120話 2つ目の追加ペナルティ
「やっほー!! 久しぶり!!」
「うわっ!?」
ふと気がつくと、目の前に人がいたんだよね。だから思わず僕は叫びながら体を精一杯後ろに引いたんだ。
「あはは、ビックリした? 京ちゃんが中々起きないから心配したんだぞ? まさか正体バレでまた来るとは思ってなかったから強めに設定していたし……」
すると声の主はカラカラと笑いなが僕にそう言ってきたんだよね。最後の方は小声だったから何を言っていたのかはよく聞こえなかったけれど、それでも言いながら少し下がってくれたおかげで全身が見えたおかげで、誰なのかがわかった僕は
「……神様」
そう呟いたんだ。その声は神様の耳にまで届いたみたいで、神様はパンと手を鳴らしてから
「はいはい、久しぶりの神様ですよ? それで、京ちゃんはどうしてここにいるのかはわかっているよね?」
首をコテンと傾げつつ僕にそう尋ねて来たんだ。
「……はい」
ここに来る直前の記憶を忘れるという都合の良いこともなく、清水に正体がバレたことが原因だということを自覚している僕は頷きながらそう返したんだ。
「いやぁ、お姉さんもビックリしたよ? こっちから約束事を決めておいてなんだけど、その約束を破って来るなんて思ってなかったしね。それでも約束は約束だからね!! 早速だけどお楽しみの追加ペナルティだよ♪」
すると神様は満面の笑みを浮かべながら僕にそう告げて来たんだ。1つ目の先天性色素欠乏症化だけでも、色々な人に助けてもらっているおかげで今まで何とか生活出来ていたのに、それがもう1つとなると……。何を言われるのかも想像出来ないけど、それでも決して優しいものではなことはわりきっている僕は思わず体を震わせているたんだ。すると、
「あはははは! ……ふぅ。そんなに怯えなくても今回は初回みたいにキツいことはないから大丈夫だよ? 最初を特に厳しくしたのはそうでもしないと約束破られちゃうと思ったからしただけで。あっ! でも京ちゃんがどうしてもっていうならお姉さん的には全然OKだよ? んー、そうだなぁ……、今思いついたのでいうと片目を見えなくするとか、下半身を動かさなくするとか、出来なくはないけどどうする?」
神様は震える僕のことを笑った後、少し考える素振りをしてからそう言ってきたんだよね。だけど、そんな提案を受ける気は全くない僕は
「結構です!!」
って叫ぶように言い返したんだ。だけど神様は
「ほぅほぅ。結構とな? それってあれだよね? どんと来いって意味の結構だよね?」
絶対に分かりながら逆の意味を聞いてきたんだよね。さっきよりもさらに口元の笑みが深くなっているし。僕は思いっきり溜息をついてから、
「い り ま せ んっ!!」
一言一言強調するようにして言い直したんだ。すると神様は
「ははは♪ ごめんごめん、ちょっとした冗談だよ、じょ、う、だ、ん♪ あっ、でも新しい追加ペナルティは最初よりも厳しくはしないってことは本当だよ? あっ、でも人によったら厳しいかな? ごめんごめん大丈夫だって! それじゃあ、これ以上京ちゃんを怒らせちゃう前に発表しちゃおうかな?」
顔の前で手を合わせながら僕に謝ってきたんだよね。全然謝られた感じはしなかったけど……。途中で厳しいとか言い出したしね。それはともかく、結局どっちかはわからなかったけど、最初よりは厳しくなかったとしても、絶対に何かしらの支障をきたすペナルティなのは確定なわけで……。思わずゴクリと喉を鳴らしていると、
「だからそんなに緊張しなくても大丈夫だって。今回のペナルティの内容はどっちかっていうとお姉さんの我儘みたいなものだからね」
「え? それってどういう……?」
神様はそんなことを言ってきたんだ。急に我儘だとか言い出したから僕は困惑しながらもそう返すと、
「うん、そうなんだ。詳しくはもう少ししたら話す……かもしれないけど、まずは内容についてだね」
神様は頷いてからそう言ってきたんだ。そして、
