章間② とある少年の確かな決意
おまけパート2つ目です。
あと、もう1つおまけをのせて、その後に本編に戻る予定です。
俺だ
あぁ、すまん。いきなり俺だって言われてもわからないよな。健吾だ。
いきなりついでで悪いんだが、俺は少し前からおかしいんだ。
つまり、その、なんだ。俺は京矢のことが好きになっちまったんだ。
おかしいのはわかってる。俺は男で、あいつも男だ。これって所謂ホモだとか、BLだとか言われるやつなんだろうが、それは違う。別に他の野郎友達を見ても何も思わないし、女の子を見ると可愛いと思うし、いつか付き合ってみたいともちろん思ってる。たぶん俺は『京矢』っていう1人の人を好きになったんだと思う。
それでも、やっぱり俺もあいつも男だ。好きだという気持ちは伝えるつもりもなかったし、ただあいつとは親友として、これからもずっと一緒に馬鹿が出来ればいいと思ってたんだ。
だけど、ある事件が起こってしまって俺の思い描いていた日常は崩れ去ってしまったんだ…………
それは中学の卒業式の日だった。
いつものように京矢を連れまわして遊ぶべく、俺は京矢と一緒にゲーセンに向かって歩いていたんだ。
京矢のやつは俺のことを暴走気味な性格をしてるって思ってるんだろうが、俺はどちらかというと周りの状況をしっかりと見てから行動を起こすタイプだ。京矢が元々すぐドジってコケてたからってのもあるんだろうけどな……。
だからあのときも上目遣いの京矢に見つめられているのが(本人はにらめつけているつもりなのだろうが)恥ずかしくて、まだ赤信号だったけど、何も来ていないことをしっかり確認してから渡り始めたんだ。
それなのに、京矢に「健吾!!危ない!!」と言われたときには京矢に突き飛ばされていて、そして京矢が俺の代わりに車に轢かれていた……。
そこからは本当に早かった。俺が必死に京矢を呼びかけていたら現場に居合わせた人が呼んでくれたんだろう。すぐに救急車がやってきて京矢と俺は病院に運ばれた。そのまま京矢は集中治療室に運ばれて手術が始まったんだ。
手術が終わるのを待っている間、いや、京矢が車に轢かれてからか……。俺は自責の念にかられていた。どうしてあの時に赤信号だとわかっていて走り出してしまったのか、どうして車が来ていたのを見逃してしまったのか、あのときに自分が犯してしまったミスを責め続けずにはいられなかった……。
それからどのくらい時間が経ったんだろうか、京矢のおばさんも到着して、しきりに俺を慰めようとしてくれているのはわかるのだが、正直、今の俺には全くと言っていいほど聞こえていなかった……。
京矢のおばさんが到着してから、さらに時間が経過した。集中治療室からは1人、また1人と医者と思われる人物が出てきていたが、全員が浮かない顔をしていた。その顔を見たときに、最悪の展開を思い浮かべてしまったが、俺の記憶が正しければ、あの部屋にはまだ医者が1人残っていたはず……。最後の希望にすがるために、部屋の扉を見つめていると、急に集中治療室から光が漏れたんだ。何が起こったかわからず、呆然と扉を見つめていたら最後の医者が出てきた。
「先生!!京矢は無事なんですか!?」
そして気がついたら俺は先生に掴みかかっていた。まぁ少し暴力的になってしまったが、今回は許して欲しい。先生すまん。
「う、うむ。そのことなんだが……。ゴホン、とりあえず手を離してほしいのだが」
「あ、すいません」
俺はパッと手を離してから先生の次の言葉を待った。
「ゴホン、えー、君の質問に答えると、君の言うとおり、京矢君は無事だよ」
「じゃ、じゃあ「ただし」」
無事という言葉に安堵しかけたら先生が言葉をかぶせてきた。なんだよ、何かあるならさっさと言ってくれよ
「少し特殊な事象が起こってしまってね……。あなたが京矢君のお母さんですか?」
そう言って京矢のおばさんの方に向かって話した先生は、京矢のおばさんと一緒に集中治療室に入っていった。俺も続こうとしたら先生にダメだと止められてしまった。なんでだよ!?俺だって京矢が心配なのに!!
それから、結局集中治療室に入れてもらえずに幾分か待っていると、先生と京矢のおばさんが一緒に出てきた。やっと俺にも京矢の様子を見させてくれ……
「えー、京矢君のお友達だよね?今までずっとここで待っていてくれていたのに、本当に申し訳ないが、今日は帰ってくれないだろうか?」
え?何言ってんだこの先生……?俺に帰れって言ってるの……か……?
