表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第三章 夏休み編
130/217

95話 戻る心⑤

すみません、更新が遅れました。


始まる前に補足ですが、

今回登場する牧野は

丘神先生と同様に京担当の看護婦です。

京の担任の妹でもあります。

久しぶりの登場ですので、多少キャラが変わってしまっているかもしれませんが、

その点はご容赦を……(・ω・`)

「京ちゃん、健吾君とちゃんとお話しは……あー、出来なかったかー」


結局キスのことを話すことが出来ないまま面会時間が終わってしまい、健吾を見送った後溜息をついていると入れ違いで入ってきた牧野さんにそう言われてしまったんだ。


図星をつかれ、自分の不甲斐なさにもう1つ溜息をついていると、


「ほらほら、溜息なんてつかないの! 幸せまで一緒に逃げちゃうよ! それに予想通りって言えば予想通りだったしね」


牧野さんがそんなことを言ってきたんだよね。それに思わず咎めるような視線を送ると、


「ごめんごめん。でも、今の(・・)京ちゃんなら聞くことは出来ないだろうなぁって先生から京ちゃんが記憶を失っていたときの記憶もあるって聞いたときから思っていたんだ」


牧野さんは顔の前で手を合わせながら謝ってきたんだけど、それでもやっぱり今の僕には無理だって言ってきたんだ。


「やっぱり謝るつもり無いじゃないですか……」


だけどこれはいつも通り僕をからかいに来ただけだと思い、怒る気力も無い僕は脱力しながらそう返すと、


「いやいやいや、そういうつもりじゃないんだけど……。どうして健吾君とあの話が出来なかったのかは京ちゃん自身でもわかっているんじゃないの?」


両手を前に振りながら、いつもの調子を崩さずに否定してきたんだけど、そのままの体制で顔だけ真剣な表情に変えながらそう聞き返してきたんだよね。そんなことはないとすぐに言い返そうとしたんだけど、


「……そんなことないよ」


何かが胸に引っかかってしまい、一瞬詰まってからしか返答出来なかったんだ。その様子を見ていた牧野さんは


「ふむ……」


伸ばした手を引っ込めて、片手を顎に当てながら何やら考え始めたんだよね。僕はただそれを呆然と見ていると、


「まだ無自覚の領域……かな。でも、少なからず心当たりはあるみたいだし……。どちらかというと認めたくなくて頭から否定してしまって気付いていないといったところかな」


牧野さんがブツブツと僕の耳には届かないくらいの小さな声で何やら呟いていたんだ。僕をからかいに来たんだと思っていたら急に考え込むし、一体何をしに来たんだろうと牧野さんが僕の病室に来た理由がわからなくなってきた僕はそれを問おうと思って口を開こうとしたんだけど、


「京ちゃん、すごく変な質問をしてもいい?」


その前に牧野さんの中で何やら話がまとまったみたいで、そんなことを聞いてきたんだよね。僕も質問しようと思って口を開きかけたところに質問を投げかけられたものだから、僕は慌てて開きかけた口を閉じたんだ。無理矢理口を閉じたものだから、上手く次の言葉を紡ぐことが出来なかった僕は口を傾げるだけで質問の続きを促すと、


「あぁ、もう。やっぱり京ちゃんはその仕草が一番可愛い……じゃなくて! こほん。えっとね? 断じて馬鹿にしているつもりじゃないってのを前もってわかっておいて欲しいんだけど……」


牧野さんは何故か悶え始めたんだ。まぁ、すぐに自分で咳払いをして気持ちを切り替えていたみたいだけど……。そして念を押すかのように冗談で言う質問じゃないと僕に言って一呼吸置いた後、


「京ちゃんは、男の子? それとも女の子?」


僕にそう言ってきたんだ。いつもだったら冗談でしょとすぐに返すんだけど、冗談ではないって予め言ってきてるってことは、からかっているのではなくて本当に質問してきているんだよね?


