7話 帰宅再び
「あぁ~、楽しかったわねぇ。ね?京ちゃん?」
「う、うん。そうだね、お母さん……」
楽しんでいたのは母さんだけだよとは言えるはずもなく、僕は苦笑いしながら玄関をくぐった。
するとドタバタと音を立てながら奥から誰かが走ってきた。
「お、やっと帰ってきたか。京矢が今日退院だって聞いてたから早めに帰ってきたっていうのによ~。家に帰ってきたときに誰もいなかったからさすがにビックリしたぜ。それで、肝心の京矢は……」
そう言って母さんの後ろにいた僕を覗き込む修兄は僕の姿を見た途端にそのまま固まっちゃったんだけど、どうしたんだろ?僕の今の姿は母さんが写真で見せてるってはずだったから、そこまで驚くことじゃないはずなのに……。
それにしても修兄は動く気配がない。こっちから呼びかけたら反応するかな?
「え、えっと……、修兄?どうかした……の?」
僕と違って修兄は身長が170センチ以上あるから(全く世の中不平等だよ)、必然と見上げる形で修兄に呼びかけてみた。すると修兄は急に体を震わせ始めたんだけど、どうしたんだろ?
「母さん、母さん。なにこの生き物!?京矢だよな!?マジで可愛すぎるんだけど!?これはもう俺が護ってやらないと!!そのためにまずは契りを交わすために誓いのきブフォ!?」
動き出したと思ったら急によくわからないことを口走り始めた修兄。あ、最後のよくわからない語尾は母さんに蹴り飛ばされたときに出た言葉ね
「はいはい、馬鹿なこと言ってないで修矢は車の荷物を運ぶの手伝いなさい」
「何でだよ!俺はそれよりも京矢を愛でる作業をゴフッ!?する必要ガハッ!?はい、すいません。手伝わせていただきます。いえ、手伝わせて下さい」
修兄は最初は母さんに口答えしてたけど、鉄拳制裁を受けたあとはむしろ土下座していた…。最初からそうなるのはわかっているんだし、わざわざ反抗しなくてもいいのに……。
あ、ちなみに母さんは修兄に昔からちょくちょく鉄拳制裁を加えているんだよね。僕には1回もしてこなかったのが不思議で、前にどうしてか理由を聞いてみたんだけど、京ちゃんみたいな可愛らしい顔に傷の1つでもついたらたいへんじゃないって真顔で返されたんだ。あれ?あのとき僕まだ体も男の子だったはずなのに……。
「まぁ冗談はさておき、さっさと運んで整理するから修矢は早く手伝いなさい」
あいよ~って言いながら修兄は僕の荷物を運ぶために玄関から出て行った。
あ、ちなみに何故か僕には荷物運びはさせてもらえなかった。僕の服だし、自分でやるよって言ったんだけど、今から汚されたらかなわないって言って触らせてもくれなかったんだ。運んでる途中に僕がコケて新品の服が汚れるのが嫌だからそう言ったんだろうけど、僕の服なのに……。
………………
…………
……
「よし、これで大体終わったかしらね」
帰宅してから2時間くらい経って、やっと僕の衣服の整理が終わった。
下着とか今までの服の入れ替えしてたら思ったより時間がかかっちゃった。さすがに下着とか服の入れ替えは僕も手伝ったよ?
も、もちろん下着の入れ替えのときは修兄には部屋を出てもらってたよ?さすがに下着を見られるのは恥ずかしいしね……。どうか手伝わせてくださいって土下座してたんだけど、母さんに問答無用で蹴り飛ばされてた。母さん、マジ容赦ない……
「んー、やっと終わったねぇ。今までの服を全部入れ替えたんだし、僕結構疲れちゃった。」
思ってたより大分疲れちゃった。これは確かに家への運び込みはやらなくて正解だったかも。前から体力に自身があった方ではなかったけど、体が女の子になっちゃったから体力も落ちちゃったのかな?
「えぇ、確かにちょっと汗かいちゃったわねぇ。」
そう言ってこっちを見てくる母さん。大体こうやって見てきたときは嫌なことしか……
「それじゃあ、晩御飯作る前にお風呂を済ませてしまいましょうか。京ちゃんはもう2日も入っていないんだし、お母さんと一緒に入りましょうね♪お母さん、娘と一緒にお風呂に入るのが昔からの夢だったのよ、楽しみだわぁ♪」
予想通り嫌な予感的中してしまった……。って、それより早く断らないと!
