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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第三章 夏休み編
129/217

94話 戻る心④

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

件名:目が覚めたら


~本文~

病院だったんだ。あの後どうなったの?

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


僕ってやつは……。僕ってやつは……。


あれから僕は健吾へ送るメールの内容を考えていたんだけど、最終的にこんな文章になっちゃったんだよね。

いや? あのね? 最初はちゃんとあのキスのことについて話がしたいって文章にしてんたんだよ? だけど、それだと僕が嬉しくて、健吾も同じ気持ちだったことを確認したいって思われるかもしれないって思って文章を変えたんだよね。それで色々と文章を変えているうちにキスという単語を書いてしまうだけで僕が期待しちゃっているってとられてしまうんじゃないかって思い始めちゃったんだ。それでその後も色々文章を書いては消してを繰り返して、最終的にあの文章になったんだ。


け、決して何について話したいのかを曖昧にして、健吾に丸投げをしようとか思っているわけじゃないからね? 旅行のことだって、キスのことだって話さないといけないことだしね。旅行を台無しにしちゃったことに関しては謝った記憶はあるけど、僕として謝ったわけじゃないからね。まぁ、これは健吾だけじゃなくて真琴たちにも謝らないといけないことなんだけどね……。キスのことに関しては……。うん、これはやっぱり健吾君に聞かれたときで考えればいいよね。


まぁ……、健吾に嫌われちゃって着信拒否されていたら意味がないんだけどね……。そう心の中で呟いた僕は連絡が届きいますようにと願いながら送信ボタンを押したのであった。


…………

……


京ちゃん(・・・・)!!」


メールを送った後、僕の懸念がまるで意味がなかったかのように健吾から返事が返ってきたんだよね。それで、今から会いに行っても大丈夫かって来たから、大丈夫って返したんだよね。すると、今からすぐに行くって来たから、慌ててナースコールで牧野さんを呼んで健吾が来ることを伝えたんだ。丘神先生から面会の手続きをすぐに出来るようにっていう連絡があったみたいで、すぐに準備をしてくれたんだよね。そうして健吾を迎える準備が出来て程なくしてから健吾が僕の名前を呼びながら病室に入ってきたんだ。


「……健吾(・・)、いらっしゃい」


ただ、そこまではよかったんだ。そこまではよかったんだけど、健吾の顔を見た瞬間、僕は思わず顔を逸らしてしまったんだよね。何故かはわからなかったんだけど、健吾の顔を直視することが出来なかったんだ。なんていうかこう……、健吾の顔を見ると胸の中が変な気持ちって言ったらいいのかな? 何とも言えない感覚に襲われたんだよね。上手く表現することが出来ないんだけど、とにかくその感覚のせいで健吾の顔を直視することが出来ないんだ。結果論みたいになっちゃうんだけど、キスのことについて話をしようだなんて僕から言い出さなくて本当によかった。今キスの話なんてとてもじゃないけど出来る自信がなにしね……。


何とか歓迎の言葉を絞り出しながらそんなことを考えていると、


「あぁ……って、なんで顔を横に向けてるんだ?」


やっぱり顔を逸らしたままなことに聞かれちゃったんだ。だけど、僕自身ハッキリとした理由がわかっていなくて答えられないんだよね。だから、


「いや、これは気にしないで、『健吾』」


僕は話を逸らすために、健吾という呼び方をさっき言ったよりも強調するように言ったんだ。そう、僕の記憶が戻ったということが健吾にもわかるように。すると健吾を強調したこともあって、上手く僕の言いたいことが伝わったみたいなだよね。ハッと一瞬息をのむ音が聞こえた後、


「記憶が……戻ったのか……?」


そう聞いてきたんだ。それに僕は


「えっと……? 戻る……?」


と戸惑うふりをして返したんだ。

丘神先生のときみたいに、ここで肯定しちゃうとあの間のことも覚えているってことを認めちゃうってことになるってわかったからね。だから僕は、健吾にどっちの話をするかを委ねるためにも、わざととぼけて聞き返したんだ。上手くとぼけられているか不安だったけど、顔を逸らしていたのが功を奏したみたいで、とぼけていたことがバレずに済んだみたいで、