「男……のはずだよ」


そう思った僕は真面目に返したんだ。だけどやっぱり断言できずに、最後に余計な一言をつけてしまったんだ。

さっきから――正確には健吾と会ってから――自分のことについて上手く表現出来なくなってきたって言ったらいいのかな? 自分自身のことが良く分からなくなってしまったんだよね。自分のことなのに全くもってわからなくなってしまった自分にもやもやしていると、


「……やっぱり迷い始めてるんだね」


牧野さんがそう問いかけてきたんだ。さすがに牧野さんが何について言っているのかは聞き返さずともわかったんだけど、返す言葉が何一つ思いつかなかった僕は黙っていると、


「黙っているということは認めているということと同じだからね?」


牧野さんは特に表情を変えることなく、確認するかのようにもう一度質問をしてきたんだ。ただそれが、隠して誤魔化そうとしても無駄だと咎めるような視線に思えてしまった僕は思わず視線を逸らしてしまったんだ。するとその様子を見ていた牧野さんが


「あっ、ごめん! 別に責めているわけじゃないんだよ! ただ、少しでも京ちゃんのためにと思っていったんだけど……。ごめんね、お節介が過ぎたかな……」


僕に謝ってきたんだ。そしてもう一度僕に「ごめんね」と呟くように言った後、そのまま立ち去りそうな気配を感じた僕は慌てて顔をあげて、


「そんなことはない……よ」


何とかそう言うことが出来たんだ。僕が顔をあげたときには牧野さんはすでに踵を返し始めていて、肩を落としながら出口へと歩き始めていたんだ。牧野さんに怒られるか責められると思っていたから、牧野さんの今の行動が予想外過ぎて、僕が出せた声は小さかったけど、無事に牧野さんの耳には届いたみたいなんだ。牧野さんはゆっくりと僕の方へと向き直り、


「ほんとに?」


聞き間違いじゃないことを確認するかのように聞いてきたんだ。だから僕はそれに頷いて返し、


「僕1人だと絶対に塞ぎ込んでしまっていたと思うし、事情が事情だから相談出来る人も牧野さん以外にいないしね。お母さんたちに相談すると何言われるかわからないし……」


と答えると、牧野さんは


「よかったぁ。また踏み込み過ぎちゃっと思っていたよ」


安心したように脱力しながらそう言っていたんだ。その様子に僕は疑問を覚えて、軽く首を傾げていると、


「あれ? どうしたの?」


僕が首を傾げていることを不思議に思ったのか、牧野さんがどうしたのか聞いてきたんだよね。


「えっとね? 怒らないで聞いて欲しいんだけど、僕の本音を引き出す演技だとかって言ってくると思っていたんだよね……」


それに僕は恐る恐るそう答えたんだ。牧野さんって健吾と性格がよく似ているから、こっちが真剣に聞いて欲しいときほどそうやってふざけてくると思っていたんだ。まぁ、そう思っているならなぜ引っかかりにいったのかってなるけど、そうしないと話が前に全然進んでくれないからね……。そんなことを考えていると、


「京ちゃんの言葉を借りるわけじゃないけど、事情が事情だからね。特に今の京ちゃんの心境についての相談については私にしか出来ないんでしょ? それなのにふざけるなんてとてもじゃないけど出来ないよ。あぁ、もちろん京ちゃんがして欲しいなら、もう一度後ろを振り向いた私を京ちゃんが呼び止めるところからやり直してもいいけど、どうする?」


牧野さんはそう真面目に返してくれたんだ。まぁ、最後はワザとらしくウィンクをしながら聞いてきたんだけどね。僕はそれに首を横に振ってから


「それはいらないかな。牧野さん、ありがとう」


牧野さんにお礼の言葉を伝えたんだ。すると牧野さんは


「いえいえ、どういたしまして。って言ってもまぁ、私から京ちゃんに教えられることは少ししかないんだけどね……」


微笑んでくれたかと思ったらすぐに苦笑し始めたんだ。どうしたのだろうと思っていると、


「偉そうなことを言ったけどね、結局のところは京ちゃんの心次第なんだよ。京ちゃんが健吾君とどんな関係になりたいのかを、もう一度ゆっくり考えてごらん。んー、これだと漠然としすぎているよね。そうだなぁ、記憶を失う前までの男の子だった京ちゃん、そして記憶の失っていた間の女の子だった京ちゃん、それぞれの方面から考えてみればいいと思うよ。女の子のときの気持ちの方は難しいかもしれないけどね。それでも一度考えて、どっちの気持ちがより強いのかを考えればいいと思うよ。まぁ、全部私の憶測だから、そうしても意味がないかもしれないから、考え方の1つとして受け取ってもらえればうれしいかな?」


