19話 立食会 2
『あの…』とツィトローナが声をかけると、アプフェリアーネは退屈そうな雰囲気を消し去り、見定めるような瞳を露わにする。
「何かしら?」
「衣装は…ヴァイリスカさんやリオナさん、キルサさんと相談して決めるべきだと、私は思います。…まだ勉強の最中ですし、衣装はヴァイリスカさんが専門家で、先生なんで」
「当たり前じゃない。ツィトローナさんは、よちよち歩きのひよっこ、いえひよっこの赤ちゃんよ。しっかりと侍女や使用人から、学べることをしっかりと学び、今後に活かさないといけないわ」
「え、じゃあさっきのは…?」
楽しそうにツィトローナを眺めるアプフェリアーネは、明後日の方を向いて肩をすくめるのみ。
説明する気がないらしい。
「まっ、ツィトローナさんはツィトローナさんなりに頑張るのが一番よ。それが面白いんだから」
「そうですか…?」
(やっぱり変な人だ)
ほんのりと懐疑的な雰囲気のツィトローナだが、アプフェリアーネはそんな姿も面白いようで、口端を僅かに持ち上げた。
媚びへつらうことも、全てを肯定することもない。若干の性格的な瑕疵はありながらも、自らの意思で動こうとするツィトローナを、アプフェリアーネは好む。
(行儀見習いの席が空くことは確定だから、今後のためにも一つだけ協力してあげようかしら。活かせるかどうかは本人次第だけど)
「何人か知り合いを紹介してあげるわ。その中から、ツィトローナさんが付き合うべきだと考える人を選んでみなさいな」
「あっ、アプフェリアーネ様が前におっしゃった『人脈の厳選』ですか?」
「あら、覚えていたの?」
「はい。必要なことだと思ったので」
「ふふっ、なら実践してみなさい。ツィトローナさん、貴女にとっての生命線になるかもしれないのだからね」
周囲を見回したアプフェリアーネは、数名の令嬢に当たりをつけ、ツィトローナと共に会場を歩いていく。
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(はぁー…。どうなるかと思ったが、オプストホーフェン嬢が出てきてくれて助かったぜ)
安堵の息を漏らすブルストは、ラプシアに目配せを行いつつ、ツィトローナとの距離を維持したまま移動をする。
(叔母上が言っていた、『ゼーゲルマンの危うさ』ってのがよく理解できた…。確実に相手が悪いんだが、格上のご令嬢に喰って掛かるのは流石に拙い)
止めに入ろうにも、令嬢同士のいざこざに男性が介入する状況は好ましくないため、もしラプシアが割って入った場合も、それはそれで面倒なことになる。
あの場を収められたのは、間違いなくアプフェリアーネだけであり、最善の手であったと言えよう。
(折角シュタインフェステ家の立食会なのに、落ち着いて飯も喰えないとは…貧乏くじを引かされたなぁ)
なんてボヤくブルストを横目に、ラプシアはちゃっかりと食事をする。
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