16話 聞き取り 2
「『魔力が視える』というのは人体の魔力に限った話でしょうか?」
「いえ、魔力嵐も視えます。昔、興味本位で入っちゃって、ものすごく怒られましたし、少しの間ですが、体調が悪くなりました」
(軽度の魔力中毒といったところでしょうか。ゼーゲルマン様は…13歳ということですし、昔というとかなり幼い頃。それでも軽度の魔力中毒で済むのなら、その素養は計り知れませんね。…しかし、それ以上に)
「本題から少し外れるのですが、一つだけよろしいでしょうか?」
「え、はい、なんでしょう?」
「モルゲンレーエラント騎士団で魔法師を目指しませんか?」
「え?」
「は?」
ツィトローナとジルベリヒトは素っ頓狂な声を上げて困惑する。
「いや、魔法師でなくとも構いません。会議に提出し、魔力観測官なり、そういった新しい役職を用意することも可能ですから。つまりは、『魔力を視る』力を騎士団で活用し、我々へのご助力をお願いできませんか?」
(魔力を視ることが何かの役に立つ?)
(なるほど、そういうことか。シュタインフェステ家の所属である以上、強くは出られないはずだが釘を指す必要があるね)
ジルベリヒトは、ツィトローナが解答を口にする前に発言をする。
「統轄魔法師長、『どういった職務になるのか』を説明しないのは誠意が足りないと思うのだがね?」
「あぁ、そうですね、すみません!」
エフェウとしても意図して隠していたわけではなく、気持ちが先に出てしまい、説明を忘れていたようだ。
「騎士団からご助力を願いたいことは一つ、『ヒンメルスシルム大樹林の調査任務』です」
「大樹林の調査で、魔力を視る必要があるのですか?」
「ええ。実は大樹林の調査というのは大昔から行われているのですが、少しばかり行き詰まっている問題がありましてね」
ヒンメルスシルム大樹林。人跡未踏の、つまりは手付かずの土地と資源が眠る広大な魔物の領域。
モルゲンレーエラント侯爵広域領が安定し始め、防衛以外にも戦力を割けるようになった頃から、人間の領域を広めようとする動きが少なからずあった。
「なんで必要なのかを考えてもいいですか?」
「どうぞ」
首を傾げるエフェウだが、ヴァイリスカからの目配せを受けて頷く。
(大樹林には詳しくないけど、大まかな予想を立てて、なんで魔力視が必要なのかを考えよう。…大樹林といったら、魔物が多いっていう話は有名だよね)
モルゲンレーエラント侯爵の役割は、ヒンメルスシルム大樹林から雪崩込もうとする魔物からの防衛。
それ故に、内戦内乱の多いヴァールシュ王国でも独自の地位を確立し、そういった戦争に巻き込まれることは少なかった。
(でも魔物って普通に見えるよね、スネッコみたいに擬態している魔物を見つけるってことかな?…それなら全部に警戒すれば良いような)
「魔物関連じゃないですよね?動物に擬態している魔物とかを判別するとか」
「違いますよ」
「うーん、じゃあ…魔力嵐が多い、みたいな感じですか?」
「惜しいです。答えをお教えしても?」
「はい、お願いします」
「大樹林をある程度進むと、魔力溜まりが多い場所が存在していましてね。魔力溜まりは魔力中毒の温床であり、避けて通りたい場所。避けて通れるなら、その術が欲しいのですよ」
「魔力を感知すればいいんじゃないんですか?」
「意外と難しいのですよ」
「そうですか。教えていただきありがとうございます」
感謝を伝えるツィトローナに、エフェウは『礼儀正しい方だ』と感心した。
「それで如何でしょう。危険と隣り合わせの職務とはなりますが、地位と給金は確約されますし、活躍によっては爵位も与えられるでしょう。…命に関わるお仕事ですから無理強いや強制はいたしませんが、モルゲンレーエラントの為になるお仕事だと念頭に置いていただければ幸いです」
「は、はい。でも、私にはやりたいことがあるんで…」
「選択肢の一つとしてでも十分ですので」
諦めるようすのないエフェウだが、笑顔を作って話題を終える。
「では、未確認魔法体系『反閇』についてお伺いさせていただきます」
エフェウは手元の資料を、自身の確認しやすいように並べ替えた。
「反閇という魔法体系は、どういった条件で発動が可能になるのでしょう?例を出すなら、一般的な魔法というのは魔法陣を用い、魔力を流すこと条件としています」
「反閇はですね、足を動かし、体内の魔力のみを運用することで発動します。婆ちゃ…祖母が反閇を使う際に、魔法陣を使うときのような、魔力の増幅は見れませんでした」
(…魔力の増幅?)
ツィトローナの言葉から拾った疑問を、エフェウは書き記す。
「足を動かすだけであれば、暴発などが多くなるのではありませんか?」
「酔った父の足運びよりも特殊なので、偶発は難しいんじゃないかなって思ってます」
「ダンスのステップに近いね」
「なるほど。意図して魔力を流す必要はあるのですか?」
「意図して量を増やしたりすることはできかすが、そういった意識を持たなくても反閇を行えば、魔法が発動します」
「ほう、魔導具に近いですね。では、直接見せてもらうことは可能でしょうか?」
「はい、可能です」
ツィトローナは席を立ち、反閇の準備を行う。
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