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神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第三章 夏休み編
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86話 デート③

「おっ、きたきた。いらっしゃい」


「……客に対しての態度としてそれはどうかと思うんだが」


京を連れ、喫茶店に入るまではよかったんだが、入ってすぐ目に飛び込んできたのは肘をカウンターについている桝岡さんの姿だった。そのやる気の感じられない姿に俺は思わず咎めるように言うと、


「だってお客って言っても君たちだけしかいないしー。それに健吾君は私にそんな口をきいてもいいのかなー?確かにお願いしてきてもらったけど、その代わりに「そうだな!桝岡さんは何も間違っていないよ、うん」……よろしい」


桝岡さんは口をニヤリとさせた後、ここに昼食にくる条件(・・)をさらっと暴露しそうになったんだ。京にそのことを聞かれるとマズい俺は遮るがごとく大声を出した。すると桝岡さんは満足そうに頷いた後、


「そうそう、それでいいんだよ。っと、健吾君を弄るのはこれくらいでいいとして。今の京ちゃん(・・・・・・)とは初めましてだね」


さっきまで俺に向けていたものとは全く別の種類の笑みを京に向けながらそう挨拶していた。……ん? 何か今含みのあるような言い方だったような気がしたが……、きっと気のせいだろう。この人が話し方に含みを持たせているようにするのはいつものことだから、きっとそう勘違いしたんだ。

俺がそんなことを思っている間も会話は続いており、


「えっと……、初めまして……?」


「うんうん、初めまして。いやぁ、大人しい京ちゃんも新鮮でいいね。それで、どう?」


「どう……とは……?」


「そりゃあ、もう健吾君とのデートのことに決まっているじゃない。どう? 楽しめてる? それとも無理矢理連れ出されて面白くなかったり?」


「い、いえ、そんなことは……」


「またまたぁ。本当のことを言っちゃえばいいんだよ?健吾君が何を言おうとしたところで私が何とかしてあげるし、何ならこの後お姉さんと2人でデートと洒落込むのも乙ってやつだよ?」


とかそんなことを言ってやがった。さすがに聞き逃せなかった俺は


「桝岡さん、そんな言い方はないだろ? 桝岡さんに心配されなくても京……ちゃんは楽しんでくれているし」


少し語気を強めに会話に割り込んだ。だが桝岡さんは


「ほんとにぃ? 健吾君がそう思い込んでいるだけじゃないの? 京ちゃん、本当のことを言っても大丈夫なんだよ? さっきも言ったけど、健吾君くらいどうとでもなるし」


俺を一瞥しただけですぐ京へと視線を戻し、話しかけていた。その態度に俺は問い詰めるために口を開きかけたが、京が何か言おうとしていることに気付き、開きかけた口を閉じ、何も言わずに見守っていると、


「えっと……、本当に楽しまさせてもらっていますので、大丈夫ですよ? むしろ私のわがままで午前中が終わってしまったので、申し訳ないくらいです……」


京はそう言ってくれた。桝岡さんが俺に言わせたのかという視線を一瞬向けてきたが、俺は肩をすくめるだけで返すと、


「ふーん、そっか。京ちゃんが楽しめているのなら私は別にいいんだけどねー。それにしてもあーあ、振られちゃったなぁ。傷心中の私は大人しくカウンターの奥にでも引っ込んでるから、注文が決まったら呼んでね」


顔をニヤニヤとさせながら、全く顔の表情とは一致しない言葉を言うだけ言って本当にカウンターの奥へと戻っていった。それを見届けてから俺は一つ溜息をつき、


「せめて席までは案内しろよ……。まぁ、気にしても仕方がないし、適当な席に座ろうか」


俺はあえてカウンターから少し離れた席へ誘導した。後ろから恨めがましい視線を感じたが、気にしないことにした。


…………

……


「京ちゃんってさ、記憶は取り戻したいの?」


注文が終わり、暫く京と取り留めない会話をしていると、注文した飯を持ってくるや否や、空いている椅子に座った桝岡さんがそう京に聞いてきたんだ。傷心中ってのはどこいったんだ、おい。

まぁ、正直なところ、そこは俺も気になっていた。一応記憶を失う前と後では人が違うようだということは伝えたというか都さんと話しているところを聞かれてしまったのだが、今の京が記憶を取り戻りたいかどうかは俺たちが記憶を取り戻したいということとは全くの別問題だ。むしろ、違う人格に戻る可能性があるから記憶が戻るのは嫌だという可能性の方が高いだろう。俺個人としてはやはり前の京に戻ってきてもらいたいが、今の京の気持ちも尊重したい。

だから俺は京がどんな答えを出しても受け入れようと固唾をのんで見守っていると、


「私は……記憶を取り戻したいです」


京はハッキリとそう答えた。

正直意外だった。桝岡さんも同じことを思ったらしく、


「ふーん。でも、本当かな? 記憶を取り戻すっていうことは()は消えてしまうかもしれないんだよ?」


いつも出している雰囲気とは別の雰囲気を醸し出しながら目を細めて京に尋ねていた。さっきまでと違う雰囲気の桝岡さんに京は一瞬ビクッとしながらも、


「はい。それでも……です。記憶を失う前から親しくしていただいている方たちは今の私でも仲良くしてくださいますが、失った記憶を取り戻せればもっと仲良くなると思うんです」


