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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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126話 状況把握③

遅くなってしまってすみません。

『京、少しいいですか』


朝起きていつも通りの支度をしていると、彩矢が声を掛けてきたんだよね。


『うん? 何?』


改めてどうしたんだろうと思いながら、でも準備の手を止めるわけにもいかない僕は手を動かしつつ彩矢にそう聞き返すと


『出来るだけ気をつけてくれればそれでいいのですが……』


彩矢はそんな前置きをしてきたんだよね。僕はその言葉の続きを聞くために黙って待っていると


『極力でいいのですが、男性の方には不用意に近づかないで欲しいのです。もちろんお父さんや修矢兄さん、健吾さんは別ですが』


彩矢はそう言葉を続けてきたんだ。だけど


『えっと……、何で?』


どうしてそんなことを言ってきたのかがわからなかった僕はそう聞き返すと


『えっとですね……。やはり夏のあの事件の影響だとは思うのですが、どうしても男性の方が近くに居ると落ち着かなくてですね……』


彩矢は言いにくそうにそう言ってきたんだよね。僕でも見知らぬ男の人が近くに居たら身構えちゃうもん。あのことが原因で生まれた彩矢なら、僕では想像も出来ないストレスになってしまっているのかもしれないと思い、何も言い返せずにいると


『あっ、えっと、本当に出来ればでいいんです。学校での生活ではそんなことを言っていられないことは重々承知していますし、そもそもこの身体は京の身体ですから』


僕の無言を否定と取ったみたいで、彩矢は焦ったようにそう言ってきたんだ。


『いや、別にある程度でいいのなら大丈夫だけど……』


彩矢に言われる前から健吾や勇輝、小野君たちのような気心の知れた男友達ならともかく、あまりよく知らない男子が近くに居たら少し身構えちゃっていたしね。だから彩矢にそう返すと


『え? いいんですか?』


彩矢はまさか僕が肯定するとは思っていなかったみたいで、驚きながらそう聞き返してきたんだよね。


『うん。元々あの事件に巻き込まれてから昔みたいに男子に気兼ねなく話しかけることが出来なくなっていたしね。クラスメイトくらいまでなら全然大丈夫だけど、それ以外の男子だとね……。そういうわけだから、健吾や真琴たち、クラスの人以外に対しては今までよりも距離を置くように気をつけるよ。それでいい?』


僕はそれに肯定で返した後、彩矢の言っている範囲がどこまでなのかを確認するために確認をしたんだ。すると


『はい。そうしていただけるだけでも十分です』


彩矢は少し声を弾ませながらそう返してきたんだよね。ただ


『うん、わかった。これから気をつけるね。ただ、彩矢にお願いがあるんだけど』


僕は1つ彩矢にお願いをすることにしたんだ。すると


『はい。なんでしょうか? 今でしたら余程のことではない限り大丈夫ですよ? っと言っても私に出来ることは限られていますが』


彩矢はそう返してくれたんだ。僕はそれを確認してから


『僕が必要以上に男子に近づき過ぎていた場合、それとなくでいいから注意をして欲しいんだ。気をつけていてもやっぱりふとした拍子に昔の距離まで近づいてしまうときがあるから』


彩矢にそうお願いしたんだ。気をつけていれば大丈夫なんだけど、どうしても無意識だとまだ昔の感覚で近づいてしまうときがあるんだよね。そのせいで驚かれちゃったことも何度かあったし。そのときのことを思い出しながら、彩矢の返事を待っていると


『その程度のことでしたら問題ありません。むしろ任せてください。もし京が良いのでしたら、私が身体を後ろに下げますが』


彩矢からはそんな返事があったんだよね。


『あれ? 僕が力を抜いていなくても僕の身体を動かすことが出来るの?』


昨日お母さんと話をしたときは僕が彩矢に委ねるようにしないと身体を動かせないって言っていたはずだよね? もしかしたらあのときは嘘をついていたのかもしれないと、一瞬の不安が(よぎ)った僕は確認する意味も込めてそう聞き返すと


『あっ、いえ、すいません。言い方が良くなかったですね。京の言う通り体を動かすことは出来ませんよ。ただ、少しばかり京の動きを抑制することが出来るのです。例えば、不用意に誰かに近づこうとしたときに、そちらの方に身体を動かし辛くなると言った具合ですね。そうすれば近づき過ぎていたことを思い出せると思うのですが、いかがでしょうか』


彩矢はそう言いなおしてくれたんだ。でも


『えっと……?』


それでもよく理解できなかった僕は戸惑いながらそう返すと


『やはり言葉だけの説明ではわかりませんよね。百聞は一見に如かずです。京、今から左手を挙げてくれませんか?』


彩矢はそれを咎めることなく、僕にそう言ってきたんだ。


『うん? わかった。……ってあれ?』


だから僕も彩矢の指示に従って左手を挙げようとしたんだけど、どういったらいいな? まるでお風呂の中にいるときに勢いよく手を動かそうとしたときのような抵抗があったんだよね。思った通りに手が動かなかったことに驚いていると


『これが動きを抑制をするということです。身体を動かすのは京から主導権を譲ってもらわないと叶いませんが、このように京を動きづらくする程度ならば可能というわけです』


彩矢は姿は見えないから憶測になっちゃうけど、恐らくドヤ顔をしながら僕にそう言ってきたんだ。


『なるほど、ね。うん、よくわかったよ。それじゃあ、これからまた無意識に男子に近づいちゃっていたらお願いするね』


僕はあえてそのことには触れないようにして、今の感覚を思い出しながらそう返したんだ。今のように体が重く感じたら彩矢からの警告だってことがわかったしね。とにかくこれで不用意に近づいて驚かれることも少なくなるだろうし、一安心かなと安心していると


『ところで……』


と彩矢が何か違う話をしようとしていたんだ。


『うん? どうしたの?』


何故かそこで言葉を切って何も言わないからそう聞き返すと


『先程から手が止まっていますが時間は大丈夫なのですか? 確か今日はスポーツ大会の参加する種目を決めるために早めに行かないといけなかったと記憶しているのですが』


彩矢はそう返して来たんだ。彩矢の言葉で途中から手が止まっていたこと、今日がスポーツ大会だということを思い出した僕は


『もうっ!! もっと早くにそれを言ってよ!!』


彩矢にそう言い返し、急いで止まっていた朝の支度の続きをしたのであった。

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