135話 2学期最終日
「京、3日後なんだが空いているか?」
2学期の終業式も無事に終わり、真琴や優花ちゃんと冬休み遊ぶ約束をして別れた後の帰り道、一緒に帰っていた健吾がそう言ってきたんだよね。
「えーっと……」
健吾に言われて、何か予定が入っていないかを考える素振りをしながら彩矢に用事が入っていたかどうかをたずねると
『その日は……。はい、何も予定は入っていませんよ。……入れないようにさせましたし』
彩矢も予定が入っていないかどうかの確認をしてくれたみたいで、そんな返事が返って来たんだよね。最後に何か言っていた気がするけど、無事に何も予定が入っていないことを確認出来た僕は
「うん、大丈夫だよ」
健吾にそう返すと
「そうか。なら、久しぶりに遊ばないか?」
健吾は安堵の表情を浮かべた後遊べるか聞いてきたんだ。
「うん、いいよ。他に誰を誘うの?」
それに僕は頷いて返し、他に誰を誘うのかを尋ねると
「いや……、そのだな……」
健吾は何か言い辛そうに頭の後ろをガシガシとかいた後
「今日は何日か知っているか?」
そんなことを聞いてきたんだよね。
「え? 今日は終業式何だから12月21日に決まってるじゃない。そんなの健吾もわかってるよね?」
もしかしてボケたの? と一抹の不安を覚えながら健吾に返すと
「……だよなぁ。京だもんなぁ」
と言ってガックリと肩を落としていたんだ。
「え? 何? 何なの!?」
何でそんな反応をされたのかがわからずに戸惑っていると
『京……。さすがに……、いえ、これは言わないでおきましょうか。いいですか、京? 健吾さんの提案は絶対に受けなさい。他の人を誘うなんて言わずに、です。いいですね? 絶対ですからね?』
彩矢が凄みを増した口調でそう言ってきたんだ。その勢いに思わずう、うんと彩矢に返していると
「2学期に入ってからは文化祭の準備とか、それが終わったかと思えばテスト勉強しないといけいとかで全然一緒に遊べなかっただろ? だから久しぶりに京と2人で遊びたいんだよ。人が多ければそれはそれで楽しいが、やっぱり京と2人の方が気が楽だしな」
気を持ち直したらしい健吾がそう言ってきたんだよね。健吾の言う通り、健吾と2人きりの方が楽なことには違いないもんね。ボロが出ちゃっても問題無いし。そう思うと健吾の提案を断る理由も無くなった僕は
「健吾の言う通り2人で出かけよっか。いつも通りこの辺りを見て回ってゲーセンに行く感じ?」
健吾に当日の予定を尋ねると
「いや、折角だし、少し遠出をするつもりだ。そうだな……。映画なんてどうだ? 丁度観たい映画があるんだ。それで映画を観た後に飯を食って解散って流れはどうだ?」
健吾は少し悩んだ後に当日のプランを僕に言ってきたんだよね。何が折角なのかはわからないけど……、いや折角の冬休みだからってことかな? それはともかく、普段とは違う、しかも映画を観ようなんて、今までの健吾なら言い出さない単語が出て来たことに驚きつつも
「いいよ。それで何の映画を観るの?」
健吾が観ようと言ってきた映画がどのようなものなのかが気になった僕は映画について健吾に尋ねると
「それは当日のお楽しみということで。……まぁ、少なくても京が苦手そうなホラー系の映画じゃないから安心してくれ」
健吾は教えられないって言ってきたんだよね。一応ホラー系じゃないとだけは言ってくれたけど……
「驚かせる系でもないんだよね?」
せめてそれくらいは教えてくれてもいいよね? と確認する意味も込めて聞き返すと
「あぁ、そこは大丈夫だ。京が嫌な気分になるような映画じゃない……はずだから」
健吾は安心してくれって言ってくれたんだけど
「……はず?」
最後の最後にかなり不安になる言葉が添えられてしまっていたこともあり、思わず聞き返すと
「いや、あのな? 今までとは少し趣を変えた方向にしようと思っているから少し不安なだけで、悪戯をしようだとか驚かせようだとかいう気持ちはこれっぽっちもないから、そこは安心して欲しい」
健吾は顎の下をポリポリとかきながらそう言ってきたんだ。だけどその言葉に僕は頬を膨らませて
「……そこまで言うならせめてジャンルくらい教えてくれたって良いじゃない」
抗議の言葉をぶつけたんだ。そうやって不安だって悩むくらいならさっさと教えろという意味も込めてそう言ったんだけど
「まぁ……、いや、駄目だ。すまん、京。このままだとしゃべっちまいそうだ。そうわけで先に帰るな。後で集合場所とかの詳細を送るから!!」
健吾は少しの間何かを考えた後、頭を振ったかと思うとそう言ってそのまま本当に自転車を漕いで行ってしまったんだよね。
ただでさえ、健吾は少し挙動不審だったのに、話を途中で切って逃げるように返るなんてことをするなんて思ってもみなかった僕は呆然とどんどん小さくなる健吾を見送ったのであった。
…………
……
「ん?」
あの後我に返った僕は家に帰り、家事も終えて自分の部屋で漫画を読んでいると、メールが届いたんだよね。僕は読んでいた漫画を机の上へ置き、メールの内容を確認すると、
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
件名:遊ぶ日のこと
~本文~
当日は10時頃京の家に迎えに行こうと思うんだが、大丈夫か?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
健吾から遊ぶ日のことについてのことが書かれていたんだ。最後の別れ際の健吾の様子がおかしかったから少し心配だったけど、メール内容からいつもの調子に戻ったことがわかった僕はよかったとホッと一息漏らしてから大丈夫だよと返信したんだよね。
3日後が楽しみだと思いながら携帯を置くと同時に再び携帯が鳴ったんだ。もう返事が来たのかと思ってメール内容を確認するとそこには
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
件名:明々後日のことなんじゃが……
~本文~
いきなりのメールですまん。明々後日なんじゃが、空いておらんだろうか。
もし都合が良かったら遊びに行かぬか?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
勇輝から遊びのお誘いのメールが来たんだよね。しかも丁度健吾と遊ぶ日に。勇輝も含めて3人で遊べばいいのではって考えが頭を過ったのだけど、健吾にはもちろん、彩矢にまで2人でって言われていたこともあり、僕はその日は用事があって都合が悪いこと、他の日なら大丈夫だと返事をしたんだ。すると暫くしてから
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
件名:Re: Re: 明々後日のことなんじゃが……
~本文~
あいわかった。急に誘ってすまんかったのぅ。
俺も他の日はまだ都合がつけれとらんから、また分かり次第連絡する。
その日の都合が良かったら付き合っておくれ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
勇輝からそう返って来たんだよね。他の日の都合が中々つけられないってことは忙しいのかな? もしかしたら僕と遊ぶために空けてくれたのかもしれないと、誘いを断ったことに少し罪悪感を覚えつつ、心の中で勇輝にごめんと謝りながら「ごめん、またわかったら教えてね」と勇輝へと返した僕は、少し落ち込んだ気分を切り替えるためにも、読みかけだった漫画の続きを読み始めたのであった。
憐れ勇輝……
前回の話のあとがきの通り、今回で2学期の本編は終わりです。
もう少し(1話)
章間をいくつか挟んだ後、冬休み編に入ります。




