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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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133話 テスト勉強②

『それでは、早速始めましょう』


家に着いて、一息つくなり彩矢がそう言ってきたんだよね。


「えー……。確かにそろそろ勉強を始めないといけない時期にはなってきたけど、まだまだ慌てる時間じゃないじゃない」


だけど、僕はそれに抗議の声をあげたんだ。だって実際まだ2週間あるしね。今までの僕だったら少し落ち着かなくてなってはいるけど、結局1週間前(・・・・)まではまともにテスト勉強なんてしなかったし。だからこそまだ慌てる時間じゃないと言ったんだけど


『そうですね。いつもの京ならまだ取り組まないでしょう。ですが、今回は私がいますからね。また後ですればいいと言って結局テストの3日前(・・・)までまともに勉強しなくて慌てるなんてことはないようにしていただかないと』


「うぐっ」


彩矢は僕にそう言ってきたんだよね。彩矢の言葉に思わず言葉を詰まらせてしまったんだ。だけど


「い、1週間前からは始めてるし……」


僕としてはそのつもりでいると主張をしたんだ。


『あれのどこがテスト勉強をしている姿勢ですか。確かに教科書やノートを手には取っているかもしれません。ですが、30分もしない内にすぐ目に映った漫画やゲームを始めていたじゃないですか。最初は5分だけ10分だけと言いながら、毎回結局1時間近く休憩をしてしまっていた、あのどこがテスト勉強をしているなんて言えるんですかね』


でもその主張も彩矢に一蹴されてしまったんだよね。


「うー……」


余りにも心当りがあることをビシッと言われてしまい、何も言い返すことが出来なくなった僕はせめてもの抵抗として唸っていると


『唸っても何も効果はありませんよ。何もこれからテストが終わるまで根を詰めて勉強しろだなんて言いませんよ。準備はしておくに越したことはありませんので、その準備をしようと言っているだけです。なので、数日後に発売する京が楽しみの漫画を買ったとしても読むなとかは言いませんよ』


彩矢がそんなことを言ってきたんだよね。


「……ほんとに?」


これはもう、テストが終わるまで口うるさく言ってくるものだと思っていた僕は思わずそう尋ねると


『えぇ、もちろん。今日もそこまで本格的にするつもりはありませんよ。そうですね……、丁度晩御飯の準備に取り掛かるまで1時間くらいありますし、それを目途にしてみましょうか』


彩矢は肯定の言葉を返してくれたんだけど、そのまま勉強をする流れにもっていっちゃったんだよね。ここで下手に反論して、最初の予想通りネチネチと言われるようになる可能性と、何より学校のときに話した勉強の手助けの内容が気になった僕は


「……わかった」


観念して鞄から教科書を取り出したのであった。


…………

……


『……ふぅ。京、そろそろ1時間経ちますがどうしますか? 試験勉強を続けるならお母さんに言って代わりにしてもらいましょう。最近は京が難なくこなせるようになったこともあって、京の手が空いているときしか家事を強要しなくなりましたし』


テスト勉強を始めて暫くすると、彩矢がそう言ってきたんだよね。その言葉に僕はノートへと落としていた視線をパッと上げて


「え? もう?」


と聞き返したんだ。すると


『えぇ。無事に集中して勉強出来てなによりです。勉強は量ももちろん大事ですが、何よりも質を高めないことには効率は良くなりませんからね。どうでしたか?』


彩矢はそう返して来たんだよね。僕は時計へとチラリと視線を移して本当に1時間経っていることを確認しつつ


「うん、すごく助かったよ」


と返したんだ。

実際、彩矢の手助けは本当にすごかったんだよね。ほら、勉強しているときに集中力が切れる原因ってさ、欲しい教科書とかノートかが見つからないことが大半じゃない? 探している間にふと漫画の表紙が目に映っちゃって、少し休憩するかってなっちゃう感じでさ。でも今回、彩矢が僕が欲しい教科書やノートがどこにあるのかを的確に教えてくれたんだよね。今日は数学のテスト勉強をしていたんだけど、公式の見直しをしようとしたときに、その公式が書いてあるノートは今使っているノートの前のやつだったんだ。どこに置いたかなって探そうとしたときにすかさず彩矢が棚の右から何番目ってところまで教えてくれたんだよね。そのおかげですぐにノートが見つかった僕はスムーズに問題を解くことが出来たんだ。それでまだテスト勉強の始めたばかりってこともあって、比較的簡単な問題ばっかり解いていたおかげで、いつもよりずっと早く出来たんだよね。そうなると少し楽しくなってきた僕は出来るとこまでがんばろうと思って問題を解いていたところで彩矢に1時間経ったって告げられたんだ。

