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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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118話 文化祭③

すみません、少々体調を崩してました。まだ完治はしていませんが……。

読者の皆様方も体調の管理にはお気をつけてください。

「さぁ!! 本番前の最後の通しをするわよ!!」


僕たちの出番の1時間前、ダンスを踊るステージの裏の広場に集まったクラスメイト(僕たち)を見渡しながらそう言ったんだ。

今更ミスがあったとしても直す時間はないけど、それでも体を慣らすという意味でも本番前に集まろうという話になって今こうしてみんなで集まっているんだ。そして時間もあまりないこともあり、真琴の言葉を合図に配置についた僕たちは曲に合わせて踊ったのであった。


…………

……


「ふぅ……」


通しが終わり、飲み物を飲んで一息をつきながら踊ったことのことを思い出していると、


「どうしたんじゃ? 何やら浮かぬ顔をしているようじゃが」


どうしても気になったところがあったらしくて、みんなに軽くアドバイスをして回っていた勇輝がそう声を掛けて来たんだよね。


「いや、別に気にするほどのことでもないんだけどね?」


だけど、今僕が悩んでいたことはすでにみんなが僕に合わせてくれたところだということもあって言い出し辛かった僕はそう言葉を濁したんだけど、


「京が今からダンスの振り付けを変えたいと言ったとしても怒りはせんよ? さすがに全部を変えることは今からじゃと厳しいとは思うが、ほんの少しならみんなも合わせることが出来るじゃろうて」


僕の横へと来た後、まるで僕の心を読んだかのように勇輝がそう言ってきたんだ。悩んでいることを言い当てられた僕は勇輝の方へと向いて、


「そんなにわかりやすかった?」


顔に出やすいって散々皆に言われてきたけど、そんなにすぐにわかるものなのかと思ってそう聞くと、


「いや、今このタイミングで悩んでおったからまさかと思って尋ねてみただけじゃよ。正直本当だったことに驚いておる」


そんな答えが返ってきたんだ。それはつまり勇輝にカマをかけられて、見事に引っかかったことを意味するわけで……


「はぁ……」


こういうところが単純だとかわかりやすいって言われる所以なんだろうなぁと溜息をついていると、


「それで? どの振り付け部分に不安なんじゃ? 本当に変えねばいかん部分があるとしたら宇佐美さんや篠宮さんに相談せんといかんしの」


勇輝がもう一度僕にそう聞いてきたんだ。それに僕は


「えっと、本当に少し気になったというか。その程度のことなんだよ?」


って言って少しだけ抗おうとしたんだけど、


「主役が不安を抱えたままの方が問題じゃよ。やっぱり不安は出来るだけ無くした状態で挑んでもらいたいからの」


勇輝に遠回しにだけど、いいから早く言えと言われてしまったんだ。またここで誤魔化そうとしても、結局は振り出しに戻されてしまうことを察した僕は


「えっとね……」


と前振りをしてから僕が不安に思っている部分――どうしても癖が抜けきらなかった部分――を元に戻したいということを伝えたんだ。もちろん清水や小糸に万が一でも気付かれる可能性を無くしたいということは言えないから、やっぱり僕だけ違う振り付けなのは恥ずかしくなったって理由に変えてだけど……。


咄嗟に言った理由だったけれど、それでも勇輝は


「相分かった。その部分じゃとそれで変わるのは俺と小野、それに篠宮さんと服部さんじゃな。それじゃあ小野たちに相談してくるとするから少し待っていておくれ」


1つ頷いてそう言うと小野君たちの方へと歩いていってしまったのを、まさかこんなにすんなりと話が通るとは思っていなかった僕は呆然と見送ったのであった。



………………

…………

……





「みんなおっつかれ~~!!」


無事に出し物(ダンス)が終わり、次のグループと入れ替わりに広場に戻ってきた僕たちはダンスの感想を言い合っていた。

あの後、勇輝が本当に小野君や真琴たちに了承を取って僕に合わせるって言ってくれたんだ。ただ、気をつけなくちゃ、気をつけなくちゃって思いながら踊っていたんだけど、気がついたらすでにクセが出てしまっていたんだよね……。それに気づいたみんなが咄嗟に切り替えてくれたから何事もなかったように済んだけど、それでも僕が無茶を言ってお願いしたのに、結局僕自身で無駄にしてしまったことに1人溜息をついていると、


「なぁに溜息ついてんねん。そんなにあの部分のことが気になっとるんか?」


小野君がそう声を掛けて来たんだ。


「いや……、うん。僕が言い出したのに、僕が出来てなかったからさ……」


最初は誤魔化そうかと思ったけど、そんな気分じゃなかった僕は素直に肯定して、そのときのことを思い出してもう1つ溜息をついていると、


「結果的には無事に成功に終わったんやから気にせんでええって。それにな……」


小野君は僕を励まそうとしてくれたんだよね。だけど途中で良い淀んでいたからどうしたんだろうと思っていると、


「どうせ京のことだから絶対クセが出ると思っていたのよ」


その言葉を引き継ぐように真琴がそう言ってきたんだよね。小野君もそう言おうとしていたのかと思って小野君の方を見ると目を逸らされちゃったんだ。小野君の反応から小野君も同じことを言おうとしていたことがわかって、文句を言おうとしたんだけど、


「もちろん京さんが京さんの提案通りに踊れたときにも合わせられるようにはしていたんですよ?」


その前に優花ちゃんにそう言われたんだ。


「いや、そうかもしれないけどさ……」


だけど、やっぱりわかっていても納得出来ないことってあるよね? だからこそ思わず不満の声を漏らしていると、


「折角の京が主役のステージだったんじゃ。みんな成功で終わらせたかったんじゃよ。だからこそ万が一を想定して京がどっちを踊っても対応出来るようにしていただけなんじゃ」


勇輝にそう言われてしまったんだ。勇輝の言い方がまるであの曲は僕のためだけの曲だったみたいに聞こえたけど、きっとそんなことはないよね、うん。やっぱりするからには成功したいからこそ僕の我儘で台無しにしちゃいかねなかったところをみんなが気転を利かせて乗り切ってくれたんだ。自分が失敗したことだけに囚われてそのことにも気がつけていなかったことを自覚した僕は


「……うん、そうだよね。ごめん。少し頭を冷やしてくる」


とみんなに一言謝ってからみんなの輪から離れたんだ。そして人気があまり無いところまで来てから心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返していると、


「やぁ熱海さん。今少し大丈夫かい?」


まるで僕が1人になるの(このとき)を待っていたかのようなタイミングで清水が声をかけて来たのであった。

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