76話 悪夢の始まり①
遅くなってすいません。
ここからの話はこの物語が始まった当初からしたかった展開ですので、
色々書いては消したりしていたら遅くなってしまいました……(・ω・`)
迷いすぎて逆に文章がおかしくなってしまっているかもしれませんが(・ω・`)
【追記】藤林の名前を藤岡と間違えていましたので、修正しました。
あと、ここからはR15指定のことも入る(はず)ですので、苦手な方は飛ばしてください。次話にダイジェストを前書きに書きますので……。
「…………だろ」
「……から……じゃんよ」
「んっ……?」
周りの音――声?が聞こえてきて僕は目が覚めたんだ。って、あれ?何で僕は寝てたんだろ?確か青木君と一緒に逃げてい……てっ!?
そうだっ!逃げ切ったと思って様子を見に行こうとしたら、急に後ろから何かを口に押し付けられたんだ!それで……
……意識を失っちゃったんだよね。でもあれ?藤林君たちからは逃げ切ったはずだよね……?なのにどうして後ろから?意識を失う直前に誰かの声が聞こえた気がするし……。
あのときの状況を思い出そうとしていると、
「おっ、京ちゃん起きたじゃん」
僕が最も聞きたくない声が聞こえてきたんだ。
「え?なん……で……?」
あまりにも衝撃的すぎて、ほとんど言葉にできなかったけど、何とかその言葉だけをこぼすように呟くと、
「なんでって?そんなの決まってんじゃん?なぁ、テル?」
藤林君は後ろを振り返りながらそう言っていたんだ。藤林君が向いた方に視線を動かすと、そこには――
「――青木君」
青木君がいたんだ。
「…………なんで」
青木君が藤林君と一緒にいること、青木君はどこか気まずそうにしながら僕を見ていることに、思わずもう一度何でと呟くと、
「なんでって?そんなの決まってんじゃん?俺とテルが元々グルだったからに決まってるじゃん?」
藤林君は、もう一度同じセリフを言ってから僕に2人の関係性について明かしてきたんだ。
だけど、もしかしたら藤林君が嘘をいっているかもしれないと、僅かな希望にすがるように青木君の方を見たんだけど、青木君はすぐに僕から目線をそらしたんだ。そこで僕は藤林君の言葉が嘘ではないということを悟ってしまったんだ。
……逃げなきゃ。そう思った僕はとっさに体を動かそうとしたんだけど、体を動かすことが出来なかったんだ。
なんで!?って体を動かせないことに混乱しながらも、改めて自分の体を見てみたんだ。すると、自分の手が後ろに回されていて、後ろのパイプに紐か何かで固定されていたんだ。
それでも何とか逃げようと、体を捩っていると、
「逃げようたって無理じゃん。さっさと諦めて大人しくしていた方が身のためじゃん」
「熱海さん、下手に動くと体を痛めるし、出来たら大人しくしていてほしいんだ」
藤林君と青木君がそう言ってきたんだ。だけど、そもそも青木君があんなことをしなければこんなことにはならなかったのに……。
そういう意味を込めて青木君を睨むと、
「ギャハハ!!テルのやつ、めっさ嫌われてるじゃん!!」
「あはは……。そうだね……。こうなることはわかっていたんだけど……ね……」
藤林君はお腹を抱えながら笑い出し、青木君は肩を落としていたんだ。落ち込むくらいならしなければいいのに……。でも、後ろめたく思ってくれているなら希望がまだあるかもと思った僕は
「ね、ねぇ?青木君?今すぐ僕を元の場所に返してくれないかな?そうしたらこのことは誰にも言わないから……ね?もちろん藤林君たちのことも誰も言わないからさ」
その僅かな希望に賭けるために、そんな提案したんだ。だけど、
「ごめん……。それは無理なんだ……」
期待した答えは帰ってこなかったんだ。予想はしていたけど、逃がしてもらえないことが改めてわかって顔を伏せたんだ。だけど、青木君の様子からして、諦めずにお願いし続けたらチャンスはあるかもしれないって思って、消沈した心を何とか奮い立てようとした、ちょうどそのときに、
