130話 スポーツ大会④
遅くなってしまい、すみません。
ヒノキの花粉がダメな作者は本当にこの時期はつらいです。
「いつつ……」
保健室で貼ってもらった湿布のところを、服の上から摩りつつ思わず声に出していると
「大丈夫ですか? やはり保健室で休んでいた方が……」
僕の横に座り、一緒にフットサルの試合を観戦している優花ちゃんがそう声をかけてきたんだ。え? 卓球はどうしたって? 僕たちは予選落ちしちゃったからね。午前の予選の部で落ちた人たちは午後の決勝の部は好きなところを見に行けるんだ。だから今こうしてフットサルの観戦に来ているんだよね。
「あはは……。右腕を動かすのが辛いだけだからね。保健室の先生にも軽い筋肉痛だって言われたし」
僕は右腕……を上げるようとしたけど、痛みから咄嗟に左腕を上げつつ苦笑しながらそう返したんだ。すると
「確かにそうでしたが、2日連続で保健室に来たことを咎められていましたよね? もっと自分の体を労われと」
優花ちゃんは目を細めながら僕にそう言ってきたんだ。昨日は倒れてベッドで寝ていたのに、その翌日には筋肉痛とはいえまた保健室に来ちゃってたもんね。僕はあははと乾いた笑いを口にしながら、優花ちゃんから目線を逸らしていると
「京が大丈夫って言っているんだから、大丈夫よ。見たところ顔色が悪いというわけでもないし、今から無理に体を動かさないといけないこととかもないのだし。それよりも試合を見ましょ? フットサル組が優勝出来ればまだ総合点で上位に入るくらいは出来るんだから、しっかり応援しないと」
僕たちと一緒に座っていた真琴がそう言ってきたんだ。ちなみに真琴も、正確にはソフトボールの女子は予選敗退したんだよね。昼休みに合流した真琴が不貞腐れていて、理由を聞いたら試合に負けたって帰って来たんだよね。真琴がいるのに負けるなんて思っていなかった僕は理由を聞いたんだけど、真琴の打席は全部敬遠されたんらしいんだよね。それで決定力が足りなくて負けちゃったんだって。さすがにそれはどうなんだって審判の先生に抗議したけど覆らなくて、今に至るみたいなんだ。昼休み中ずっと不機嫌だった真琴を優花ちゃんと2人で何とか落ち着かせることは出来たんだけど、その後他のメンバーの状況を聞いて、フットサルの男子が優勝すれば総合点で上位には入れることがわかったんだよね。それで自分は負けてもせめてクラスとして上位には入りたいってことで真琴がフットサルの応援をしに行こうって言ってきたんだよね。丁度勇輝もフットサル組だったこともあり、反対する理由もなかった僕はそれに賛同してフットサルを見に来ているんだ。
「いーい? 京は丘神君をしっかり応援するのよ? そうすればきっと負けないから」
そしていざ僕たちのクラスの試合が始まりそうになったときに、真琴が僕にそう言ってきたんだよね。
「えっと……? クラスメイトを応援するのは当たり前じゃないの?」
だけど、余程のことがない限りクラスを応援するよね? 真琴が何でそんなことを言ってきたのかがわからなかった僕はそう聞き返すと
「そうだけど、京はとにかく丘神君を応援すればいいの。わかった?」
真琴はズイッと僕に顔を近づけてきて言ってきたんだ。
「う、うん……」
その有無を言わさぬ勢いに、思わず頷くと
「わかればよろしい。それじゃあ、おっきい声でよろしくね。こぉらっ! やろぉどもぉ!! 負けたら承知しないわよ!!」
僕にそう言った後すぐにクラスの人たちに活を入れに行ったんだよね。それを苦笑しながら見送っていると、丁度突然乱入してきた真琴を苦笑しながら見ている勇輝と目が合ったんだ。真琴に言われたわけじゃないけれど、僕は勇輝に向かって
「……がんばって」
と真琴が騒いでいる今じゃ絶対に聞こえないだろうけど、勇輝に向かってそう言ったんだ。すると聞こえていないはずなのに勇気は軽く目を見開いた後、
「……あぁ、任せろ」
と返してくれた気がしたんだ。もちろん聞こえたわけじゃないけど、何だか気持ちが通じたみたいで笑みをこぼしていると
「……羨ましいですね」
横で優花ちゃんが何かを言った気がしたんだよね。
「うん? 優花ちゃん何か言った?」
「いえ? 真琴がいつも通りに戻ったので安心していましたが……。どうかしましたか?」
だか優花ちゃんに確認したんだけど、そんなことはないって返事が返って来たんだ。真琴の調子が戻って安心したって言っていたし、そのときに思わず声が漏れちゃっていたのかな?
