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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第四章 二学期編
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100話 始業式⑤

今回はいつもより少し短いです。

「京!!」


勇輝と一緒に教室を出ると僕の名前を呼ぶ健吾の声が聞こえてきたんだ。だから声の方へと振り返ると健吾が僕たちの教室の方へと歩いている途中だったみたいでもうすぐ近くまで来ていたんだよね。


「うん? 健吾どうしたの?」


僕は何の用事かを知るべくそう尋ねたんだ。すると、


「あぁ。京のことだから実力テストの対策するの忘れているだろ? だから俺たち(・・)と一緒に……」


健吾は僕に一緒にテスト勉強をしようと提案してきたんだけど、その途中で僕が誰かと一緒にいることに気がついたみたいで言葉を詰まらせていたんだよね。


「すまない。誰かと帰るところだったか……って丘神か」


その後、僕たちが返ろうとしていたところを呼び止めたことを謝っていたんだけど、僕の隣にいたのが勇輝とわかった途端に苦虫を噛み潰したような顔をして吐き捨てるように勇輝の名前を呟いていたんだ。


「何? 僕が勇輝と一緒だと問題あるの?」


勇輝に対して失礼すぎる健吾の態度に思わず険のある言い方で聞き返すと、健吾は自分がどんな態度を取っていたのかに気が付いたみたいで


「あ、あぁ、すまん。京が丘神と一緒にいたことに驚いてな。丘神もすまん」


と顔を元の表情に戻してから頭の後ろをかいた後、勇輝に謝っていたんだ。


「そう? でも勇輝となら一緒に居てもおかしくないとは思うんだけど……?」


入学した頃ならともかく、今なら勇輝と一緒に居る事は別におかしくないはずなんだけど……。健吾が何に驚いたのかがわからずに頭をひねっていたんだけど、


「そ、そうだな。あはは……」


健吾は健吾で苦笑いをするだけだったんだ。それからお互いに次の言葉が出て来ずに少しの間健吾の苦笑いだけが場を支配していると、


「それで? 中山はどうするつもりなんじゃ? テスト勉強をしに京を誘ってきたようじゃが、先程の言い方じゃと他にも連れがおるんじゃろ? 中山の後ろにおるやつがそうかの?」


今まで僕たちのやり取りを静観していた勇輝が健吾にそう問いかけていたんだ。そういえば健吾が僕たちに話しかけたときに俺たちとって言っていたっけ? っていうことは元々誰かと一緒にテスト勉強をしようとしていたってことだよね?


そう思った僕は健吾が一緒に勉強をしようとしていた相手を見るために体を横にずらして健吾の後ろを覗いてみると、健吾の身体で見えなくなっていただけで1人の女の子がいたんだ。……え? 女の子?


まだ相手の顔をしっかりと見ていないから誰なのかはわかってはいないけれど、制服でそう判断した僕は誰なのかを知るべく視線を上にあげて顔をよく見ると、


「……久川さん」


その女の子は久川さんだったんだ。健吾が女の子と一緒にいるってことにもビックリだったのに、さらにその中でも予想外の人物が健吾と一緒にいたことに思わずそう呟いた僕は健吾の方へと向き、


「何で……?」


と気がついたら口にしていたんだ。すると健吾は


「あぁ、久川さんとは夏休みに入る前に連絡先を交換していたんだよ。例の事件ことは京に謝ったっていうのは聞いていたんだが、それだけだとどうしても学校ですれ違ったりするときでも気まずいし、出来れば京と仲良くなりたいって相談を受けていてな。例の事件の黒幕は海老菜だったし、久川さんも隠れ蓑として利用されていただけだったから俺もその相談に乗るために連絡先を交換したって感じだ。それで夏休みの間に偶にだが連絡を取りあっている間に仲良くなってな。それで今日は親睦を深めるために一緒にテスト勉強をしようっていうことになったんだ」


と鼻の下を指で擦りながら言ってきたんだ。


「ふぅーん、そうなんだ」


嬉しそうに、そして自慢げにそう話す健吾に得も言えない面白くなさを感じた僕は何の感情も乗せずにただそう返したんだ。だけど健吾は僕の様子には気付くことなく、


「あぁ。それでさっきも言ったことだが、夏休みに相談を受けていた通りに京と久川さんがお互いのことをもっと知って仲良くなってくれればいいと思って京を誘ったんだ。ただ、ちょっと遅かったみたいだが……」


健吾はそんなことを言っていてチラリと勇輝の方を見て頬を指でかいていたんだ。


「うん、そうだね。健吾の言う通り折角誘ってところ悪いけど、これから僕は勇輝と2人で勉強するから健吾も健吾で久川さんと2人で仲良く勉強でもしたら?」


でもそれってつまり僕はおまけってことだよね? 健吾が僕を誘ったのも久川さんと一緒に勉強をするけど2人だとまだ会話が上手く出来ないかもしれないからクッション材として僕が居て欲しいってだけで。そもそも今日学校に来たときに久川さんにライバル宣言(あんなこと)をされて久川さんの気持ちを知っているのに邪魔をするなんてとてもじゃないけど出来ないしね。馬に蹴られたくないし。それに何かよくはわからないんだけど、今まで感じたことがないような感情が僕の胸の中を占めているんだ。お世辞にも良いものとは言えないものが。その言葉では言い表せない感情に少しイラついてしまっていた僕は僕自身でも驚いてしまうくらい冷たい声で健吾にそう返してしまっていたんだ。そこで健吾が僕の様子がおかしいことに気が付いたみたいで、


「き、京? どうしたんだ?」


少し戸惑いながら僕の様子を窺うようにそう聞いてきたんだ。だけど僕はそれに取り合わずに、


「別に? 僕はこれから勇輝と勉強場所を探すからもう行くね? 早くしないと勉強する場所を見つけることも出来ないし。健吾たちも僕たちに構ってないで勉強場所を探したら? 勇輝、待たせてごめんね? それじゃあ行こっか」


と言って勇輝の手を取り、勇輝の返事が返ってくる前にそのまま健吾から逃げるようにその場を離れたのであった。

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