「ふふふ。いい格好ですわね、熱海京」
青木君たちのさらに奥の方からそんな声が掛けられたんだ。
その声に反射的に顔を上げるとそこには、
「お久しぶりですわ、熱海京」
悍ましい笑顔を浮かべた海老菜さんがいたんだ。
突然の海老菜さんの登場に、言葉も出せないでいると、
「お気に召していただけたかしら?わざわざ上げてから落とすというまどろっこしい演出を用意してみたのですが?」
海老菜さんは僕にそう問いかけてきたんだ。まだ完全には頭が回っていないけど、こんなことを言ってくるってことは……
「え、海老菜さんがこれを……」
計画したってことだよね……?僕の予想は当たっていたみたいで、
「えぇ、そうですわ。どうですか?信頼した相手から裏切られた気分は?といっても、私が貴女から受けた屈辱からしたらまだまだ生温いですが。……それにしても、思っていたより冷静ですわね。頭の処理が追いついていなくて、自身の状況がわかっていないだけの可能性もありますが……。」
海老菜さんはあっさりと主犯であることを認めたんだ。その後に続けて何かを言っていたみたいだけど、小さすぎて聞こえなかったんだ。だけど
「く、屈辱って……。僕は何も「おだまりなさいっ!!」……っ!」
身の覚えのないことに言いがかりを付けられて、今の状況になっているのなら、上手く誤解を解くことが出来れば逃げられるかもしれないと思って話しかけようとしたんだけど、その言葉の途中で僕の声を被せるように大声で海老菜さんに遮られたんだ。あまりの大声にビクッてなってしまって言葉を止めてしまったんだ。僕が言葉を止めたのを確認した海老菜さんは
「よくもぬけぬけとまぁ、そんなことを言えますわ!えぇ!えぇ!!そうでしょうとも!!加害者とはそういうものですわ!自分がした過失についてなんて覚えてはいないでしょうともっ!!忘れたというならば、私が思い出させてあげますわ!体育祭の日、あなたのせいでで私は学校から問題児というレッテルを張られてしまいましたわ!あなたが熱中症なんかで倒れてしまったばっかりにっ!!そのおかげで、私のキャリアに傷がついてしまいましたわ!どう責任を取ってくれるというんですのっ!!」
捲し立てるように僕に向かってそう言ってきたんだ。だけど、あまりにも身勝手な内容だったから思わず
「そんなの……自業自と………あっ」
思ったことを呟いちゃったんだ。言ってしまってから、すぐにこれは言ってはいけないことだと思って口を手で押さえようとしたんだけど、後ろで縛られていたからそれが出来なかったんだ。何とか途中で言葉を止めれたんだけど、ほとんど言い切ってしまったことに冷や汗をかきながら恐る恐る海老菜さんの様子を窺うと、
「まぁまぁまぁまぁっ!!今何を言おうとしたのか気になりますわ!まさかとは思いますが、私の自業自得とでも言うつもりでしたの!?あくまで自分自身は悪くないとっ!!」
僕の祈りもむなしく、海老菜さんは聞き逃してはくれなくて完全にキレてしまったんだ。絶対に刺激してはいけなかったのに……。
後悔しても先に立たないことは明白で、海老菜さんに次に何を言われるかもわからずに、顔を青ざめながら海老菜さんの様子を見たんだ。すると海老菜さんは首をガクンと下へ落とした後、ゆっくりと上へと持ち上げ、そして、
「本当に残念ですわ。少しでも反省の色が見えたならば、考慮してあげようと思っていたのですが、仕方がありませんわね。藤林、もう遠慮はいりませんわ。好きなようにしてしまってかまいませんわ」
と言って僕に一瞥をくれた後、踵を返して後ろへ下がっていったんだ。
その言葉を合図に、海老菜さんと入れ替わるように藤林君が前に出てきて、
「その言葉を待ってたじゃん。それじゃあ、京ちゃん。いいこと、しようじゃん?」
その顔には、あの時にみた寒気のする笑顔を浮かべられていたのであった。




