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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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章間㉗ 2学期最終日 side-健吾

最近といってももう1ヵ月近くなりますが、大分暑くなってきましたね。

暑さに滅法弱い作者は寝て起きても体の疲れがあまりとれていないことが

この季節になると時々あるので、早く涼しくなってほしいものです。

「京、3日後なんだが空いているか?」


終業式を終えた帰り道、俺は京にそう尋ねたんだ。本当は3日後なんて言わずにもっと早く誘いたかったんだが、気持ちの整理(・・・・・・)という名のテスト勉強や、同じクラスのやつらの遊びの誘いを断ったり、後は久川さんからの誘いを出来るだけ傷つけないように断ったりとしている内に、気がつけば終業式になっていたんだ。気持ちの整理がある程度終わった今だからこそ言えることなんだが、こんなにも遅くなるくらいならば、もうメールでも何でもいいから早く誘っておけばよかったと後悔の念に駆られながら京の予定が埋まっていないことを願いつつ終業式の3日後の12月24日、つまりはクリスマスイヴの予定を尋ねたんだ。


すると京はどこか上の空になりながら予定が入っているかどうか思い返していたんだ。最近よく京は今のような表情をしている。それは彩矢ちゃんと話をしているときになるからということはわかっているのだが、今は帰り道の自転車を漕いでいる最中であり、今は道の広さのワリには車通りが少ない道だがそれでもないわけではないため、京の分まで周りに注意を払いつつ京が再起動するのを待っていると


「うん、大丈夫だよ」


復帰した京から問題ないと返って来たんだ。よかった、間に合ったかと俺は心の中でホッと一息をついてから


「そうか。なら、久しぶりに遊ばないか?」


声が裏返らないように気を付けながら京に本題を伝えたんだ。さすがに当日が何の日なのかは京でもわかるだろうから、これ以上は言わなくても伝わっているだろうと思ったのだが


「全然大丈夫。他に誰を誘うの?」


返って来た言葉に俺は一瞬固まってしまった。いや、中学時代ならともかく、今大勢でワイワイするつもりはないぞと盛大に突っ込みたくなったが、俺は頬が引きつりそうになるのを何とか抑えながら


「いや……、そのだな……」


もしかして本当にわかっていないのか? それとも彩矢ちゃんの入れ知恵で俺を試しているのか? その判断がつかない俺はどう言おうか迷った後


「今日は何日か知っているか?」


気が付いたらそう口走っていた。何でこう回りくどい言い方しか出来ないんだと軽い自己嫌悪に(おちい)りながらも、さすがにこれで京もわかってくれるだろうという希望もあったんだが


「え? 今日は終業式何だから12月21日じゃない。そんなの健吾もわかってるよね?」


京はキョトンとした表情をしながら返事をしてきたんだ。やっぱりわかっていなかったかと俺は肩を落としながら


「……だよなぁ。京だもんなぁ」


そう呟くと


「え? 何? 何なの!?」


京は俺が何で肩を落としたのかもわかっていないで戸惑っていたんだ。昔ならこんな回りくどいことをせずにパッと目的を伝えられたんだが


「2学期に入ってからは文化祭の準備とか、それが終わったかと思えばテスト勉強しないといけいで全然一緒に遊べなかっただろ? だから久しぶりに京と2人で遊びたいんだよ。人が多ければそれはそれで楽しいが、やっぱり京と2人の方が気が楽だしな」


今の俺からは言い訳のような言葉が早口で出ただけだった。原因はハッキリとわかっているとはいえ、どうしてこう京を目の前にすると中々思ったことが言えないのかと心の中で自嘲(じちょう)していると


「うん、健吾の言う通り2人で出かけよっか。いつも通りこの辺りを見て回ってゲーセンに行く感じ?」


京は同意の言葉を返してくれたんだ。よかった、早口になっていたことには気づかれなかったようだ……。そ、それはともかく、無事2人きりで出掛ける了承をもらえたところで俺は


「いや、折角だし、少し遠出をするつもりだ。そうだな……。映画なんてどうだ? 丁度観たい映画があるんだ。それで映画を観た後に飯を食って解散って流れはどうだ?」


考えるフリをしてから、予め決めていたことを京に伝えたんだ。無事に言いたいことを言えたことにホッとしつつ京の返事を待っていると


「いいよ。それで何の映画を観るの?」


京から無事にOKを貰えたんだ。だが、当たり前と言えば当たり前なんだが、何の映画を観るのか聞かれてしまったんだ。もちろん決めていることには決めているんだが、普段観るのとは全く違うジャンルの映画で、改めて京に面と向かって言うのが恥ずかしくなってしまった俺は