「簡単に言うと、京ちゃんにはもう1つ人格を持ってもらいます。あっ、でもメインはあくまで京ちゃんだから、身体を乗っ取られるってことはないから安心してね」
僕にそう言ってきたんだ。だけど、
「えっと……?」
神様の言っている意味がよくわからなかった僕は少し良い淀んだ後、
「どういうことですか? 新しい人格ってことがそもそもわからないし……」
考えてもわからないと思った僕は神様にそう尋ねたんだ。すると、
「んー、二重人格になるって言えばいいかな? それも意思疎通が出来るね。アニメとかでもあるでしょ? 主人公の中に別人格があって、2人で心の中で会話しているのとか」
神様は唇の下に指を当てながらそう返して来たんだよね。……? でもそれって
「本当に厳しいペナルティじゃない……?」
気が付いたときには僕はそう呟いていたんだ。だって、神様の言い方からすると、身体を乗っ取られることもなく、ただ姿の見えない人から話しかけられるってことだよね? 確かに知らない人に話しかけられたら怖いとは思うけど、さすがにそんなことを神様はしないと思うし……。だからこそ思わず呟いた言葉は神様の耳にまで届いたみたいで
「それはどうだろうね? 京ちゃん次第だとは思うけど、かなりしんどいよ? 四六時中一緒だし、考えていることまでバレてしまうのって。まぁ、そこは2人で上手く折合をつけてね♪ それじゃあ登場してもらおっか」
神様はそう言うと、指を鳴らしたんだ。すると、神様の横にいつの間にかまるで鏡の中から出て来たのではないかと思うくらい僕とそっくりな女の子がいたんだ。
「ちなみに今この子は京ちゃんの姿をしているけど、姿がないのは不便だから京ちゃんの姿をしてもらっているだけなんだよね。だって今のこの子は精神体みたいなものだし、これからは京ちゃんと一緒に過ごしてもらうからね。っとまぁ、色々と言ってみたけど、実は京ちゃんこの子を知っているんだけどよねー。わかるかな?」
本当に僕に瓜二つな女の子の登場に驚いていると、神様は僕にそう言ってきたんだよね。だけど
「え、えーと……」
神様がそう言うくらいだから――もちろん僕をからかうためにそう言った可能性もあるけど――きっとどこかで会ったことがあるに違いないと思った僕は必死に記憶を探したけど、全然思い至らなかったんだよね。どうしても思い出すことが出来なかった僕は
「わからない……です。会ったことはあるんですよね?」
神様に確認するように尋ねたんだ。すると神様は手を左右に振りながら
「え? 京ちゃんがこの子と会ったことはないよ?」
そう返して来たんだよね。神様の返事で余計に意味が分からなくなった僕は
「……はい?」
神様が何を言いたいのかに頭がついていってないけど、何とかそう返したんだ。そうしたら
「もしかして京ちゃんはこの子とどこかで会ったことがあると思ってる? そうだったらそれは違うってヒントだけはあげようかな? どう? わからない?」
神様は僕が分からないことが分かっているはずなのに、答えを勿体ぶるようにもう一度僕にそう聞いてきたんだ。だけど、やっぱりわからない僕は何も答えられずにいると、
「はい、残念!! 時間切れでーす!! それじゃあ、誰なのかを本人から言ってもらおうかな?」
神様はパンと手を鳴らしてから僕にそう言った後、僕にそっくりな女の子に話を振ったんだよね。するとその子は、溜息を1つついてから
「そこで私に話を振りますか……。別にいいですが、その前に1つだけ……京さんに聞いてもいいですか?」
神様にそう確認を取っていたんだよね。神様が頷いて返したのを確認したその子は僕の方へと向き直り、こう言ってきたんだ。
「あの後、健吾さんに気持ちを伝えましたか?」
神様が思いついたネタは最初に候補として考えていたネタだったりします。その後のそれを使ったネタが少ししか思いつかず、むしろその設定を活かして話を進めることが出来る気がしなかったのですぐに候補から外れましたが。




