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侯爵家に行儀見習いとして送られた竜人の令嬢は、魔導具作りの夢を捨てたくない  作者: 野干かん


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17話 お茶会 2

「はぁー…リリアンネ様からの招待とはいえ、行儀見習いのガキンチョの茶会に付き合わされるとはな」

「兄様、そういう言い方はよくありませんよ。グラーニア叔母様のお気に入りということですし、適度にお付き合いしておきましょうよ」

「嫌だとは言ってないぞ?でもさ…俺はもう21歳だぜ?」

「お茶と歓談を楽しむのに年齢は関係ありませんよ」


 二人の若い男女が廊下を進むと、使用人に指示を出しているグラーニアを見つけ、慇懃な礼を行う。


「久方ぶりです、叔母上。ご機嫌如何でしょうか?」

「お久しぶりです、グラーニア叔母様」

「ブルストにラプシア、少し見ない間に大きくなりましたね。…本日は茶会への協力をお願いします」


 ブルスト・トゥルムとラプシア・トゥルム。騎士団団長ベルンハルトの子であり、グラーニアの甥姪である。

 深々と腰を折っての礼を行うグラーニアの姿に、二人は目を丸く見開いてから、顔を見合わせた。


「頭をお上げください、叔母上!俺たちは勉強を見てもらった恩があるから来たみたいなもんですし、大層なもんでもありませんよ」

「そ、そうですよ、グラーニア叔母様!」

「いえ、感謝は受け取ってください。事前に通達を行いましたが、やや気難しい部分がありますので、その辺りに気をつけてもらえればと考えています」


(ここまで叔母上が気を使うってことは、よっぽどのじゃじゃ馬かものすごい才女だと思うんだが、前者ってことはなさそうだな)

(グラーニア叔母様は淡々としている印象がありますけど、どんな方を気に入るのかしら?)


「『角をジロジロと見ない』『竜人であることを過剰に触れない』でしたよね?」

「はい。繊細な部分なので、注意を払っていただければ幸いです」

「了解しました。それでは行ってまいります!なんて」


 道化おどけた口調のブルストは、グラーニアに敬礼をし、ラプシアと共に会場へと向かう。


「ところで、うちの子たちがまだ来ていないのですが」

「あっ!伝え忘れてました!」

「なんか馬車の車軸が壊れてしまったみたいで、到着に遅れるか、不参加になりそうとのことです」

「……はぁ、なんと間の悪い」

「はははー…」


―――


(別に私が主催ってわけじゃない。それでも、リリアンネ様が私のために用意してくれたお茶会だ…頑張らないと)


 お茶会用の衣装へと着替えたツィトローナは、自室で握り拳を作って気合を入れる。

 しかしながら、その足取りは重く、遅々とした進みであった。


 原因は今までの経験。

 幼い頃のツィトローナは、ゼーゲルマン家や、その周辺の付き合いで、同年代の子どもたちと顔を合わせることがそれなりにあった。

 貴族社会において人脈構築は基本中の基本。孤立は最も忌避される状況なのだ。


(今までは…角のこと、竜人であることを色々言われて、本当に嫌だった。嫌がらせをしてくる人間もいた)


 思い返せば嫌なことばかり。

 親たちでさえあることないことを吹聴する影響で、その子どもたちも真似をし、『角には価値がある』『鱗は薬になる』などと囁き始める始末だ。


 嫌気がさしたツィトローナの足は遠のき、活動域は村の中に収まるようになっていた…いや、そうなってしまった。


「…頑張ろう」


 窓に映ったツィトローナの姿は、ヴァイリスカたちが丹精込めて磨き上げた非の打ち所のないお嬢様。

 彼女たちの苦労に報いるためにも、ツィトローナは会場の扉を開く。



 カツン、と靴音を鳴らすと、会場にいた招待客たちの視線がツィトローナへと注がれる。


「……。」

(普段の視線とは違う。けど…ちょっと怖い)


 嘲笑うような口も、見下すような目もない、今までとは異なる空気の会場だった。

 しかし、ツィトローナの心に滴る冷や汗が鼓動を速め、それを払拭しようと張り付いた唇を引き剥がした。


「り、リリアンネ様からの招待で参りました、ゼーゲルマン男爵家のツィトローナと申します。本日はっ…よろしくお願いします」


 本来は、こんな堂々と名乗りを上げる必要はないのだが、自分を見つめる瞳を引き剥がそうと、見定められる状況を打開しようと声を上げたのだ。


「自己紹介をありがとうございます、ツィトローナさん。本日のゲストである、ツィトローナ・ゼーゲルマンさんです。現在、我がシュタインフェステ家の行儀見習いとして、学びという水を得て成長している過程にある方ですが、この場にお呼びしても問題ないと判断し招待いたしました。是非とも、仲良くしてあげてくださいね」


 リリアンネが会場の手綱を握り直し、主催者からの紹介をすることで、招待客たちは鷹揚に頷いてから、ツィトローナに温かな笑みを向ける。

 『頑張っている』のだという、我が子を見るような温かな視線だ。


(ゼーゲルマン、貴女は騎士ではないのですよ…。もっと淑女らしい挨拶を教えたではありませんか)


 会場の端に控えていたグラーニアは、教え子の突発的な行動に天井を仰いでいたとか。

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