「え……、あっ!! すまん!! 京が中々起きなかったからな。京が起きたのが嬉しすぎて少し気が動転してしまっていたみたいだ。さっきのは気にしないでくれ」


健吾が誤魔化すようにそう言ってきたんだ。僕はそれに対して、


「ううん。大丈夫だよ。……僕に気を使ってくれたことは嬉しいし」


特に気にしないことを伝えたんだ。……それにしても本当に僕はどうしたんだろ? 記憶を一度失う前まではお互いに気を使うのは当たり前のことだったのに。何でこんなに気を使ってもらえるだけで嬉しくなっちゃうんだろ? 思わず小声でだけど、言うつもりがなかったことまで言葉にしちゃったし。


「それならいいんだが……。後、最後に何か言っていたが、何を言っていたんだ?」


だけど、幸いにして健吾の耳には届いていなかったみたいで、そう聞き返して来たんだよね。でもそれに正直に言うわけにもいかない僕は


「な、何にもないから気にしないで! それより、メールでも書いたんだけど、あの後(・・・)はどうなったの?」


話題を変えるためにも、メールの内容について聞いたんだ。健吾がどちらのことについて話してくれるか――記憶が失っていた間の記憶がないって言っちゃったからほぼ決まってるけど――待っていると、


「あぁ、あの事件(・・・・)の後って言っても、俺も病院に運ばれたから丘神たちから聞いた話にはなるんだが……」


僕の予想通り、旅行でのあの事件の後のことについて話してくれたんだ。どうして健吾が病院に運ばれたのかについてはぼかされていたけどね……。僕はそのことに突っ込むことなく、静かに健吾が話し終えるまで話を聞き、


「……ごめんね。僕のせいで楽しく終わるはずだった旅行を台無しにしちゃって……」


僕として、改めて健吾に謝ったんだ。まだちゃんと健吾の顔を直視できないから、健吾の顎の方を見ながらだけど……。そして、健吾が何かを言う前に、


「僕のせいで健吾も頭を怪我(・・・・)しちゃったもんね……」


さらに被せるように僕が悪かったことを強調したんだ。ただ、いつも通り健吾に気にしなくてもいいと言ってくれる前に僕が悪いということを言わなくちゃと思っちゃって、まだ僕が知らないはずのことまでしゃべっちゃったんだよね。やっぱり健吾もそれに気づいて、


「あれも俺の不注意で……って、何で京が俺の怪我が頭だってことを知っているんだ?」


そのことについて質問をしてきたんだよね。僕は記憶を失っている間の記憶がないという嘘がバレてしまったのではないかと、内心で冷や汗をかきながら、


「いや、あのね? 起きてから丘神先生と話して、そのときに教えてもらったんだ」


なぜ怪我のことを知っていたのかについての言い訳をしたんだ。べ、別に嘘はついていないからね? 起きてから丘神先生と話したのは本当のことだし、(健吾にはまだ記憶の事に関して教えていないことを)教えてもらったのも本当だからね。それで、咄嗟に出た言い訳だったんだけど、健吾は健吾で自分で納得してくれたみたいで、


「あぁ、丘神先生か。確かに俺から言うつもりはなかったが……」


口元を手で隠してブツブツ何か言っていたけど、首を縦に動かしてくれたんだ。そのことに僕は


「健吾はもう元気そうだから大丈夫だとは思うけどね。それと健吾は……」


気がゆるんじゃって、思わずキスのことを聞きそうになっちゃったんだ。途中で気付いて急いで口を閉じたんだけどね。だけど、急に言葉を切ったら気になるわけで、


「うん? どうしたんだ?」


健吾がどうしたのか聞いてきたんだよね。だけど、健吾と会ってから、まともに顔を直視することも出来なくなった僕にキスのことを切り出す勇気があるはずもなく、


「ううん。何でもないよ」


と笑って誤魔化したのであった。


そうしてこの日はキスのことについて話せないまま終わってしまったのであった。

健吾に聞くとは言ったが、キスのことについて聞くとは言っていない


……は、さすがに強引過ぎましたよね(・ω・`)


まだこのことについては2人にもどかしく思っていてもらいたかったのでこうなりました。

苦しい展開ですみません……(・ω・`)

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