表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様によるペナルティ  作者: ずごろん
第三章 夏休み編
110/217

章間⑱-2 悪夢の始まり4-2

前話の宣言通り、視点を変更しております。

今回は勇輝視点です。

「ふふふ……。どう調理してあげましょうか……」


服部さんが今までに見せたことがないような笑みを浮かべながらぶつぶつと呟いておったんじゃ。

何をするつもりかは知らんが、今気絶しておるこやつらに対して何かするつもりなんじゃろう。

まぁ、ここまでのことをしてもうたんじゃ。何をされても文句は言えまいと思った俺はふぅと1つ息をつきながら、今回のことを思い出していた。


……思えば、どこか楽観視していたんじゃろうな。中山から京さんが1人になると危ないという話は聞いておったんじゃが、前日の京さんとのその……、デ、デートをしたときも少しに間1人にさせてしもうたんじゃが、特に問題らしい問題は起こらんかったしの。だから今日もすぐそこだから大丈夫じゃと思って送り出してしもうたんじゃ。

その結果がこれじゃ。京さんは藤林に襲われてしもうた。その後もすぐに行動しないといけないのに、動揺を隠しきれなかった俺は後手に後手にとなってしまったんじゃ。これなら多少感情的になっていたとしても行動を起こそうとした中山の方が何倍もマシってもんじゃ。その後も谷村の言葉を信じきれんくて、道を分かれる際もただ流されただったしの……。結局、気合を入れなおしたのは中山たちと別れて暫く進んだ後、丁度空元が京さんを見失ったというところについたときに村居さんに活を入れてもらえたからなんじゃ。


村居さんに活を入れてもらい、気合を入れなおしたとほぼ同時に篠宮さんから服部さんのところに連絡が来たんじゃ。ただ、京さんを見つけることは出来たが、かなり厳しい状況という連絡じゃった。至急谷村と合流してこっちに向かってくれとの内容だったんじゃが、服部さんが言うには、篠宮さんが厳しいというときは、今その場に居合わせているだけで打破することが難しいということらしいんじゃ。そんな状況じゃから、俺たちもただ突っ込むだけじゃなく、上手く状況を見極める必要があるようなんじゃ。それを聞いた俺たちは間に合わなくなっては元も子もないと、谷村と別れた地点へ戻りながら作戦を立てながら向かったんじゃ。


立てた作戦――考えたのはほとんど服部さんじゃが――が上手くいって、無事に制圧出来たのは本当によかった。逆に上手く行き過ぎていたような気もするが、上手くいったのじゃから、気にすることではなかろう。あのとき、中山の代わりに俺が行けておればとかも制圧出来た瞬間は思ったりもしたが、今はとてもじゃないがそんなことを考えられる余裕はないしの。中山は京さんをかばって倒れてしもうたし、京さんはショックで気絶してもうたし……。もしこの場に俺しかいないんじゃったら俺ももっと激昂しておったんじゃろうが……。


服部さんが先ほどからぶつぶつ言っているのがすごく気になるんじゃ。余りにも異様な雰囲気をまとっているのを見てしまい、逆に冷静になってしまったんじゃよ……。ぶつぶつ言いながら携帯を取り出して何か調べているようじゃし……。


お世辞にも言えないくらい近づき難い雰囲気を出している服部さんの様子を窺っておると、「んっ……」という小さい声が聞こえてきたんじゃ。

一瞬京さんが起きたのかと思って、声の方向に向いたんじゃが、起きてきたのは海老菜じゃった。恐らく無抵抗故に軽く当てただけだったんじゃろうな。京さんじゃなかったことに軽く落胆していると、ゾクッとした寒気が襲ってきたんじゃ。何事かと思い、今度はそちらを向くと、服部さんがようやく獲物が起きたと言わんばかりの笑みを浮かべておったんじゃ。

普段からは考えられんような笑みの浮かべ方をしている服部さんに思わず口をはさみそうになったが、この寒気の正体であろう服部さんの逆鱗に触れにいく勇気がなかった俺は何とか口から声が出るのを抑えて服部さんの様子を窺っていると、


「目が覚めましたか?海老菜(いちご)さん?」


声だけ聴くと普段と変わらぬ口調で服部さんはそう海老菜に問いかけながら近づいていっておったんじゃ。それにしても海老菜の下の名前は苺じゃったんじゃな。思ったより可愛らしい名前をしておったんじゃの……。

そんなことを考えていると、


「……どうやら私の負けのようですわね。いいですわ。好きなところに出してくださって構いませんわ」


海老菜はすぐに状況を把握したらしく、俺たちに向かってそう言ってきたんじゃ。これだけのことをしたのじゃ。出すところに出したらそれこそ取返しのつかないことになるはずなんじゃが……。気絶する前とはまるで別人のような素直な返しに思わず面食らっていると、


「もちろん後で出るところに出ていただきますが、ただ出しただけでは貴女(・・)は意味がありませんものね?家の力を使えばもみ消せますし」


服部さんは想定の範囲内と言わんばかりにそう返していたんじゃ。その返しには海老菜も予想外だったみたいで、


「あ、あら?なんのことかよくわかりませんわ?」


少しつまりながら服部さんに返しておったんじゃ。……いや、もみ消すなんて無理じゃよな?