一瞬何を言っているのか理解出来なかったが、理解出来た瞬間俺に沸々と怒りがこみ上げてきた。
「なんでだよ!?何で俺は京矢に会わせてくれないんだよ!?」
思わず拳を振り上げて先生を殴ろうとしたんだけど、それを京矢のおばさんに止められてしまった。そこで思わず睨みつけてしまったんだけど……
「健吾君……。ごめんね……。本当に申し訳ないんだけど、今日は帰ってほしいの。後で容態が安定したら連絡するから……」
「どうしても……、ですか……?」
全く動じない京矢のおばさんには全く聞かないどころか、そのまま頷かれてしまった……。
「わかり……ました。出来るだけ早く連絡をして下さい。待ってます……」
どうにかそう言葉を紡ぎだすと、俺は病院を後にした。きっと俺は色々と我慢しすぎて、すごい顔をしていたのだろうが、全く気にならなかった……
………………
…………
……
翌日、京矢のおばさんに連絡をもらった俺は自分でも驚くくらい早く病院に着いていた。
ロビーに居るということだったので、ロビーについて周りを探してみると、幸いにもすぐに京矢のおばさんを見つけることが出来た。
しかし、肝心の京矢が見つからなかったから早速京矢の居場所を聞いたらおばさんの後ろにいた女の子を俺の前に突き出してきた。何でこの子を前に出したんだ?確かに京矢に似ている気がしなくもないが、元より小さい京矢よりこの子の方がさらに小さいし……
痺れを切らした俺はこの子が誰なのかをおばさんに聞いてみたら、驚くことにこの子が京矢だと言い出したんだ。ばんなそかな!?
思わずその子に京矢なのかって問いただしたところ、その子もそうだと言い出す始末で……。で、でも、確かに何気ない仕草とかは京矢とソックリだし……。
もしかして、本当に京矢なの……か……?
そう思って京矢?を見て、この子が京矢だと思った瞬間、京矢はいきなり胸を抑えて苦しみだしたんだ。
すぐ先生に連絡して、病室まで運んでいたんだが、その最中に、世にも奇妙なことが起きたんだ。京矢の髪の毛が急に真っ白になったり、元から白かった肌がさらに白くなったんだ……。本当に理解出来ないことが起こったら人間って考えるのを放棄しちゃうんだな……って今はそういう場合じゃないだろ!?
予想外の出来事に頭がついていけずに立ち止まりそうになった自分を叱咤して京矢を病室まで運んだのであった。
………………
…………
……
先生の言う話じゃ、京矢はアルビノと呼ばれる先天性の病気になっているらしい。先天性って産まれる前って意味だったはずだと問いただしたら、そうだ、だがしかしそうなっているらしいと、よくわからない返答が帰ってきた。
意味がわからずハテナ顔を浮かべていると、先生もとりあえず京矢君が起きてから確認してみないとって言ってきた。って、先生もわかってなかったのかよ!?
それから少し時間が経過したときに、京矢は目を覚ました。
そこからすぐに先生と会話をいくらか交わしているのを聞いていると、どうやら自分の状態に心当たりがあるように思えた俺はとっさに京矢にそれを教えてくれるように言ってみると、京矢はすぐに語りだした。
……正直に言うと、全く信じられないような話だった。神様がいるとか、神様が直々に京矢にペナルティを与えているとか、全然現実味がないような話だったからだ。だけど、今俺の今の前にいる京矢を見ると、それが全部本当のことだっていうことが嫌でもわかってしまった……。
これも全部……俺のせい……なんだよな……。俺が車の存在に気付いていればこんなことにはならなかったのに……。
これからきっと京矢は身体が男から女に変わったことで色々戸惑うこともあるだろうし、アルビノってやつになってしまったことで色々と困ることもあるだろう。
それに、本人は自覚してないだろうが、キレイな白い髪にルビーのようなキレイな目がすごくマッチしていて、そこらでは滅多にお目にかかれないような美少女になっている。だからきっと高校に入れば色々な男が京矢に寄ってくるだろう。正直、京矢が説明してくれている間に俺は見惚れてしまっていた。
だから俺は京矢がこれからは何も不自由を感じないように、京矢を取り巻く環境から、そして京矢に寄ってくるやつらから、少なくても京矢が俺より頼れるやつを見つけれるまでは京矢を護ることを決めたのであった。
とりあえずまずはあれだな、女の子になって破壊力が増した、あの上目遣いに照れないようにしないとな!
<とある少年の確かな決意 END>




