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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
150/217

108話 元通り? の日常

今回は少し短いです。

ふんふんふーん


鼻歌を心の中で歌いながら朝ごはん兼お弁当のおかずを作っていると、


「あら? 今日はご機嫌ね? どうしたの鼻歌なんか歌っちゃって」


とお母さんが話しかけてきたんだよね。あれ? もしかして声に出ちゃってた? そんなことを考えていると、


「無意識で鼻歌を歌うほど機嫌が良いってことは健吾君と無事仲直り出来たみたいね」


お母さんがそんなことを言ってきたんだ。お母さんには健吾とぎこちなくなってしまっていたことを隠していた僕はバレていたことに動揺してしまい、


「えっ!? 何でそれを知って……!?」


って少し声を荒げながらお母さんの方に振り向いたんだ。だけど、


「はいはい。手が止まっているわよ?」


と注意されちゃったんだよね。だから僕は渋々フライパンの方へと向き直り、焦げないようにフライパンの中身をかき混ぜながら


「どうしてわかったの?」


と背中越しに聞いたんだ。すると、


「そんなのすぐにでもわかるわよ。いつもより早めに家を出ていたり、健吾君の話をしようとしても露骨に話をそらされていたんだから」


と呆れが混ざったような声が返ってきたんだよね。そんなにバレバレだったのかと思わず言葉を詰まらせていると、


「まぁ、今の様子からして無事に仲直り出来たみたいね。今も嬉しそうに『健吾君の』お弁当を作っているみたいだし」


と健吾のというところを強調してきたんだ。それに僕は


「べ、別に健吾のためなんかじゃ……」


と振り返って言おうとしたんだけど、


「ほらほら? 焦がしちゃうわよ? 『健吾君の』お弁当を作るんだからいつも以上に焦がしちゃ駄目でしょ?」


お母さんに遮られてしまったんだよね。しかもまた健吾というところを強調して。これは料理を作りながらじゃとてもじゃないけどお母さんを言い負かすことが出来ないと思った僕は


「父さんからもお母さんに何か言ってよ」


父さんに協力を求めたんだ。修兄はまだ寝てるから無理だしね。まぁ、起きていたとしても僕と健吾のことで騒ぐだけで助けてくれないだろうけど……。

そんなことを考えながら父さんの助けを待っていたんだけど、返事が返ってこなかったんだよね。どうしたのだろうと思っていると、


「ちなみに巌さんなら自分の妄想の中にトリップしてるから無理よ? 大方未来の京のことについて考えているのじゃないかしら?」


お母さんからそんな返事が返ってきたんだよね。どういうことかと思ってチラッと食卓の方を見ると、目を瞑り、静かに泣いていたんだよね。いつぞや見たことがある光景に僕はひっそり溜息をついたのであった。


…………

……


「よう……って、どうした? かなり疲れているみたいだが?」


あの後もお母さんにからかわれ続けて何とか切り抜けたんだけど、朝ごはんのときに健吾と仲違いしていたけど仲直りしたってことが何故か修兄にもバレちゃっていて、予想通り修兄に絡まれたんだよね。急に俺の眼が黒い内は健吾との交際は認めないとか言い出して本当に困ったし……。あのときすぐにそのつもりはないと言い返せなくて勘ぐられそうになったんだけど、その前にお母さんがいつも通り修兄を殴り飛ばしてくれて本当に助かったんだ。その後もすぐに復活した修兄に色々と言われて足止めされそうになったんだけど、何とか切り抜けて玄関(ここ)まで来れたんだ。そんなこともあって、まだ朝なのに満身創痍な僕を見て健吾がそう言ってきたんだよね。


「あはは……。大丈夫だから気にしないで? あっ、そうそう。これが約束のお弁当だよ」


だけど、健吾のことで疲れただなんて本人にはとてもじゃないけど言えない僕は笑って誤魔化してから話を逸らすためにもお弁当を鞄から取り出して健吾に手渡したんだ。すると、


「おぉー。昨日言って早速作ってくれるとかマジかぁ」


と言いながらすごく大事そうにお弁当を受け取って、まるでもう逃がさないといわんばかりにがっしりとお弁当箱を掴んでいたんだよね。その健吾の態度に思わず苦笑しながら


「そんな大事そうにしなくてもお弁当は逃げないよ? それに健吾が欲しいって言ったら全然作るしね。それよりも早く学校に向かおうよ」


そう健吾に提案したんだ。ここで立ち止まって話をして修兄と被ったら絶対面倒なことになるのが目に見えているしね。だからこそ早くここを出発して学校に向かってしまいたい僕は早く出ようよと心の中で健吾を急かしながら健吾の反応を待っていると、


「あぁ、そうだな。ここでずっと話しているのも迷惑になるよな」


と言って、これまた大事そうにお弁当を鞄の中に入れていたんだよね。さっきのお弁当を受け取ったときもそうだったけど、今までしたことのない健吾の態度に


「本当にどうしたの?」


早くここから出たいという気持ちがあるにも関わらずクスリと笑いながら聞くと、


「いや、その、なんだ。これから弁当を作ってもらえないかもしれないって思ったときにな? いか弁当が大事だってことがわかったんだよ」


健吾は頬を指でかきながらそう返してきたんだ。やっぱりお昼ごはんも一杯食べようと思ったらお弁当の方がいいもんね。健吾も僕からしてだけどよく食べる方だと思うし、そういう意味で確かに食べたい量を調整出来るお弁当の方がいいよね。ただ、


「僕のお弁当でそれだけ喜んでもらえるなら嬉しいけど、家で作ってもらっても同じじゃない? いや、もちろん僕も健吾が欲しいって言ってくれるから作るけど……」


僕よりもおばさんの方が健吾の好みの味付けを出来るだろうしね。もしかしたら朝ごはんとは違うおかずを食べたいからって理由なだけかも知れないし。……今度味付けを教えにもらいに言って教えてもらおうかなぁ。そんなことを考えていると、


「いや、そうだけど、そうじゃないんだよ……。なんて言えば……」


健吾は頭をガシガシとかきながらそう呟いたかと思うと、


「まぁ、あれだ。俺にとってはこの弁当が大事ってことだよ」


そう言ってきたんだ。


「え? それってどういう……って、ちょっ!?」


だけどそれがどういう意味なのかがわからなかった僕はそれの意味を聞き返そうとしたんだ。でもその前に健吾が「お先!!」とか言って自転車を漕ぎ始めちゃったんだよね。

だから僕も急いで自転車を漕いで健吾を追いかけたのであった。

【蛇足的な補足】前日のやり取りの後でもそうでしたが、自転車をこぎ始めた健吾の顔は真っ赤です。まぁ、今回は京が追いつくまでに気力で少し赤いかな? 程度まで抑え込んだようですが。

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