「それは当日のお楽しみということで。……まぁ、少なくても京が苦手そうなホラー系の映画じゃないから安心してくれ」


当日の楽しみということで誤魔化すことにしたんだ。ホラーじゃないって言っておけば大丈夫だと思ったんだが


「驚かせる系でもないんだよね?」


京は俺を探るようにそう聞いてきたんだ。まだ俺が本当のことを言っているか半信半疑ようだが、そもそも驚かせる系も大抵ジャンルはホラーに入ると思うのだが……。


「あぁ、そこは大丈夫だ。京が嫌な気分になるような映画じゃない……はずだから」


だから俺は京を安心させるためにそう言ったんだ。だが、観ようと思っている映画が今までとベクトルがまるで違うことを一瞬不安に思ってしまった俺は思わず『はず』を付けてしまったんだ。すると案の定


「……はず?」


京にその言葉を拾われてしまったんだ。だから俺は慌てて


「いや、あのな? 今までとは少し趣を変えた方向にしようと思っているから少し不安なだけで、悪戯をしようだとか驚かせようだとかいう気持ちはこれっぽっちもないから、そこは安心してくれ」


邪な気持ちはないって弁明をしたんだ。だが、それはそれで京は気に食わなかったみたいで


「……そこまで言うならせめてジャンルくらい教えてくれたって良いじゃない」


頬を膨らませながら文句を言ってきたんだ。頬を膨らませた京もかわ……じゃない。でも、このまま不安な気持ちのままにさせとくのも……


「まぁ……、いや、駄目だ。すまん、京。このままだとしゃべっちまいそうだ。そうわけで先に帰るな。後で集合場所とかの詳細を送るから!!」


一瞬話してしまおうかという気持ちになったが、頭を振ることで何とか堪えきった俺は後で連絡をするとだけ言って逃げるように家に帰ったのであった。


…………

……


「……はぁ」


俺は家に帰り自室にこもった後、盛大に溜息を漏らしていた。いや、あの別れ方はないだろ、俺。結局京の不安を取り除くことも出来ていなかったし。


「……はぁ」


まさかこうも自覚(・・)すると、ここまで上手くいかなくなるものなのか。


前から頭の片隅を過っては見て見ぬ振りをしてきたことだったんだが、つい先日、文化祭で京が倒れたと聞いたときに、京が俺自身の中でどれだけ大きい存在だったのかに気づいてしまい、ついには見過ごすことが出来なくなっていたんだ。


京矢……いや、京のことを人としてだけでなく…………。


それからは京を目の前にすると、本当にヤバかった。京の何気ない仕草から何まで全部が可愛く見えてしまい、とてもじゃないが平常心でいられなかった。実際何度も挙動不審な態度を京の前で取ってしまったし。

正直に言うと、決心がつくまでに時間がかかりすぎたこともあり、丘神や京の友人たちにすでに先を越されているかもしれないと思っていたのだが、俺の思い過ごしで京に予定がまだ入っていなかった幸運に俺は思わず神に感謝したものだ。

っと、それはともかく、京にクリスマスイヴのことを連絡しなければ。本当はどこかで待ち合わせをしてってしたいんだが、今までどっちかの家で集合とか駅集合だったところを急にデートでの有名な待ち合わせ場所に変えるのはまだ少し気が早いと思った俺は


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:遊ぶ日のこと


~本文~

当日は10時頃京の家に迎えに行こうと思うんだが、大丈夫か?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


せめて出来るだけ京と一緒にいられるようにと、京の家に迎えにいくと連絡をしたんだ。もちろん、浮かれていることを京に気づかれないように今まで通り簡潔な文章でだ。


メールを送信してから、京からの返事をそわそわしながら待っていると、携帯からメールを知らせる音が鳴ったんだ。俺はすぐにメールの内容を確認すると


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:Re: 遊ぶ日のこと


~本文~

うん。全然大丈夫だよ。家で待ってるね。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


無事に京から了承を得ることが出来たことが記されていたんだ。


色々とヘマをしてしまい、断られるかもしれないという不安を拭いきれた俺は、安心からくる脱力感に身を任せてベッドに倒れこみ、倒れこんだ体勢のまま当日が何の日か気づいていない彼女に送るプレゼントについて考え始めたのであった。



<2学期最終日 side-健吾 END>

次回はとある男の子の視点の予定です。

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