真偽を問いたい気持ちに駆られるが、それでは話の腰を折ってしまうため、何も言わないでいると、


「あら?とぼけるのですか?まぁ、いいです。それよりも……」


服部さんは特にそのことに追求する気もないようで、


「海老菜さん。貴女は脱税という言葉をご存知ですか?」


急にそんなことを海老菜に言い始めたんじゃ。どうして急にそんなことを?


「その言葉くらい知っていますが、それがどうしたというんですの?」


海老菜も急に話が変わったことに、戸惑いながらそう返していたんじゃ。それに対して、


「いや、私には関係のない話なのですが、とある噂を聞きましてね」


服部さんはそこで一度区切ってから海老菜へと微笑みかけ、


「ある事務所が脱税しているという情報を手に入れまして。まだマスコミもこの情報を手に入れていないのですが、もしマスコミへこの情報を流したらどうなると思いますか」


そう言ったんじゃ。


「……そんなことをすればその事務所にはマスコミが押し掛けますわ。……それがどうしたんですの?」


俺は服部さんの言い方から何となく察しがついたんじゃが、海老菜は少し間があったのが気になるが、そう返しておったんじゃ。それには服部さんも


「ここまで言ってもとぼけるのですね。では、こういえばわかりますか?とある事務所、正確には組と言った方がいいですか。警察とも深いつながりがあって、警察がおいそれとつつけないような団体の不祥事の情報があったとします。その情報を裏付けもしっかりした状態で世の中に公開したらどうなると思いますか?」


露骨に溜息をついてからもう一度言い直したんじゃ。それでようやく海老菜もとぼけることが出来ないと察したみたいで、


「そ、そんなものこちらでもみ消せば……」


と顔を少しばかり青くしながらボツリとそう呟いておったんじゃ。じゃが、服部さんは


「本当に出来ると思いますか?流すとすれば、すべてのマスコミに同時に流します。もちろんそれ以外にも。それを本当に全部もみ消すことが出来ると思いますか?」


攻めるようにそう言っていたんじゃ。その言葉に


「そ、そんなことをして貴方がただですむと「もちろん!」……」


さらに顔色を青くしながらも海老菜が何か言い返そうとしていたんじゃが、それに被せるように服部さんが遮った後、


「流すときは、その事務所と友好的な関係であるところの不祥事の情報をすべて流します。ですから、もし報復とかしようと思っていても、そんなことをしている場合ではないと思いますよ?」


もう一度笑みを浮かべてからそう言ったんじゃ。


「……何が望みなんですの?」


ここまで服部さんが言ったことはハッタリじゃなくて事実なんじゃろう。そして、本当にしようと思えばいつでも出来るのであろうことを察した海老菜は絞り出すようにそう言ったんじゃ。それに対し、


「いえ、ただ今回行った主犯格として、正直に警察に話してほしいだけですよ。もちろん、もみ消しなどは決して行わずにですが」


と服部さんが海老菜に言い、海老菜は


「……わかりましたわ。今回のことに関しては正直に警察に話をしますわ。ただ、そこの彼だけは見逃していただけないでしょうか」


俺がここまで運んできた男の方を見ながらそう言ったんじゃ。ふむ……。気絶しているだけでもあれだけ動揺したんじゃ。やはりこの男に対して特別な感情を抱いておるんじゃろうな。…………大切な人が傷つくとどれだけショックなのかわかっておるのにどうしてこんなことを……。

じわりと出てきた海老菜を殴り飛ばしたいという負の感情を何とか抑え込んでいると、


「それは彼次第じゃないですかね。起きているんでしょう?」


服部さんはそう気絶しておるはずのそいつに声を掛けたんじゃ。すると、


「あはは……。やっぱりバレてた?別に何もする気はないから安心してほしいかな?ベリーちゃん(・・・・・・)にも今回のでお灸をすえれたと思うしね。ベリーちゃんは経歴を気にしているけど、これだけのことをしていまったんだから仕方がないよ」


苦笑いしながら立ち上がりそう言ってきたんじゃ。ん……?ベリーちゃん?海老菜のことじゃよな……?苺じゃからか……?