「ううん、何にもないよ」
それならと僕は首を横に振りながら返すと
「ふふ……。変な京さん。それよりも、試合が始まりますよ。丘神さんを応援しましょうね」
優花ちゃんは軽く微笑んだ後、試合がもうすぐ始まることを教えてくれたんだ。だから僕は
「うん!」
と返事して、試合に意識を集中したのであった。
………………
…………
……
「さぁ、これが本当に最後の戦いよ!! いーい? しっかり応援するのよ?」
決勝も順調に勝ち上がり、ついに僕たちのクラスのチームが後1回勝てば優勝というところまで来たんだよね。それで、他のところも終わったみたいでどんどん集まって来たクラスメイトに真琴がそう言っていたんだよね。すっかりいつも通りな真琴の様子を見ていると、ふとトイレに行きたくなっちゃったんだ。だから僕はソッと立ち上がってそのままトイレに行こうとしたんだけど
「京さん? どうしたのですか?」
優花ちゃんが僕にそう声を掛けてきたんだよね。
「あーうん、ちょっと野暮用で」
だけど、これだけ人が集まった状況でトイレとは言いづらい僕はそう返したんだ。野望用とは何かって聞かれるかと思ったんだけど、幸い優花ちゃんは察してくれたみたいで
「はい、わかりました。真琴には私から言っておきますから早く戻ってきてくださいね。それほど長くは抑えられないでしょうし」
僕にそう言ってくれたんだ。だから僕は「ありがとう」と小声で優花ちゃんに言った後、トイレへと急いだのであった。
…………
……
「……ふぅ」
無事間に合い、いざ戻ろうとしたところで
「京」
と声を掛けられたんだ。声がした方を向くと健吾がいたんだよね。どうして健吾がここに……? と思っていると
「俺もフットサルに参加してたんだぜ? その様子だと気づいてなかったか?」
健吾が僕の様子を察してそう言ってきたんだ。確かに真琴にずっと勇輝の方を見ているようにと言われたし、半ば監視されていたから他のクラスの人の様子をまるで見れていなかったんだよね。でも健吾ならソフトボールの方に参加していると思っていたんだけど……。
そんなことを考えていると
「いや、ソフトボールに参加するつもりは最初からなかったぞ?」
って健吾が返してきたんだよね。
「あれ? 声に出てた?」
だから思わず聞くと
「いや、京はわかりやすいからな。それよりも今朝のことなんだが……」
健吾はそう返してきてから、今朝のこと。つまりはペナルティのことを聞いてきたんだ。僕は周りを見て、誰も近くにいないことを確認してから
「うん。今なら丁度良さそうだね。例の件だけど……」
健吾に彩矢のことを伝えようとしたところで
ヴーヴー――
と携帯が着信を知らせる振動を伝えてきたんだよね。誰からかと思ってチラリと見ると真琴からだったんだよね。だけど、それよりも健吾に伝えることを優先しようと
「えー、あー、あのね?」
何とか携帯の着信のバイブを無視して健吾に話そうとしたんだけど
「あー、まぁ、出ていいぞ? その後でも大丈夫だろうし」
健吾が電話に出るように勧めて来たんだよね。だから僕ははぁと1つ溜息をもらしてから電話の通話ボタンを押すと
「京っ!! もうすぐ試合が始まるんだから早く戻って来なさいっ!!」
携帯を耳に当てるまでもなく、真琴の怒号が携帯から鳴り響いたんだ。
「いーい? すぐに戻ってこないと……って、もういいわ。あたしがすぐに行くから待ってなさい」
そしてそうとだけ言うと真琴は電話を切ったんだよね。あまりのことに健吾と見合わせていると
「京!! やっぱりここに居たわね……って、中山君とはスポーツ大会が終わるまでは敵同士なんだからダメよ。そういうわけだから中山君? ごめんあそばせ」
本当にすぐに真琴が現れて健吾にそう言うと僕の手を引っ張ってクラスのところまで戻ろうとし始めたんだ。健吾と話したいと言って抵抗をしたんだけど真琴に聞き入れてもらえず僕はクラスのところまで連れ戻されてしまったのであった。
この後、無事決勝で勝ち、真琴の目論見通り、総合点で上位入りを果たした僕たちは放課後打ち上げをすることになり、結局今日の間に健吾に彩矢のことを伝えられなかったのであった。
ちなみに京は打ち上げの後、無事に真琴たちに家まで送り届けられました。