そうハッキリと答えていた。そして、俺の方をチラッと見た後、「それに……」と呟いてから、


()はもしかしたら偽りなのかもしれません。ですが、今抱いているこの気持ちだけは偽りではないと思いますから」


桝岡さんの方に向かって微笑みながら答えていた。だが、


「どういうことだ?」


京の言っている意味をイマイチ上手く掴めなかった俺はそう問いかけた。さすがにまだ話してから1週間するかしないか程度で俺に惚れてくれたと思えるほど自惚れれないしな……。そう思って聞いたのだが、


「……健吾さんには内緒です」


「そうだねー。今のでわからないのなら直接言ってもらわないとわからないだろうしね」


2人から少なからず非難の籠った視線を向けられてしまった。その視線にたじろいでいると、桝岡さんは1つ溜息をついてから、


「この朴念仁は放っておくとして、君は……本当にいいんだね?」


「はい」


「即答かー。……そっか、うん。わかったよ」


一瞬貶された気もするが真剣な顔をして京に確認のためにもう一度聞いていた。今の発言の真偽を確かめるためだろう。そして京はそれに対して即答していた。その反応を見た桝岡さんは頷き、何やら口をもごもごと動かした後、


「それじゃあ、お姉さんがとっておきのおまじないを掛けてあげよう。えいっ!」

「あうっ……」


「……おいっ!!」


おまじないとか言って京のでこを小突きやがった。京が涙目になりながら小突かれたところを手で押さえているのを見た俺はいつもより低い声で話しかけると、


「おっとっと。怖いおにーさんがこっちを睨んでいるからお姉さんは退散しようかな。それじゃあ、君に幸あらんことを」


桝岡さんは「ああ、怖い怖い」といいながらカウンターの奥へと引っ込んでいった。それを見届ける前に俺は京の方へと振り返り、


「京ちゃん、大丈夫か!」


未だにでこをさすっている京に尋ねると、


「は、はい。お騒がせしてすみません……」


京は未だに涙目ながらもでこから手を離し、そう俺に言ってきたんだ。だが俺は首を左右に振り、


「いや、悪いのは全部桝岡さんだ。本当にすまん。俺がこんなところに連れてきたばっかりに……」


京に謝ってもらうのではなく、俺が謝らないと話が進めないと思い、謝罪の言葉を述べ、頭を下げようとしたんだが、京に頭を両手で持たれてしまい、下げることが出来なかった。頭を下げようとしたが下げられなかったというお世辞にもカッコ良くはない体勢のまま京の方に視線を向けると、


「健吾さんが気に病む必要はないですよ。桝岡さんも私のためにと思ってしてくださったことだと思いますし。それに、健吾さんには感謝はしていますが、謝られるようなことはされていません」


京はほんのりと微笑みながら俺へそう言ってきたんだ。潤んだ目での微笑みにドキリとしたが、その気持ちを無理やり抑え込み、


「だが、それでは俺の気が済まないんだ」


俺は京に手を離してもらいつつ体勢を整えてから改めて京にそう言ったんだ。完全に俺のミスなのにフォローまでしてもらったら俺は恥ずかしすぎて今後京を直視できなくなってしまいそうだ。

俺の気持ちが通じたのか、京は唇に人差し指を当てながら少し考える素振(そぶ)りを見せた後、


「……では、ここを出た後に私が指定した場所へ連れて行ってくれませんか? 午前中を全部私のために使っていただいたのに、午後まで私のために使っていただくのは大変恐縮なのですが……」


京はそう提案してくれたんだ。その提案に俺はもちろん


「あぁ。そのくらいなら全然かまわない……というより、むしろやらせてほしい。俺のことなんか気にしないで、好きな場所を言ってほしい」


肯定で返した。さすがに今日中に帰れない場所を言われてしまうと都さんに連絡をしないといけなくなってしまうが、そのくらい交渉はする所存だ。

俺の意気込みを察したのか、京は今までならもう一度確認してきていたのだが、今回はそういうことはなく、


「ありがとうございます。それではお願いします」


とすぐにお願いしてきて頭をペコリと下げてきたのだ。それに俺は頷いてから、


「あぁ、任せてくれ。それで、どこに行きたいんだ?」


場所がわからないことには動きようにないしな。だからそう尋ね、京の返事を待っていると、京は一呼吸置いてから、


「私は、学校に行きたいです」


そう俺に告げてきたのであった。

そろそろ元の京ちゃんも出してあげたいのですが、話の関係上出すに出せないという。

ならさっさと話を更新して進めろよって話なのですが、文章が中々まとまらず、執筆速度が遅い作者には中々難しいんですよね……(・ω・`)

もっとしっかり文系を勉強するべきでしたね……。

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