彩矢にこの公式は何だったっけと聞いたときに、ノートでも何ページに書いてあるって返ってきたのはビックリしたけど、彩矢のフォローがどれだけ良いものなのかを実感していると


『それで、晩御飯の準備はどうしますか?』


と彩矢が繰り返し聞いてきたんだよね。それに僕は


「ううん。丁度キリもいいところだったし、僕が準備するよ」


そう答えて腰を上げたんだ。実際、問題が解き終わったところだしね。

今日は何を作ろうかなと、冷蔵庫に入っている食材を思い浮かべながら僕は台所に向かったのであった。


…………

……


「勉強はどう? 今回は彩矢に手伝ってもらっているみたいだけど」


晩御飯の準備をしているとお母さんが手伝いに来てくれたんだけど、手を動かしながらお母さんがそう聞いてきたんだよね。


「うん、ばっちりだよ。……でも何でお母さんが知ってるの?」


僕も手を動かしながらお母さんに聞き返すと


「時々京の部屋から独り言が聞こえてきたもの。彩矢と話していたんでしょうけど、家じゃない場所では止めておきなさいよ?」


お母さんはそう返してきたんだよね。


「さすがにそれは気を付けているよ!! 変な人なんてレッテルは貼られたくないし……」


それに僕は思わずお母さんの方に向いて言い返していると


「はいはい、それよりちゃんと見ながらしないと危ないわよ? それより彩矢の手助けってどんな感じだったのかしら? 解き方とか教えてくれたの?」


お母さんはそんな僕を軽く注意した後にそう尋ねて来たんだ。僕はすぐに視線を元に戻し


「ううん。彩矢が教えてくれたのは僕が聞いた公式がどこに書いてあるのかしか教えてくれなかったんだ。自力で解けなかったら意味がないからって言って本当に僕が全く解き方がわからないときにようやく少しだけヒントをくれたんだ」


彩矢との勉強についてお母さんに話したんだ。僕と彩矢は勉強の時間は同じはずなのに、どうして彩矢はそんなに色々と覚えていられるのか。助けてもらっておいてなんだけど、その不公平さを不満に思っていると、それが顔に出ていたみたいで


「ほらほら、不貞腐れないの。そのお陰で今までよりずっと集中して勉強出来ているんでしょ?」


お母さんは苦笑いしながら僕にそう言ってきたんだよね。


「まぁ、そうなんだけど……」


やっぱり納得は出来ないじゃないと口を尖らせながら返すと


「きっと彩矢がそこだけしか協力しないのは今までの京の勉強の仕方が良くなかったからでしょ? きっとしっかり勉強する姿勢を見せて、彩矢が納得してくれたらもっと色々教えてくれるわ」


お母さんは諭すように僕にそう言ってきたんだ。確かに色々と思い当たることもあるけれど


『……お母さんの言っていることは本当なの?』


思わず真偽を彩矢に確認すると


『……否定はしませんよ』


という答えが返ってきたんだ。それを聞いて僕は


『絶対だよ!? 約束だからね!!』


彩矢にそう言ったんだ。より勉強を頑張って、彩矢に色々と教えてもらうぞとさっきまでの不機嫌もすっかりどこかへ行ってしまっていると


「無事に折合はつけれたみたいね。それじゃあ、早く作ってしまいましょうか」


お母さんがそう尋ねてきたから僕は


「うん!」


と返事し、終わりが見え始めていた晩御飯作りの仕上げにかかったのであった。

彩矢がこれだけ記憶力が良いのは、とある人物? のせいです。

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