一緒に店を出ると


「うわぁ……」


雪が降り始めていたんだ。



~~健吾視点~~


京に席取りをお願いした後、俺はカウンターで注文をしていた。俺は適当でいいとして、京はホットココアでいいだろう。万が一嫌だって言われたら俺が飲めばいいし。そう思った俺は店員に注文し、出て来た飲み物を持ち京のところへ向かい


「京、お待たせ」


と声を掛けたんだ。すると


「ううん、そんなことないよ。それじゃあ今度は僕が……」


京は俺と交代で注文をしに行こうと思ったのか、腰を上げながら俺にそう言ってきたんだが、途中で俺が持っているトレイに2つ飲み物があることに気付いたらしく


「ね、ねぇ。その飲み物って……」


それについて尋ねて来たんだ。だから俺は1つ頷いてから


「あぁ、京ならココアだろうと思って勝手に注文しちまったが、駄目だったか?」


京にそう聞き返したんだ。京はココアが好物だし、とりあえずで頼んでしまったが安直過ぎたか……? また先走り過ぎたかと少し不安になっていると


「いや、ココアを頼むつもりだったから全然いいんだけど……。あっ、そうだ。お代!」


京は上げかけていた腰をおろし、それで問題無いと返してきたんだ。そのことにホッとしていると京は代金のことに気が付いたみたいで慌てて財布を取り出そうとしていたんだが


「いやいや。いらないって。俺の調子がおかしかったから喫茶店に行くことになったんだしさ。だからそのお詫びってことで受け取ってくれると嬉しいんだが……、どうだ?」


俺は京に金は要らないって返したんだ。本当はデートのときくらい男に見栄を張らせてくれと言いたいんだが、言えない俺は丁度ある理由を交えつつ京にそう言ったんだ。こう言えば京なら引いてくれるだろうと思いながら京の反応を待っていると


「そんな言われ方をされたら断れないじゃない」


京は頬を膨らませながらだったが、俺の予想通り引いて財布をしまっていた。さすがに頬を膨らませているのは納得していないっていうパフォーマンスなだけ……だよな? 確信を得られないことを誤魔化すために


「ははは。ありがとな」


と笑いながら京の向かい側に座ってココアを京に渡したんだ。すると


「ううん。こちらこそありがとね」


京はすぐさま膨らましていた頬を戻し、微笑みながら俺にそう返してくれたんだ。よかった、やっぱりパフォーマンスだったか。何とか無事に飲み物を奢ることに成功した俺は


「おう。……それよりも映画はどうだった? いつもとは違うジャンルのものを選んでみたんだが……」



ついでという風に装いながら映画の感想を尋ねたんだ。普段観るようなジャンルじゃなかっただけに面白くなかったとか言われたりしたらどうしようか。俺が急に恋愛のジャンルを選んだ理由を勘ぐってくれればそれはそれで俺的には一歩前進なんだが……。そんなことを考えながら京の言葉を待っていると


「本当によかったよ。これだけはないと思っていたから最初は驚いたけど……」


無事好感触を得られたようだ。滑らなくてよかったと心の中でホッと息を漏らした後、俺は京と映画の内容について花を咲かせたのであった。


…………

……


「……特に女の子の、男の子のために離れようと、でも離れたくない葛藤って言えばいいのかな? それがすごく伝わってきてあの映画の世界に引き込まれたもん。健吾は?」


あれから色々と言い合い、何が一番印象に残ったかについての話になったときに、京がそう言って俺はどうなのかと尋ねて来たんだ。


「そうだな……。すでに気持ちが向いていることに気が付かずに気を引こうとして空回りをしているところは最初はまるで意味のないところだとは思ったが、中盤からどんどんあのときの行動に意味が持ち始めて、そのまま最後のシーンへと繋がっていく流れかな。女の子に勘違いじゃないと気付かせるために取ったあの行動は本当にすごいと思ったよ」


だから俺は男の子の行動を思い出しながら京に印象に残ったことを伝えたんだ。まぁ、俺が妄……じゃなくて計画していた内容と大きく被ってしまっていたせいで頭を抱える羽目になってしまったわけだが……。京と映画について話しながらもプレゼントをどうするかの脳内会議が後1歩というところで決まらずに内心焦り始めていると


「そうだよね。特に最後の公園のシーンがよかったよ。雪も降っていてすごく幻想的だったし」


京もラストシーンのことを思い出したのか、そう言ってきたんだ。


「そうだな。ちなみになんだが……、京も憧れるか?」


ただ、俺が京と話しながらプレゼントの(違う)ことを考えていたせいか、口からそんな言葉が出てしまっていた。気が付いたときにはすでに遅く


「えっ?」


と京がポカンとした表情を浮かべながら俺に聞き返してきたんだ。だから俺は慌てて


「す、すまん。口が滑った……じゃない。言い間違えた。言いたかったのはえーっと……」


この口はと手で押さえて、すぐさま変わりとなる何かはないかと必死に考えていると


「……憧れるよ」


京の口から小さくそう呟いていたんだ。だがそれでも俺の耳にしっかり届いた京から返事が、しかも俺が望むような答えが返って来たことが予想外で俺は


「えっ?」


思わず京に聞き返すと


「ううん、何でもない。それより健吾も大分元気になったみたいだし、そろそろ出よっか。ずっとここに留まっているのは勿体ないもん」


誤魔化すように顔を横に振った後、何でもないと言ってから席を立ったんだ。確かに折角のクリスマスデートなのに、喫茶店にずっといるのは時間の無駄の何物でもないしな。きっとさっきの言葉も聞き間違いじゃないはず。あの言葉のおかげで心なしかあやふやだった考えが少しまとまったような気がした俺は


「……そうだな。折角2人きりになれたのにずっとここに居るのはな」


京にそう返事をした後、京と同じように席を立った後出口へと向かったんだ。京が追いつけるようにゆっくりと進み、京と一緒に店の外に出ると


「うわぁ……」


横で京が感嘆の声をあげていた。降りそうだとは思っていたが、本当にホワイトクリスマスになるとは……。これで公園に行ってプレゼントを渡せば本当に映画と同じシチュエーションを再現出来るな。そうすれば少しは俺の気持ちに気付いてもらえるかな? 本当はそんな素振りも見せるつもりはなかったが、折角希望が見えたんだ。俺の勘もこのタイミングを逃すなって言っているしな。まぁ全く根拠がないから不安でしかないが、でも…………覚悟は決まった。

上手く表現出来ない私のスペックの低さがにくい(・ω・`)

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