そんなことを思っておると、


「その名前で呼ばなないでっ!」


海老菜がそいつに向かって怒鳴っておったんじゃ。じゃが、そいつは気にすることもなく、


「どうせその子にはバレてる(・・・・)んだからいいんじゃない?でしょ?」


と服部さんに聞いたんじゃ。服部さんは


「えぇ、まぁ……。まさか私が言う前に言われるとは思っていませんでしたが……」


と戸惑いながら返した後、


「そこの彼が言うとおり、海老菜さんの名前は海老菜(いちご)ではないんですよ。実は「やめてっ!!」……」


俺たちの方に向いて、海老菜の名前について何か言おうとしておったんじゃが、その前に海老菜が遮り、


「それだけは本当にやめていただけませんこと?大人しく出頭します。家の力も使いません。それでよろしくて?」


と懇願するように服部さんに言ったんじゃ。じゃが、服部さんは首を横に振り、


「それはこちらが提示した最低条件ですよ?何の取引にもなっていません。さて、話を戻しますが、海老菜さんの本当の名前は海老菜(すとろべりー)なんですよ」


海老菜の提案をバッサリと切り捨てた後、さらりと海老菜の名前を…………は?


「それは本当の事かの……?」


全く予想できなかった読み方故に、思わず口に出してしまうと、


「えぇ。そうですよ。そのせいで幼少期に散々弄られてしまい、性格がここまで歪んでしまったのでしょう。今でも名前を出されるだけでもここまでの反応をしておりますし。まぁ、中学生の頃くらいから読み方を『いちご』へと変えたらしいので、今や身近の人しかこのことは知らないでしょうね」


服部さんから補足までいただいてもうたんじゃ。海老菜がこの世の終わりみたいな顔をしておるから、本当のことなんじゃろう。


「じゃあ、何で服部さんが知っておるんじゃ?」


口を出してしまったついでとばかりに、そう問いかけると


「このくらいの情報なら探せばなんとでもなりますよ?実は父が情報を専門で扱っている仕事をしておりまして、小さいころはよく仕事を見させてもらったんですよ。小学生に上がる頃には見せてくれなくなりましたが、見せてもらっていた頃の記憶を頼りにある程度出来るようになりまして。中学の後半には父にも認められて、今ではたまに手伝っているんですよ」


服部さんはさらっと出来るようになった経緯まで話してくれたんじゃ。いや、それでも突っ込みどころは満載なんじゃが、ここは下手に突っ込まない方がいいんじゃろうな、うん。

そう思ってこれ以上は問いかけずにいると、


「さて、それで貴方はどうしますか?海老菜さんは見逃してくれと頼んでいましたが?」


服部さんはそいつに向かってそう言ったんじゃ。すると、


「もちろん僕も一緒に警察に出頭するよ?今までベリーちゃんが個人的に脅した人は全員何かしら警察にバレたらいけないことをした人たちだったから僕も何も言わなかったけど、今回は完全に逆恨みだったからね。それを止められなかった僕も同罪だ」


そいつはそう言って、抵抗はしないとばかりに両手を挙げたんじゃ。それを見て満足したのか、服部さんは頷いてから、


「そうですか。それではもう少ししたら救急車と警察が来ますから、それまで海老菜さんと大人しくしていてくださいね?」


そいつに向かってそう言ったんじゃ。それにそいつは了解とだけ言って海老菜の方へと歩いていったんじゃ。これだけのことを企みよったのに、ここまで無抵抗じゃと逆に拍子抜けなような気もするが……。

そんなことを思っているときに、ふと気が付いた俺は


「他の連中はどうするんじゃ?」


服部さんにそう聞いたんじゃ。篠宮さんたちに気絶させられ、未だに起きない連中に対してはこれまで誰も触れておらんかったから、気になってしまってそう聞いたんじゃが、


「彼らにはまず海老菜さんに脅されている内容について話してあげるつもりですよ?今回のこととそのことについて、自主的に警察に言っていただけるように少しばかり相談させていただくつもりです。京さんをあんな目に合わせたんです。全員最低限そのくらいはさせていただきます」


と、再び黒い笑みを浮かべながら彼らが起きるのを今か今かと見つめておったんじゃ。

それを見た俺は、決して服部さんを怒らせないようにしようと心の中で誓うのであった。


詰め込みたかった情報を詰め込んだ結果、

かなり読みにくくて蛇足的な内容になってしまった気がします(・ω・`)


あと、先週に登場人物紹介の京の絵を更新しました。

クオリティ的には変わっておりませんが、

全身絵にしましたので、興味がある方は見ていただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