牧野さんがそう言ってきたんだ。別視点で考えてみるなんて方法は思いもしなかったからすごく参考にはなったんだけど、


「……それって、結局は僕自身で決めろってことですよね?」


答えらしい答えを全く言ってくれていないことに気付いていた僕はそう聞き返すと、


「そりゃそうだよ。『恋愛』のことに関しては相談に乗ることは出来ても、答えを出してあげることなんてその本人にしか出来ないからね」


牧野さんはやれやれと肩をすくめながら恋愛という言葉を強調しながら言ってきたんだよね。それに思わず、


「僕は健吾に恋愛感情なんか「はい、ストップ」……っ」


感情的に返そうとしたんだけど、言葉の途中で口に指を置かれて止められちゃったんだ。そして、


「そうやって、僕は男だから~って言う固定概念を持つから偏った考えしか出来ないんだよ? もちろん自分は女だから~って思い込めってわけじゃないんだけど、ある意味中間的な立ち位置にいる京ちゃんはどちらからも見ようと思えば見れるんだから、そうしないともったいないよ」


諭すように僕にそう言ってきたんだ。そしてさらに何かを牧野さんが言おうとしたところで、


コンコン――


とノックする音が聞こえたんだ。


2人してノックされた方を見ると、渋い顔をした丘神先生が扉の前に立っていたんだよね。僕たちがノックに反応して振り返ったのを見た丘神先生は


「いないと思ったら、ここで油を売っていたんですね。頼んでいた書類の整理は終わっているんでしょうね?」


牧野さんにそう問いかけるだけ問いかけて病室を出ていったんだ。牧野さんは悪戯が見つかったような顔をしてから、


「あっやばっ!! ……時間切れかぁ。それじゃあ、京ちゃん、もう一度ゆっくり考えてみてね。そのときに私の言ったことも少し気にしてくれるとうれしいかな」


僕に手を振った後、先に出ていった丘神先生の後をついていくように病室を出ていったのであった。

その後、僕は牧野さんに言われたことも考えながら色々と考え直したんだけど、結局最後まで答えを見つけることが出来なかったのであった。

~病室を出た後の2人~


「ところで、どこから聞いていたんですか?」


「牧野君が京ちゃんに男の子か女の子かと聞いていたくらいからですね」


「えぇ~っ!? ほとんど初めからじゃないですか!?」


「牧野君が真面目に京ちゃんの相談に乗っていたみたいでしたから静観していたんですよ。いつものように暴走して踏み込み過ぎ始めたら止めに入るつもりでした。それにしても、まるで知っていたかのようなアドバイスをしていましたが、似た場面に遭遇したことがあるのですか? 後、病院では大声を出さないように」


「はぁ~い。いえいえ、ここで働いていても、さすがに京ちゃんのような事例には会ったことはないですよ? ただ、ゲームとかそっちの方で全く同じってわけじゃないですけど、そういったものもありますので」


「ゲームですか……。まぁ、京ちゃんにとって十二分にアドバイスになっていたようですから、問題ないでしょう。今回も結局やや踏み込み過ぎているところもありましたが、そのおかげで京ちゃんが少しだけでも前に進めるようになったようですので、咎めるのもやめておきましょう。それよりも、戻ったら今度こそ書類整理をお願いしますね。牧野君が出ていってから、書類の量は少なくても3倍にはなっていると思いますので」


「えっ!? さすがに、3倍は嘘……ですよね……?」


「…………」


「何とか言ってくださいよ先生~!?」



といった会話がされていたりなかったり。


後、微妙な区切りとはなりますが、夏休み編の本編はこの話で終わりです。

3~5話程度章間を入れた後、2学期編に入ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