「い、いいよ!何でこの歳になってまでお母さんと一緒に入らないといけないの!?自分で入れるよ!!」
「あら?そう?でも女の子の体ってすごく繊細なのよ?京ちゃんにちゃんと出来るのかしら?髪を洗うのもただガシガシ洗うだけじゃなくて、特にそんなに長い髪だと洗い方にはコツがいるし。それに体を洗うのもただタオルでゴシゴシするだけじゃダメなのよ?それにお風呂を上がった後の髪の乾かし方にもやり方があるし……。京ちゃんはそれを全部1人で出来るのかしら?」
「うっ……」
え?ただいつも通り洗うだけじゃだめなの?特に髪は色々あるみたいだ。確かにこの髪を維持しようと思ったら面倒そうだなぁ。よし、
「髪の手入れとかすごくめんどくさそうだし、いっそこの髪を切っても「京ちゃん?」」
「……え?」
「そんなこと、お母さんが許すと思う……?」
「……あ、はい……」
切ってもいいよねって言おうと思ったら、案の定母さんに止められてしまった……。だから母さんその笑顔やめて、怖すぎて心臓に悪いよぅ。
「それで、どうするの?京ちゃん自分で出来るっていうなら1回やらしてあげるけど、出来てなかったら今後はお母さんと一緒に入ってもらうことになるけど?」
「大丈夫だ、母さんに頼らなくても俺が手取り足取りおs「修矢は黙ってなさい」ゴフォ!?」
え?出来てなかったら今後一緒に入らないといけないって、何の罰ゲーム?1回でも一緒に入るのって恥ずかしいのに……。でも、洗い方とか全然知らないし……
「………………一緒に入って教えてください……」
今後ずっと一緒に入るよりはマシってことで1回だけなんとか乗り切ろう、うん。修兄が俺のことはスルーすかとか言ってたけど、ここは無視しておこう。今のはどう考えても修兄が悪い。
「はい、よく言えました♪それじゃあ一緒に入りましょうか」
そうして僕は母さんと一緒にお風呂に向かうのであった……。
………………
…………
……
「あ、京ちゃん。いきなりシャンプーはつけちゃだめよ?まずは髪全体を濡らさないと」
「う、うん……」
今、母さんとお風呂に入ってるんだけど、髪の洗い方もすごくめんどくさかった!今までならシャンプーつけて、後はお湯で流すだけだったのに……
「あ、そんな雑にやっちゃダメじゃない!!こらっ!流した後次はトリートメントを使わないといけないでしょ?あ、京ちゃんの分を買うの忘れてたわね。今日はお母さんのを使っておきなさい。あと、トリートメントを使い終わったら次はリンスよ?」
…………とまぁ、こんな感じにただ髪を洗うだけなのに色々使わないといけないみたい……。何でこんなに使わないといけないの?パッて終わらせたらいいじゃん!
あ、母さんは僕に指導してるだけで服は来たままだよ?お風呂のあとに言うことを1つ聞くっていう条件で何とか母さんに服を脱ぐのは自重してもらった。もちろん僕も出来るだけ自分の体は見ないようにしてるよ?自分の体とはいえ、女の子の体を見るのは恥ずかしいしね。
「はい、ちゃんと洗い終わったわね?それじゃ次は体を洗うんだけど……。そろそろ現実逃避してないで、自分の体をしっかり見なさい?そうじゃないと体をちゃんと洗えないでしょ?それともお母さんに洗ってもらいたいのかしら?私としては大歓迎だけど♪」
「…………わ、わかったよぅ」
そう言って、僕は鏡に映った自分の産まれたままの姿をこのとき初めてみた。胸はほんとに膨らんでいる?っていうくらいしかなかったんだけど、きっちりくびれが出来ており、そこには未だに僕自身とは思えないすごい美少女が映っていた。
「…………うっ……」
「ほらほら、何自分の体を見て顔を赤くしてるのよ?そんなんじゃ何もできないわよ?」
「う、うん。わかってはいるんだけどさ……。やっぱり恥ずかしいよぅ……」
「はぁ~。これは先が思いやられるわね……。でも京ちゃんを待ってたら時間がどれだけあっても足らないし、とりあえず説明するわね?」
「……う、うん。もう大丈夫……だよ。説明お願い」
「それじゃあ、京ちゃん。女の子の体はね?すごく繊細なの。だから今まで見たいにタオルで適当にゴシゴシするだけじゃすぐに傷ついちゃうのよ。だから摩擦があまりないタオルを使って、力を入れすぎに洗う必要があるの。わかった?」
「うん。やってみる……」
髪を洗うよりは覚えないといけない事が少なくてちょっと安心したかな?えっと、とりあえずあまり力を入れずにこのタオルで洗えばいいんだよね?早速試してみようっと
「そうそう、そんな感じでやっていくのよ。これで明日からは自分で出来るわよね?出来ないんだったら、お母さんが手取り足取り教えて「だ、大丈夫だよ!もう覚えれたもん!!」」
明日からも母さんと入るなんて、いつ襲われるかわからないし、怖すぎてとてもじゃないけど、安心できないから思わず声を被せちゃった。少し不安なところもあるんだけど、念の為っていってもう1回確認しておいたら大丈夫だよね?
母さんは少し残念そうな顔をしてたけど、僕の平穏の方が大事だから仕方ないよね、うん。
そうこうしているうちに体を洗い終わった僕は後はお風呂につかるだけになったから、母さんはもういらないよって思って母さんの方を見てたら「はいはい、出て行ってあげるわよ。でも、お風呂から上がるときはちゃんとお母さんを呼びなさいよ?髪や体の拭き方にもちゃんと手順っていうものがあるんだから」と苦笑しながら出て行ってくれた。
こうして僕は束の間の休息を手に入れることが出来たのであった。
女の子は自分を磨くためには色々するものなのです。
まぁ京ちゃんはなんだかんだで慣れていくのでしょう。
あ、それと1章の終わりに今まで出てきた人物の紹介を入れようかどうかで悩んでいます。要望があれば入れようと思っています。




